早見沙織、意識の変化がもたらした新たな表現との出会い TK(凛として時雨)参加の新曲「Awake」制作秘話

TK(凛として時雨)との密なやりとりの末に完成した「Awake」

ーーその結晶のひとつでもあるのが、今回リリースする「Awake」です。昨年の『アニサマ(Animelo Summer Live)2021』で披露しており、1年越しのリリースとなりました。さらに『RWBY 氷雪帝国』のエンディングテーマでもあるということで、かなり前から準備されていたかと思うのですが……。

早見:すごく前からです(笑)。制作がスタートしたのは2021年1月で、レコーディングは5月くらいでした。なので、マスタリングも終わった状態で『アニサマ』に臨むことができたんです。楽曲を手がけてくださったTK(凛として時雨)さんとも、今回のリリースにあたっては「ようやくですね(笑)」と連絡を取り合いました。昨年の時点では何のアニメの曲かも発表できなかったので、逆に楽曲自体をストレートにお届けできる貴重な機会だったなと思っています。

ーーたしかに、良い意味で先入観なく聴ける機会だったと。

早見:そうなんです。今年の3月にリリースを発表してから歌う機会は何度もありましたし、5月29日のバースデーライブにはアコースティックでお届けしたりと、リリース前に様々なバリエーションをお見せできているのも嬉しいです。

ーーそうして様々な形で披露したり、時間をかけることで、楽曲への理解度は上がっていたり、最初と違う解釈になっていたりしますか?

早見:パフォーマンスもそうですが、この曲に関してはレコーディング段階でかなりの数のテイクを録ったので、最初にパフォーマンスするときからしっかり肌に馴染んでいたんです。そこから人様の前で歌えば歌うほど、さらに自分の体に浸透していく感覚がありました。

ーー作詞はご自身で手がけられていますが、改めて書いた1年半前のことを思い返してみるとどうでしょう?

早見:書いている当初はすごく難航したんですよ。「早く出さないと……」って(笑)。『RWBY 氷雪帝国』のシナリオを読んだうえで、どこに軸を置くか、どういう視点で書くかを決めるのに苦労しました。

ーー書き出しのところですね。

早見:そうなんです。自分のビビッとくるフレーズを探すところに苦戦しました。一稿目を書いたあともTKさんに見ていただいて「ここはもう少し言葉数を減らしたほうがいいと思います」や「この言葉とその言葉だったら、この部分にはこっちの言葉がいいと思います」とアドバイスをいただきながら、結構修正して作ったので、完成したときはとにかく「できた!」という快感が大きかったです(笑)。人様の前で歌わせていただいてからは、反応を踏まえて解釈が変わったところはありますね。1番記憶に新しいものだと、バースデーライブでアコースティック編成で歌わせていただいたこと。聴いてくださった皆さんからのメッセージを読んでいると、言葉にできない衝撃波みたいなものが伝わったのかなぁと。

ーーエネルギーの塊みたいな。

早見:言葉でいうと変なんですけど、「Awake」という曲は、その音楽に詰まっている“目に見えないエネルギー”みたいなものを直接聴いてくださる方の心にすっと届ける曲なんだなと。

ーーTKさんの書いたこの曲自体も情報量が多いですし、早見さんの歌もすごく豊かですからね。

早見:最初に聴いた時は「本当に難しい……」と思ったのですが、すごく歌いづらい曲ではないんです。なんというか、無理がない難しさというか。そういう不思議さがTKさんの書く楽曲の魅力でもあると思いますし、TKさん曰く「この曲は歌いやすい方」らしいのですが(笑)。たとえばレコーディングで何度テイクを重ねても、身体はちょっと疲労するけど、曲に対しては常に新鮮な前向きさを持てますし、何度でも向き合いたくなる楽曲なんです。

ーーTKさんからもらったアドバイスの中で印象的なものはありますか?

早見:アドバイスというよりは、ヘッドホンをつけて、音を出したときの耳の中の音作りが全然違うと感じました。それだけで世界観が完成されていて。尋常じゃないレコーディング環境だったなと(笑)。基本はレコーディングをして、後からどんどんいじったり、マスタリングで整えていくというのが普通なんですけど、最初のレコーディング段階でそれができていて驚きました。

 冒頭はリバーブがかかっていて、ウエットな感じなんですが、そこに私が囁くように歌うだけで、水滴が水面にポンと落ちて広がっていくような広い世界観があって。自分が声をポンって、〈永く深い……〉と言っただけで、波紋が見えて解像度が高くなるような。そうすると、自分から出てくる歌声も全然変わってきて、よりイメージを膨らませながら声を出すことができました。特に、後半の激しくなるところは、前半とのギャップを感じて、より一層熱がこもっていきましたし、本当に細かい歌声の響きまで調整していきました。

ーーコーラスや声色の作り方とかも含め、TKさん自身がそのあたりの職人でもありますからね。

早見:コーラスに関しては、その場でなんとなくTKさんが歌った鼻声をコピーするという感じでした(笑)。人柄が穏やかでいらっしゃるので、私も「もうちょっとこうですかね?」と相談しやすかったです。

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