HKT48は王道アイドルソングで戦うーー宮脇咲良と歩んできた矢吹奈子、日本のアイドルとしての覚悟

 現在のHKT48のそういった充実感はなにが要因なのか。それは、エースだった宮脇が卒業したことが大きいと考えられる。

 宮脇は『選抜総選挙』でも上位の常連となるなど、AKB48グループを代表する人気メンバーだった。そして、彼女が2021年6月に卒業したことでHKT48は世代交代を強いられた。ただ、それがグループやメンバーのプラスに働いたのではないだろうか。HKT48にはもともと次期エースと呼ばれたり、ポテンシャルを買われたりしていたメンバーが多かった。宮脇がいなくなったことで、そういったメンバーが自覚的に前に出るようになった。

 今回、センターポジションを担った矢吹も、雑誌『日経エンタテインメント! HKT48 10周年Special』(2021年/日経BP)のインタビューで、「今までは自分はさしこちゃん(指原莉乃)やさくちゃん(宮脇咲良)みたいにはなれないって思い込んでいたんですよ。もう、あの2人は別格すぎて無理だって。でも、そういうふうに思っていたらダメで、もっと欲を出して、まずは2人の穴を埋められるような存在になりたいなって思います」と意欲を示していた。

 宮脇が抜けたことで「自分がグループを引っ張ろう」というメンバーがいる一方、長く在籍するメンバーが後輩を後押しする態勢も整ってきた。これも重要なポイントだ。2015年から活動し、「最高かよ」(2016年)、「キスは待つしかないのでしょうか?」(2017年)のセンターだった松岡はなは同書内で、「後輩がどんどん増えてくるなかで、今は心から『後輩がもっと前に出ていければいいな』って。(中略)今だったら、前に出ていく後輩たちの背中を後ろからしっかり支えることができる」とグループを支えていく覚悟を口にした。

 グループを成長させるために、自分はどんなポジションに就くべきか。個々がこれまで以上に考え方を深めて活動していることが、今のHKT48が輝いて見えるワケにつながるのかもしれない。

 グループには新しい風も吹き込んできている。人気曲を決める『HKT48 リクエストアワー セットリストベスト50 2021』では、5期生のオリジナル曲「真っ赤なアンブレラ」が1位に輝いた。そして5月7日には6期生がステージデビューを飾った。IZ*ONE以降にHKT48に興味を持ったファンは、そういった若手メンバーたちと一緒に歩みながら応援する楽しみがあるのではないだろうか。

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