水曜日のカンパネラ 詩羽が魅せる継承と進化 アルバム『ネオン』で発揮された歌声やリズム感の実力

 2021年9月6日。水曜日のカンパネラのシンボル的存在だったコムアイの脱退と、二代目主演・歌唱担当として詩羽(うたは)が加入することが、突然発表された。この発表に、音楽シーンが大きくざわついたことは記憶に新しい。水曜日のカンパネラは、シーンを飛び出し、コムアイがCMや俳優、声優、ナレーションなど多彩な分野でその才能を発揮しながらも、定期的に作品をリリースし、全国ツアーを行っていた。その活動展開が音楽リスナーたちにもしっかり支持されると同時に、音楽シーンにおいて異彩な存在感を放ち続け、次の動向が注目されるアーティストになっていた。

 アイコンであったコムアイが脱退することで、誰もが水曜日のカンパネラの次の展開が想像不可能になったと思う。ユニットのほとんどの楽曲の作詞・作曲・編曲を担うケンモチヒデフミ、同様に一部の作詞や作曲、ブッキングなどのマネージメント面を担うDir.Fは、コムアイ脱退後の水曜日のカンパネラの行く末について、しばらく悩んだと言っている(※1)。水曜日のカンパネラにおいて、主演・歌唱だけでなく、作詞も手掛けるようになっていたコムアイの存在はそれだけ絶対的だったわけだが、ケンモチヒデフミとDir.Fは、彼女が築いてきたユニットの鮮烈なパブリックイメージを無理なく踏襲しながら、さらなる可能性を見出せる人物に出会うことができた。それが詩羽である。

 詩羽は、高校時代からファッション関係の活動を展開。同時に軽音部に所属し、ギターボーカルを担当するなどしていたが、どれも、中学時代から感じていた生きづらさを解消し、自分を好きになるための自己表現のひとつだった(※2)。詩羽のシンボルにもなっている刈り上げ、ネオンピンクのカラーを入れた眉上の前髪といった特徴的な髪形も、高校時代に彼女自身が生みだしたものだ。芸術系の大学に通いながら、服作り、コーディネート、スケジュール管理まで自ら行う、フリーランスのモデルとして活躍。自己プロデュースに長けていて、一目見ただけで相手の印象に残る……この優秀なアイコンぶりは、コムアイにひけをとらない。では、コムアイとの違いはなにか。それは歌声、歌のアプローチの違いにある。

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