ズーカラデル、過去最多の曲数で熱演したステージ リスナーへ愛と感謝を伝えた『JUMP ROPE MADNESS TOUR』

ズーカラデル、レコ発ツアー初日レポ

 中盤パートは大人になっても何ひとつ変わらないことを歌った青春ソング「若者たち」、弾き語りでスタートし、壮大なバンド演奏へと展開する「春風」、ストレートに愛を叫ぶ「ブギーバック」を続けて奏でる。15曲とたっぷり新曲が収録されたアルバム曲の中に過去の曲も織り交ぜ、次はどの曲が聴けるんだろうと胸が高鳴るセットリストだ。MCを挟み、無数のライトが夜空のようにロマンチックに輝く中で歌われた「ノエル」の後は、お祭りのような高揚感のあるイントロや曲を引き立てるコーラスと共に希望の光を灯してくれる「トーチソング」へ繋げた。

 スーパーの店員に買う食材で献立がバレるのが嫌で、フェイク食材を買うという鷲見のあるある(?)エピソードなどで場が和んだあと、吉田が「今日ライブが終わればそれぞれの家に帰り、寝たら次の日には半分以上忘れているそうです。この出会いは忘れていってしまうものではあるんですけども、“音楽が面白いね”と言って集まれたことを強く喜びたいと思います。我々からあなた方一人ひとりへのラブソングを歌いたいと思います」と伝える。披露されたのは「友達のうた」だ。ズーカラデルからの愛をしっかりと受け取り、会場にいる誰もが、この日のライブを共に作り上げられたことを誇りに思った瞬間だろう。1曲が終わるごとに「ありがと!」とフロアに告げていた吉田の感謝の言葉が、今まで以上に身に沁みる。

 後半では、ノリが良くキャッチーな「漂流劇団」や、鷲見とツインボーカルで歌う「ニュータウン」で幸福感に満ちた空間を作り出した後、すぐさま「未来」へと畳み掛けていく。「(ライブが終わったら)きっと素晴らしくない日々や美しくない日々が訪れると思いますが、どうかその間も生き延びて、またどこかでお会いできると嬉しいです。ズーカラデルでした」と最後の挨拶をすると、いよいよ長丁場だったライブもラストスパートへの盛り上がりを作り出していく。山岸りょう(Dr)の骨太なドラムから始まる「アニー」、故郷を歌った「シーラカンス」、曲名とは裏腹に穏やかなメロディで微笑ましいふたりを描いた「稲妻」を最後に披露。全23曲、新曲もMCもたっぷりに届けたステージはこれにて幕を閉じた。

 中盤のMCにて、「あなたが今日この場に来なかったとしても、ライブはそのまま行われていたと思います。そういう仕組みでできているから。でもきっと、あなたがこの場にいなかったら今日のライブは全く違うものになっていたと思います」と吉田が話していた。この言葉の通り、リスナーが1人来なくてもライブは開演時間になったら始まるし、セットリストも変わらないはずだ。でもバンドとリスナーが一体となって作り出すライブの空気感は、1人欠けることで全く違うものになる。普遍的だが、ライブは1本1本が掛け替えのないものであることを改めて実感した瞬間だった。

 この日を皮切りに行われた『JUMP ROPE MADNESS TOUR』は、ズーカラデルの故郷である札幌を含む全国9カ所を巡り、大団円を迎えた。リリースツアーが終了し、彼らはまた新たなる音楽を生み出すフェーズへと入るのだろう。次はどんな音楽を届けてくれるのか。再びライブハウスで会える日が待ち遠しい。

ズーカラデル

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