JamsCollection、#ババババンビ、タイトル未定……コロナ禍に始動、頭角を現したアイドルの共通点

 3組の共通点として挙げられるのが、CDリリースにとらわれない活動である。例えばJamsCollectionは初ライブ前からYouTubeにミュージックビデオをアップ。その後も新たなMVやライブ映像を公開しファンの渇望感が高まったところで初音源をリリースしたのだが、それもCDではなく配信アルバムだった。CDリリースは、今年2月のメジャーデビュー作まで一切行われなかったことになる。

 #ババババンビも昨年7月の1stアルバム『強く儚い大馬鹿者たち』(言わずもがな、タイトルはCoccoの名曲のパロディである)まで、全国流通のCDリリースがなかった。その間には販路限定のCDが1枚出たのみで、配信での楽曲リリースを重ねていた。「なかなかシングルCDを出せなかった」とイベントなどでメンバーも語っているように、例に漏れず時代の煽りを受けたグループだ。ちなみに昨年末には配信で発表していた楽曲を個別でパッケージ化。異例の12種同時発売で話題を呼んだ。

 タイトル未定に至ってはシングルに加え、なんとアルバムまでもが配信でリリースされた。CD盤は後に会場限定発売されたのみで、今なおCDショップに作品が並んでいないのである。それでもコアなアイドルファンからの高評価により、前述の「アイドル楽曲大賞」での躍進に繋がっている。

 2010年代、市場規模が下降の一途を辿る中でも、アイドルにとってCDは重要なアイテムであり続けてきた。発売時にはリリースイベントとしてCDショップなどでインストアライブを行い、購入者と様々な交流をするのが定番だった。発売前から予約を募りオリコンチャートでの上位ランクインを目指すのは大きな目的だが、ライブを無料で観られるケースも多く、新規ファンも気軽に参加できる機会となっていた。

 しかし2010年代後半から、ヒットの指標としてはCDの売り上げよりもダウンロードやストリーミングでの再生数が参照されるケースが多くなっていった。これは、CDの売上枚数を積み上げることでその勢いを増幅させてきたアイドルシーンにとって大きな逆風だったと言えよう。そしてそこに追い打ちをかけるようにやってきたのがコロナ禍だ。リリイベを組めない時期が続き、アイドルシーン全体でのCDリリース量も減少していった。先に挙げた3組の活動も、この流れと決して無関係ではないだろう。

 それでも、特典会をオンラインに切り替えることでCDリリースを続けてきた例は少なくない。またエムカードと呼ばれる、ダウンロードコードを記載したカードで新曲を発表するグループもあり、発売形態にも多様化が見られる。一方でフィジカルでのリリースとは異なる文脈のヒットも生まれ始めており、例えば超ときめき♡宣伝部が2018年にリリースした「すきっ!」は昨年になってTikTokでバズを生んだ。海外での再生数急増などバイラルヒットならではの現象も見られ、新たなブレイクのあり方を感じさせた。

 グループの規模や運営方針など、それぞれの活動に応じて多様なツールを選択することが可能になった時代とも言えるだろう。特に駆け出しのグループにとっては、配信の普及により楽曲を手軽に発表しやすくなってきている。今後はNFTの普及なども予想され、アイドルシーンにおける活動の多様化はますます進んでいきそうだ。

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