フレデリックが一対一で鳴らす“今の時代”の音楽 純度の高い幸福感に満ちた代々木ワンマンレポ

赤頭隆児(Gt)

 その音や言葉で以って、フレデリックはなぜ語るのか。それは、自分たちが今日この日に辿り着くまでの想い、背景を語ることで、同じように何らかの道のりを経て今代々木に集まっている観客一人ひとりを肯定したかったからではないだろうか。MC中“一対一で”と繰り返し言っていたのもそんな想いからだろう。人生は選択の連続というが、この日最初に届けた「名悪役」で〈あれから君は後悔や劣等感さえも正解に変えて/もっと強くなったかな 私の知らない毎日で〉と歌っているように、自分が日々何を感じながら生きていて、どういう道のりを経て今ここに至ったのかは他人には分からないことだ。しかし、見えないだけで、それは間違いなく存在する。そして見えないものを互いに思いやる時間は尊いものである。この日の代々木にあった純度の高い幸福感の由来は、そういったところにあったのではないだろうか。

 この4人にしか鳴らせないフレデリックの音楽を思いきり鳴らすことが、あなたにもユニークでいてほしいという願い、個の肯定というメッセージに変わる。本編ラスト、フレデリックのニュースタンダードとなった「ジャンキー」で迎える大団円は楽しくも感動的なもので、MVでおなじみのセーラー服&ジャージ姿の双子ダンサーが登場し、会場内の警備員がうさぎのマスクをつけて踊り始め、次のツアーの日程がスクリーンに映され……という情報量の多さも含めて愛おしい時間だった。

 この「ジャンキー」やアンコールで演奏された「熱帯夜」の歌詞に登場する〈厄介〉とは、手数がかかって面倒なことという意味だが、見方を変えるとそれは、その人がこだわりを発揮する部分であり、その人固有の輝きであると言える。時間も労力もかかる自身最長30本のツアーは、ある人から見れば面倒くさそうという印象で終わるものかもしれない。しかしそれこそが彼らが今大事にしたいこと、こだわりであり、フレデリックをフレデリックたらしめる一つの要素だ。また、個の肯定という今回のライブのメッセージを踏まえれば、その次が“一人ひとりの近くまで行く”、“あなたの住む街まで会いに行く”という選択になるのも合点がいく。音楽を愛する“あなた”の存在を認め、祝する音楽は、代々木から全国へと広がっていくことだろう。

※1:https://fc.frederic-official.com/feature/201807_emotion_interview2

■セットリスト
『FREDERHYTHM ARENA 2022〜ミュージックジャンキー〜』
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■リリース情報
3rdフルアルバム『フレデリズム3』
2022年3月30日(水)リリース
初回限定盤:CD+DVD ¥4,800円(税込)
通常盤:CD only ¥3,333(税込)

・CD(初回/通常共通)
全14曲収録
・初回限定盤DVD
『FREDERHYTHM ARENA 2021~ぼくらのASOVIVA~ at 日本武道館(2021.02.23)』

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