シドが描く“10の愛の物語” アルバム『海辺』先行試聴会にてファンに直接伝えた特別な思い

シド『海辺』先行試聴会レポ

 3月23日に発売されたシドのニューアルバム『海辺』の先行試聴会のツアーファイナルが、3月20日にユナイテッド・シネマ豊洲にて行われた。全国5都市の映画館で行われたこのツアーは、全国のファンにいち早くアルバムを届けたい、直接言葉を伝えたいという想いから企画されたもの。イベントは2部制で行われたが、本記事では1部の模様をレポートする。

シド

 劇場内は、約2年半ぶりのリリースとなるアルバムを楽しみに待つファンたちで満員。後のトークによると、この東京公演には特にチケットのプレオーダーが殺到したという。ロビーでは、メンバーがセレクトしたフレーバーのオリジナルポップコーンやブランケットなど、映画館ならではの特別なグッズも販売されていた。

 まずは『海辺』に収録されている全10曲が曲順にフルサイズで流れる。スクリーンには歌詞が表示され、作詞を担当するマオ(Vo)らしい繊細な言葉選びと世界観もじっくり味わえた。軽快なサウンドとどこか懐かしいメロディの「軽蔑」、恋愛の終わり際を描いたラブソングと思いきや、ラスト一行で恐ろしいメッセージが明かされるというトリックが仕掛けられた「大好きだから…」。シドらしさ全開の頭の2曲で、すでにこのアルバムが気に入ったファンも多いのではないだろうか。そして、令和歌謡というテーマにフィットした「13月」、アンニュイなサウンドとエロティックな歌詞の「液体」、冬の寒さと悲恋の切なさがリンクした「白い声」、眩しい純愛を描いた爽やかな「揺れる夏服」など、様々な愛の形を多彩なアプローチで描いた曲が続く。そしてそれら全てを包み込むのが、アルバムタイトルでもあるラストの「海辺」。壮大な世界観で人生と愛を描いた、シドの新たな表情が感じられる一曲だ。

 全曲の試聴が終わり、ずっしりと残る余韻に浸っていると、舞台には数々のヴィジュアル系のトーク番組で司会を務めてきたMCの星野卓也が登場。星野が「アルバム、いかがでしたか?」と問いかけると、客席からは大きな拍手がわきおこる。あたたかい雰囲気の中、いよいよシドのメンバーが登場。手を振りながら軽やかな春服姿で登壇した4人は、簡単な挨拶をしてからトークへ。……と思いきや、なぜかマオが椅子に座ってクルクルと回り始め、3人も真似をして全員が椅子に座って回るというシュールな光景に。会場はリラックスした空気へと変わった。

 以前から映画館での試聴会をやってみたかったというマオは、「最後の『海辺』を聴いたあとの皆さんの顔を見ると、ジーンときている感じがわかって可愛いなと思いました」と微笑み、客席のファンの心を鷲掴みにした。さらに“10の愛の物語”をテーマにしたアルバムの中でも、最後にたどり着く「海辺」には特別な思いが込められているという。「コロナ禍もあって僕は内面のバランスを崩した時期があり、その時を振り返りながら歌詞を書きました。ファンの皆さんを海辺、僕が流木だとしたら、傷つきながらもしっかりと皆さんの元にたどり着いたという僕の歌です。演奏も歌詞もメロディも、今までのアルバムの中で一番感情が詰まっているんじゃないかな。僕たちと繋がっているイメージで聴いてくれたら嬉しいです」。そう丁寧に語りかけた。

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