秋山黄色、“第三次衝動”で威力増すアンサンブル 爆発的なエネルギーで会場を熱狂させた夜

 10都市11公演をまわった全国ツアー『一鬼一遊TOUR Lv.3』の8本目にあたる、5月26日のKT Zepp Yokohama公演。秋山黄色のライブを観るのは3月の栃木公演以来で2カ月ほどしか空いていなかったが、同じバンドなのにこんなにも変化するものなのかと驚いた。縦のラインのハマり具合、サウンドの立体感、グルーヴ、ダイナミズム。どれをとっても飛躍的によくなった印象があり、バンドとともに秋山が歌った時の、ステージから熱風が吹くようなあの感じも威力を増している。

 ライブは重厚なバラード「白夜」で始まり、「アク」、「Caffeine」による助走を経て、ストレートな「アイデンティティ」で解き放たれていく様が痛快に感じられた。熱量が高く、膨大な情報量を内包するバンドサウンドは“初期衝動に満ちた”とうっかり言いたくなるが、むしろ以前よりも洗練され、ライブ一本、あるいは一曲の中のピークポイントが見えやすくなったことがこの爆発力の要因であるように思える。だから初期衝動ではなく、第一次衝動、第二次衝動、第三次衝動……といった印象。今回の全国ツアーは、秋山、井手上誠(Gt)、藤本ひかり(Ba)、片山タカズミ(Dr)の4人で初めてまわるツアーでもあった。公演数を重ねるごとにバンドとしてひと塊になっていったのだろう。

 観客からの拍手が聞きたかったのか、最初の曲ではイヤモニを外し、「(同期の音が)全然聞こえねえ!」と至極当然な理由でキレている秋山。ステージから秋山の笑い声が聞こえてくることもあったし、井手上が片山のドラムスティックをこっそり拝借し、それでギターを弾いたりと、ステージ上では楽しげな空気が流れていて、それが客席にも伝播した。その楽しげな空気で以って、ライブが進むにつれて、自由度を増していくアンサンブル。このツアーはアルバム『ONE MORE SHABON』のリリースに伴うものであるため、“アルバムに込めたメッセージを改めて伝える”というテンションももちろんあったが、一方、この日、この会場、このメンバーだからこそ生まれるエネルギー、偶発的なものに身を任せて、セッションするバンドの姿も印象に残った。曲間の繋ぎもこの日限りのものだし、いわゆる“ライブ化け”的な現象が頻発している。特に最高だったのは、ライブ終盤、「PUPA」~「ナイトダンサー」間で披露されたセッションで客席も大盛り上がり。また、「宮の橋アンダーセッション」の曲中に秋山がキーボードを弾きながら未音源化曲「Rainy day」を歌った場面も、この日ならではのものだったといえる。

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