AmamiyaMaako、ネオシティポップに乗せた人生の様々なシーン 多彩なフレーバー詰まった『Drops』レビュー

 AmamiyaMaakoの2ndミニアルバム『Drops』は、夢や仕事、家庭など、人生の様々な選択肢を、赤、黄色、緑、色とりどりの多彩なフレーバーが一つに入った缶入りドロップに例えながら、ネオシティポップサウンドと共に歌い上げた、あの頃の思いを新鮮に呼び覚ます、エモさ満点のアルバム。五線譜の上だけでは飽き足らず、真っ白なキャンバス、好き勝手に絵の具を乗せていく、自由さ、カラフルさ、楽しさがある。

 表題曲の「Drops」は、ノリのいいビート、刺激的なDJサウンドが縦横無尽に駆け巡り、跳ねたフロウのラップとメロディアスな歌が自由に行き来する。アイデアに溢れユーモアも満載なサウンドは遊び心いっぱい。歌詞は、ひとたびドロップを口にすれば、どんな大人でも夢に溢れたあの頃にひとっ飛びといった雰囲気。ガリッと噛んだ瞬間、目の前の景色ががらりと変換。何かを取り戻して、新たな気持ちで、また明日を始められそう。

 R&B系のミディアムナンバー「それぞれのストーリーを」は、重低音のグルーヴィなベースが印象的。時折聴こえてくるサックスのメロディがセクシーで、往年のシティポップ感を与えている。後ろノリのラップは90年代初頭のJ-RAPという雰囲気。悩みは人それぞれであり、どんな人でも一つや二つは抱えているもの。悩んでいるのは自分だけじゃないと気づく。そんな風に思えば少しは気も楽。ベランダでコーヒーを飲んでリフレッシュ。そんな時に寄りそう楽曲。

 「Girl’s worry」は一転、ダークモードな一面を覗かせる。人生の浮き沈みをゲームになぞらえ、〈キミだけのとっておきのライフ ちっぽけな障害物でHP減らさないで〉〈余計なアドバイスの決め技 「キミノタメ」くらってゲームオーバー〉など絶妙な比喩が、実に分かりやすくてストレートに刺さる。ドロップのフレーバーに例えるなら苦みのある抹茶味。“まあそんな日もあるよね”という感じ。ダークトーンで始まるサウンドは徐々に高揚感を増し、サビは爽快。耳に残るループのメロディも印象的。

 「今夜はブギー・バック feat.仮谷せいら」は、スチャダラパーと小沢健二による1994年のヒット曲のカバー。90年代のいわゆる“渋谷系”を代表するナンバーで、AmamiyaMaakoにとって原点的な楽曲の一つ。小沢健二の歌パートには、“はるかりまあこ”としての活動でも親交のあるシンガーソングライター・仮谷せいらを迎え、ラップパートをAmamiyaMaako自身が担当。原曲の持つ切なさをはらんだきらびやかな部分はそのままに、浮遊感溢れるトラックでカバー。懐かしくも新鮮な光で、心を鷲掴みにする仕上がりに。

「今夜はブギー・バック」cover by ”AmamiyaMaako feat. 仮谷せいら”

 「give me summer」は、テンポ感のいいビートに、カラッとしたカッティングギターや民族っぽいテイストを加えたサウンドで、目の前は一気に夜のビーチ。夏の恋のドキドキや不安が描かれた歌詞を、AmamiyaMaakoがメランコリックに歌い上げている。終盤の畳みかけ、そこに重なるテクニカルなピアノ。果たしてこの恋は、一体どうなってしまうのか? 韓流ドラマのような波乱に満ちたエンディングに、続きが気になって仕方がなくなる。

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