東京発4人組 Apesが鳴らす、真の等身大のロック ジャンルで括れないバンド像への志も明かす
生きる上での“少しの希望”を書いた「LOSER」
――今までの楽曲を聴いても、今回のEPを聴いても、曲ごとにいろいろな音楽の影響を感じるんですけど、Apesの音楽性はこのメンバーになって変わってきていますか?
レオ:変わってきてますね。やっぱりその時その時で聴いている音楽が違いますし、メンバーが増えると違うエッセンスが入ってきて。今回のEPは本当に盛りだくさんだと思うんですよね。いい意味で統一感がまったくない。最近はアラユが曲を書いたりとか、フレーズをちゃんと作ってきたりっていうのも多くなってきて、そういうものに合う引き出しを見つけてきて、曲に落とし込むこともあるし、単純に僕がやりたいようにやる曲もあるし。いい具合にミックスされてるのかなって思います。
――その中では今回のEPに入っている「LOSER」が最新型っていう感じなんですか?
レオ:そうですね。でも「LOSER」も作ったのは1年ぐらい前になるのかな。だからその時の最新型ですね。まあ、他の4曲も結構アレンジしているので、全部最新です(笑)。
アラユ:プリプロは8曲ぐらいやってたんですけど、最終的にこの4曲で録ったんです。完成したものを直後に聴いたときと今とで全然感想が違うんですよね。それがすごく面白いなって。いいEPになったなと思います。
――今プリプロの話が出ましたけど、曲作りやレコーディングは緻密にやるタイプなんですか?
レオ:そうですね。もうプリプロ命という感じで。プリプロでちゃんと下準備してないとレコーディング本番で不測の出来事が起きたときに対応できないので。あとある程度こうしようっていう形が決まっていないと、たとえばレコーディング当日までフレーズが全然決まってなくて、結局どうしようっていうこともありえるし、その場で音色も決めないといけないし、アレンジも決めないといけないので、やっぱり準備はちゃんとします。まあ、そう言いながらアラユは「ハイライト」のフレーズを前日に決めてたんですけど(笑)。
――そのプリプロで作っていく段階というのは、レオさんの中にある程度具体的なイメージがあって、そこに寄せていくという感じなんですか? それともそこで出てくるアイデアで変えていく?
レオ:「LOSER」に関しては僕がデモをもう1回作り直して、音源のバージョンのアレンジを送ってってやったんですけど、僕も全部の楽器をちゃんとできるわけじゃないので、各々のフレージングとか、細かい部分に関してはスタジオでみんなでやってみてですね。
モリカズ:でも最近の曲作りは、みんなでメンバーの家に集まって、ゼロからイチのデモを聴いて、各々DTMソフトを使ってフレーズをつけたりとか、ドラムのフレーズをちょっといじってみたりしてるんです。その上でスタジオで最終確認をする。それが僕らにとって合ってるやり方なのかなっていうのを感じますね。
――それは、ある意味コライトみたいなプリ・プリプロって感じですよね。
レオ:そうです。デモをいっぱい作ってるっていう感じ。
アラユ:実はやってない曲がいっぱいあるんだよね。元はこれだったけど全然違う形になっている曲も多い。
レオ:「やさしくなれない」も最初はこんなパンクなモータウンビートみたいな感じではなくて、Radioheadの「Fake Plastic Trees」を意識して作っていたので、すごくチルな曲だったんです。でも、そのエッセンスも今回、EPではちょっと取り入れてます。
――なるほど。「LOSER」の歌詞はどういう気持ちで書いたんですか?
レオ:友達にバンドをやっている人が多いんですけど、メジャーデビューをする人も多くて。知り合いがメジャーデビューしたっていうニュースを友達づてに聞くんじゃなくて、SNSとかで知っちゃうんですよ。あえて言わないっていうか、自慢みたいに聞こえたら嫌だから教えなかったんだと思うんですけど、そういうのを知る度に「俺は何をしてるんだろう」っていう気持ちになっちゃって。そのニュースが出たときに、家に帰って寝ないで「LOSER」を作って、深夜にみんなに送ったんですけど(笑)。
アラユ:だからApesの中では特に作曲者の思想強めの曲になってます。
――〈I'm a loser 誰も理解してくれない〉と歌っているんですけど、〈でも呼吸は知らず知らずのうちに/僕を生かそうとしている〉っていう。これはポジティブな感覚なのか、最悪な感覚なのか、どっちなんですか?
