完結迎えるアニメ『五等分の花嫁』、主題歌やキャラクターソングが伝えてきた“中野家の五つ子“の思い

 花澤香菜、竹達彩奈、伊藤美来、佐倉綾音、水瀬いのりという、人気女性声優の共演と謎めいたストーリー展開、五つ子による恋の駆け引きで人気の『五等分の花嫁』。現在は完結編となる同名の映画が公開中。五つ子が歌うキャラクターソングも常に話題で、5月25日に映画の主題歌「五等分の軌跡」などを収録したEPがリリースされる。そこで本稿では、『五等分の花嫁』におけるキャラクターソングの存在と魅力について考察する。

 『五等分の花嫁』は春場ねぎによる漫画作品。2017年から2020年まで『週刊少年マガジン』で連載され、コミックス全14巻は、累計発行部数が1600万部を超える人気作。TVアニメは、2019年に第1期、2021年に第2期『五等分の花嫁∬』が放送された。そして今年5月20日より、完結編となる劇場アニメ『映画 五等分の花嫁』が公開中だ。

 物語は、高校生の上杉風太郎(CV:松岡禎丞)が家計を助けるため、五つ子姉妹の家庭教師を引き受けることから始まる。個性豊かな五つ子との日々で、勉強一筋だった人生に大切なものが増えていく風太郎。当初は反発していた五つ子だったが、風太郎の思いやりある人柄や真面目さに触れ、思いを募らせていく。幼少期に風太郎が出会ったのは五つ子のうち誰だったのか、時折描かれる花嫁は5人のうち誰なのか、謎めいた展開を含みながら繰り広げられる恋の駆け引きにドキドキさせられる。そして五つ子の胸の奥に隠された思いに涙が溢れる。

 五つ子とは言うものの個性は全く異なり、風太郎を好きになる時期やアプローチ方法もバラバラ。五つ子の心情が如実に表れたキャラクターソングは、まるで『五等分の花嫁』というアニメの世界をより輝かせてくれるキーアイテムのようだ。また、花澤香菜(中野一花役)、竹達彩奈(中野二乃役)、伊藤美来(中野三玖役)、佐倉綾音(中野四葉役)、水瀬いのり(中野五月役)という人気声優5人が歌声を重ねているという豪華さもあり、常に話題を呼んできた。

 アニメ第1期オープニングテーマ「五等分の気持ち」は、五つ子が寝ている風太郎を起こすセリフから始まるポップナンバー。歌詞は結婚式の誓いの言葉を思わせるものがあり、作品全体を捉えていながら、完結編の映画を最後まで観終わったときに「なるほど」となる伏線が心憎い。またアニメ第2期オープニングテーマ「五等分のカタチ」では、エモーション溢れるバンドサウンドに乗せて、5人の進展した気持ちが歌われた。

TVアニメ『五等分の花嫁』 OPテーマ「五等分の気持ち」中野家の五つ子(花澤香菜・竹達彩奈・伊藤美来・佐倉綾音・水瀬いのり)試聴動画
「五等分のカタチ」Music Video Full size (歌:中野家の五つ子)

 キャラクターソングも好評で、第1期と第2期の間にリリースされた『「五等分の花嫁」 キャラクターソング・ミニアルバム』(2019年)は、五つ子の名前や風太郎とのエピソードが歌詞に落とし込まれ、物語序盤の5人の気持ちが表現されていた。

 長女・一花が歌う「Hello, dear my dream ~一秒後には~」は、女優として自分の道を進み始めた彼女の、夢に向かう前向きさと背中を押してくれた風太郎への感謝が歌われた。一転、風太郎とは衝突してばかりで、まるでジェットコースターのようにめまぐるしく動く心情が見事に楽曲に落とし込まれたのが、二乃が歌う「アイツとキミ~二度とない運命~」。二乃の表情豊かなキャラクター性が存分に発揮された明るいバンドサウンドのナンバーで、聴いているだけで楽しくなる。五つ子の中で最初に風太郎への気持ちに気づいた、三玖が歌う「Lovely music ~三週間前までは白かった~」は、恋愛とテストの答案用紙とを比喩しているかのような歌詞が秀逸だ。

 四葉が歌う「ハートのカタチ~四つ葉のClover~」は、跳ねたリズムが体育会系の四葉にぴったりの明るいナンバー。自分のせいで姉妹を転校させてしまったという思いなどから、自分の気持ちに正直になれない四葉の本心が見え隠れする楽曲で、コーラスのフレーズなど伏線も多彩だ。そして五月が歌う「素直にOpen heart ~五つ数えて~」は、まっすぐな思いを歌った爽快でスケールの大きなロックナンバー。姉妹の母親代わりになりたいと思っている五月の真面目な一面や、風太郎との出会いで変化する自分への戸惑いなどが歌われた。

「五等分の花嫁」 キャラクターソング・ミニアルバム

関連記事