9mm Parabellum Bullet、結成日に上げたさらなる進化の狼煙 『カオスの百年 vol.16』 はレア曲満載の一夜に

 今年で2004年の結成から18年を迎えた9mm Parabellum Bullet。その結成日である3月17日にEX THEATER ROPPONGIで開催されたのが、初期からの恒例企画である『カオスの百年』だ。19年目への第一歩として、そして2022年のキックオフとして、さまざまな発表も織り交ぜつつスペシャルなセットリストで繰り広げられたこの日のライブ。終わっての実感を一言でいえば「何年経っても9mm」「何をやろうが9mm」。このバンドがなぜ日本のロックシーンにおいて常に強烈な存在感を放ち続けているのか、この“9mm”としか言いようのない音楽の求心力やエネルギーの源は何か。最高にいい意味で彼らにしか持ち得ない個性と魅力を思う存分堪能させてもらった。

 おなじみのAtari Teenage Riotの楽曲に乗せて登場した菅原卓郎(Vo/Gt)、滝善充(Gt/Cho)、中村和彦(Ba)、かみじょうちひろ(Dr)にサポートギターの武田将幸(HERE)。菅原が弾き始めたギターのカッティングから、「The Lightning」でライブはスタートする。いきなりテンションの高い演奏に客席は瞬間沸騰。ステージを走り回る滝がお立ち台に立って見せつけたギターソロには自然と手拍子が巻き起こる。そのまま「Answer And Answer」のイントロへと突入すると、オーディエンスは拳を突き上げそれに応える。かみじょうの踏み鳴らす嵐のようなバスドラが、EX THEATERをビリビリと震わせる。というか、筆者は上のバルコニー席で見ていたのだが、総立ちの観客の体の動きが伝わって、さっきからバルコニー全体が波打つように揺れている。久しぶりのワンマンということもあって、オーディエンスも待ちに待ったという感じなのだろう。

 中村、菅原、滝がステージ前方に横一列に並んでキメて「Answer And Answer」を終えると、カオティックなつなぎからかみじょうが手がける「Zero Gravity」、そして「名もなきヒーロー」へ。ここでも思わず目がいくのは、千手観音のごとき手さばきでスティックを振るうかみじょうのプレイだ。美しいサビのメロディでそれまでとは違うムードを生み出すと、歌い終えた菅原は客席に向けて両手を広げてみせた。「みなさん、ようこそいらっしゃいました!」という菅原の挨拶に拍手で応えるオーディエンス。菅原はこのライブが今年初めてのワンマンであることを改めて明かし、「気合入れて面白いものを用意してきましたから。楽しみにしていてください。いけるか?」と期待をさらに煽る。

 確かにここまでのセットリストを振り返ると4曲中3曲が9周年の節目にリリースされた5作目のアルバム『Dawning』からの楽曲。そのあたりに何やら秘密があるのかも? とは思っていたが、その後の展開は、そうした予想を上回るカオスなものだった。まず鳴らされたのは「ルーレットでくちづけを」。2011年に栗山千明のアルバム『CIRCUS』に提供した楽曲だ。さらに切れ目なく次の曲へ。この印象的なイントロは……スピッツ「ロビンソン」だ! 2015年にリリースされた『ハチミツ』のトリビュートに参加した際にカバーした曲である。原曲のフレーズやメロディをリスペクトしながらも、演奏のハードさやスピード感で9mm色に塗り替えていく、彼らにしかできないカバーだと当時も感嘆した記憶があるが、こうして改めてライブで観ても、やはりその印象は変わらない。

 そこからさらに畳み掛けたのが「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」。9mmと同じく2004年結成の「同期バンド」、UNISON SQUARE GARDENのトリビュートアルバムで披露したカバーだ。9mmとユニゾン、ベクトルは違うとはいえ同じようにある種の「過剰さ」を持ち合わせたバンドだと思うが、その2組の間で掛け算が起きるとどういうことになるのか、というのをこの曲のパフォーマンスは物語っていた。オリジナルを挑発するかのように手数の多いプレイをブッ込むかみじょう、相変わらず動き回りながらリフもコーラスもパーフェクトに決める滝、鬼気迫る表情でベースを睨みつけ、ゴリゴリのサウンドを生み出していく中村、そしてそのすべてを受け止めながら美しい歌に昇華してしまう菅原。つまり9mmの個性と魅力がそのままブーストされ、凄まじいことになっていたのだ。

 そんな興奮のピークがあったからこそ、続いて滝のギターによるイントロからしっとりと入っていった「黒い森の旅人」(またしても『Dawning』からの楽曲)が効く。静と動、透き通るような美しさと衝動的な混沌、その両極をこれ以上なくドラマティックに体現したこの曲は、ある意味で『Dawning』期におけるバンドの成熟の証でもあった。その前のカバー(セルフカバー)曲たちが物語るように、ある意味で9mmのスタイルはあの時期に一度極まっていたように思うが、彼らは決してそこで立ち止まらなかった。というよりも、ここ数年、さまざまな変化や新たな状況に向き合う中で、9mmは9周年までのフェーズとは違う意味で、新たな進化の季節を迎えているのではないかと思う。サポートギターを迎えてのライブも、作品作りのプロセスも、もちろん必要に応じてというところはあるものの、そうした変化が刺激となって、9mmサウンドはまたしてもアップデートの途上にある。

 そんなことを思ったのは、その後に立て続けに披露された新曲たちを聴いたからだ。全3曲、1曲はインスト、2曲は歌もの。滝と菅原のギターがこの上なく美しいギターのハーモニーを響かせる曲や、9mm節の歌謡メロディをさらに推し進めたような曲もあった。どれもが9mmとしかいいようのないスタイルを体現しながらも、どこかしら新しさを感じさせるものになっていた。「8月にアルバムを出します!」と菅原が宣言する。タイトルは未定だそうだが、すでに収録曲は決まっていて、あとはレコーディングするだけだという。そしてその流れで9月9日の“9mmの日”からツアーを開催することも発表すると、客席からは大きな拍手が。世の中的にイレギュラーにならざるを得なかったこの2年を経て、アルバムを出してツアーをするという、当たり前のサイクルが徐々に戻ってきたことを実感して嬉しくなる。

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