ラストアイドル、5年間の集大成飾るラストライブ 多くの壁を乗り越えてきた31名の「バンドワゴン」
一方の夜公演については、この5年間で多くの苦難を乗り越え、涙を流すことも多かったメンバーに最後ぐらいは笑ってほしい/笑いたいという意図も読み取れる。夜公演の序盤は「バンドワゴン」を皮切りに、『ラストアイドル』(テレビ朝日系)の初期からプロデューサーバトルまでの軌跡を辿っていく構成。その後は篠原望が見事なMV再現のセリフを入れ込んだ「サブリミナル作戦」に、橋本桃呼と佐佐木一心によるダブルセンターでの鬼気迫る「愛しか武器がない」と2期生アンダー、2期生へとバトンが渡されていく。「青春シンフォニー」で早くも涙を流していた西村歩乃果だけでなく、これまで滅多に泣いている姿を見せてこなかった阿部がアンコールラストの曲名を言えなくなるほどに感極まるという場面もあった。
けれど、コンサートの随所にあったのは笑顔いっぱいのラスアイの姿。その象徴と言えるのが、アンコールで披露された「バンドワゴン」である。『ラストアルバム』収録のストリングスバージョンをイントロに、毎週暫定メンバーと挑戦者が1対1のパフォーマンスバトルを繰り広げた熾烈なメンバー入れ替え戦をコンテンポラリーダンスで表現していく。やがて2期生、2期生アンダーが合流。全メンバー31人で大きな円を描くラスサビでは、LaLuceの3人がほかユニットのメンバーと目を合わせていく、鈴木遥夏の言葉を借りれば「みんなでラストアイドル」という「バンドワゴン」の最終形とも言うべき演出だ。印象的なのは安田愛里が誇らしげに「笑顔で終われた」と話していたこと。それは次曲の「僕たちは空を見る」にも言えることだ。
筆者にとってこの日……いや、これまでの5年間で最もシビれる一言があった。2期生アンダー、2期生、1期生の各ユニットが順にステージを捌けていき、残るはLaLuceという場面。そこで3人は手を繋ぎ、「以上、私たちラストアイドルでした! ありがとうございました!」と挨拶をしたのだ。LaLuceではなく、ラストアイドル。そこには初代ラストアイドルとして守り続けてきたプライドと「大人サバイバー」の歌詞にも描かれている、かつての長月翠を彷彿とさせるような〈不器用な生き方〉を感じずにはいられなかった。
また、そのシチュエーションで歌詞の意味合いが変わることはラスアイに限らずライブでは必然的とも言えるが、“解散”という言わば「ダンス」と「スマイル」よりも大きなテーマが、様々な楽曲のメッセージ性に変化を与えていた。LoveCocchiの3人が「青春シンフォニー」の歌詞を引用し最後に叫んだ〈出会いよ ありがとう〉は、そのことをメンバーも感じている一つの表れかもしれない。爆発力とともに会場に一体感を生んだ「愛を知る」の〈ずっと探していた 生きがいはそこにあった これが幸せなんだ 気づかせてくれてありがとう〉はファンとの絆を確かめ合うように、さらには「Break a leg!」の〈自分なりに だってきっと 人それぞれ 違うゴール〉は彼女たちが自身に言い聞かせるようにして、普遍的なメッセージを放っていた。
5月31日でラスアイは終わりを迎えることとなるが、もちろんメンバーそれぞれの人生は続いていく。昼公演に発表された畑美紗起が『bis』レギュラーモデル、篠原望が「bisweb」への登場を掴み取ったことは、今後の個人としての活動に繋がっていることを示している。阿部もすでに次の夢へ向かって走り始めている。
人は何度だって夢を見てもいい。道の途中で挫けそうになることもあるだろう。その時はきっと、ラストアイドルという存在がそっと背中を押してくれる。