レオ:僕はポジティブな意味で書きました。本当にそういう(メジャーデビューの)ニュースを聞くたびに気分は落ちるんですけど、でもそういうマイナスの気持ちで曲を作れたりすることもあるということは、まだ死んでないなって。生きていればオールOKだと思っているので、ポジティブな意味で僕は捉えてたんですけど、今の質問をされて、マイナスのイメージもあるんだと思って面白かったです。確かにルーザーのまま生きるのは最悪ですよね。でもそれは聴く人の気持ち次第。判断は委ねます。
――このフレーズをポジティブなものとして書いたところに、たぶんLeoさんの最低限の希望があるんだと思いますね。
レオ:そうですね。この曲の歌詞は『ショーシャンクの空に』という映画の中に「生きるには少しの希望があるといいよ」といった感じのセリフがあって、それを思い出して作ったんです。
――一方、ライブでも人気の「ハイライト」は昔からあった曲ということですが、聴くとすごく勢いというか初期衝動を感じる曲ですね。
レオ:本当ですか。ドライブ感、青春感がありますよね。これは最初のイントロのギターを思いついて、そこから膨らませて。
アラユ:この曲は出会ったときすでにやってたもんね。それを聴いて「あ、いいなこのバンド」って思ったんだから。
レオ:当時なぜかカッティングにハマってたんです。たぶん、「ハイライト」を作る半年前ぐらいからブラックミュージックをよく聴くようになった影響で。自分がやっている歌もののバンドで、歌いながら、自分のやりたいカッティングをできないかなっていうところから生まれた曲ですね。
――ある意味今回のEPで一番歌ものというか、ギターのカッティングが背景にある分、すごく歌、メロディが立っているなと思って。自分のメロディについてはどういうふうに捉えていますか?
レオ:どうなんだろう。強いのかな。
アラユ:強いとは思う。
ケイト:絶妙に裏切ってくるんだけど受け入れられる、いい塩梅のところを突いてくるので。王道のポップス過ぎない、暗さやちょっとマイナーな感じもあるんですけど、すっと初見でも入ってくるような気がして。そこがちょうど心地いい、欲しいところにあるんだと思います。
――「やさしくなれない」はまさにそうですけど、「みんな歌ってね」みたいなメロディじゃないんですよ。でもちゃんとポップな窓が開かれている感じはする。
レオ:ありがとうございます。
――その絶妙さが、すごく新しく感じるんですよね。自分が好きなもの、やりたいものをハードコアに追求しているんだけど、結果的にそれがポップなものとして受け入れられないこともないだろう、とニュートラルに思っているというか。サブスクリプション以降の世代的な特徴でもあるんですかね?
レオ:どうなんだろう。でも、僕らよりちょっと上の世代って、ジャンルというものがちゃんとしてるイメージはあるんですよ。メロコアだったらメロコアだし、オルタナだったらオルタナだし。でも僕らの世代ってそこをごっちゃにしてやろうとしてる人が増えてきているイメージがあって。その塩梅が難しいんですよね。やりすぎてもミクスチャーになっちゃうし。それをちゃんとかっこいいものとしてやるというか、新しいジャンルを作りたいのかもしれない。Apesというバンドはジャンルで括れない、そういうものを作りたい気持ちはあります。
■リリース情報
Apes 1st EP『Catchall』
2022年3月23日(水)デジタルリリース
M1. LOSER
M2. 501
M3. ハイライト
M4. やさしくなれない
■ライブ情報
EPリリースレコ発東名阪ツアー
Apes 1st E.P.「Catchall」Release party“No threw”
2022年3月30日(水)東京・新代田FIVER
2022年4月1日(金)大阪・SOCORE FACTRY
2022年4月2日(土)名古屋・stiff slack
■関連リンク
Web Site https://apes-band.jimdofree.com/
Twitter https://twitter.com/apes_band