THE BACK HORN、不穏な空気を切り裂く快活なアンセム 4人の次なる歩みを牽引する強靭な歌とグルーヴ
この「ヒガンバナ」に続いてアルバムからの第2弾としてリリースとなったのが「ユートピア」だ。「希望を鳴らせ」や「ヒガンバナ」はいずれも、シンプルにTHE BACK HORNの4人の音、ドラム、ベース、ギター、ボーカルにフォーカスし、バンドアンサンブルの勢いやドライブ感を聴かせる曲だったが、「ユートピア」には少し趣の違った面白さがある。作詞・山田将司(Vo)、作曲・菅波栄純(Gt)によるこの曲は、岡峰光舟(Ba)による低音かつ低温なベースでスタートし、硬質で重厚な松田晋二(Dr)のドラムと菅波のギターリフが絡みながら、徐々に妖しく、ファンキーなグルーヴを生み出していく。弾むようなリズムやキレのあるリフで構成されながらも、どこか不穏な空気感をまとっているような、ざわざわとした雰囲気があるのは、サウンドの底に薄く敷かれたエレクトロな音響感によるものだろう。ポップなあぶくのような音色であったり、あるいはぼんやり覆う影や何かの残像のような音が、ふとした音や呼吸の切れ間から立ち上ってくるのが不気味であり、一寸先もわからない現在の不安定さを醸し出している。この得体の知れない空気を打ち破るのが、山田のボーカルであり歌詞である。
〈破られた俺たちの未来予想図は/何度だって描き直せるんだ〉〈命辛辛行き着いた場所さ/後悔なんて捨ててゆけばいい〉〈ケセラセラ笑ってゆくのさ〉と不敵に笑みを浮かべて快活に飛ばしていく歌が乗ることで、重々しいサウンドが一転して明度を上げて、ダンサブルにステップを踏み鳴らしながら靄を晴らして進むようになるのは、THE BACK HORNならではだろう。アルバム全体の流れがどうなっているのかはこれからの楽しみだが、これまでコロナ禍でリリースしてきた曲をも軽々と背負って、最前線で走っていく曲になるのは間違いなさそうであり、“今”というディテールを何層にも重ねたサウンドには威力がある。まさに今必要なのはこんなロックミュージックのパワーだと、改めて思う。そしてこの先にあるアルバム『アントロギア』への期待は、ますます募ってくる。
■リリース情報
THE BACK HORN『アントロギア』
2022年4月13日(水)リリース
・完全生産限定盤A(CD+Blu-ray)¥7,150(税込)
・完全生産限定盤B(CD+DVD)¥6,050(税込)
・通常盤(CD)¥3,300(税込)
Digital Single「ユートピア」
3月23日(水)配信開始
ダウンロード/ストリーミングはこちら
<CD収録曲>
01. ユートピア(詞:山田将司 曲:菅波栄純)
02. ヒガンバナ(詞:松田晋二 曲:菅波栄純)
03. 深海魚(詞:松田晋二 曲:山田将司)
04. 戯言(詞:菅波栄純 曲:山田将司)
05. 桜色の涙(詞:松田晋二 曲:岡峰光舟)
06. ネバーエンディングストーリー(詞曲:山田将司)
07. 夢路(詞曲:岡峰光舟)
08. 疾風怒濤(詞曲:菅波栄純)
09. ウロボロス(詞曲:菅波栄純)
10. 希望を鳴らせ(詞:菅波栄純 曲:山田将司)
11. 瑠璃色のキャンバス(詞曲:山田将司)
12. JOY(詞:松田晋二 曲:山田将司)
編曲:THE BACK HORN
<Blu-ray / DVD収録内容>
・LIVE MOVIE『KYO-MEIストリングスツアー』 feat.リヴスコール [2021.6.11 Zepp Haneda(TOKYO)]
01. オープニング –満天への祈り–(Live SE『KYO-MEIストリングスツアー』 feat.リヴスコール)
02. トロイメライ
03. シリウス
04. ブラックホールバースデイ
05. 超常現象
06. ジョーカー
07. 自由
08. グレイゾーン
09. いつものドアを
10. シュプレヒコールの片隅で
11. 君を隠してあげよう
12. 夢の花
13. 星降る夜のビート
14. コバルトブルー
15. シンフォニア
16. 戦う君よ
17. 世界中に花束を
18. ミュージック
19. ラピスラズリ
20. 刃
・MV
瑠璃色のキャンバス、希望を鳴らせ、ヒガンバナ、ユートピア 他