櫻坂46、4thシングル「五月雨よ」はどんな曲? 2年目のグループが放つメッセージを歌詞やサウンドから考察

コロナ禍とともにあった櫻坂46

 さて、この曲が生まれた背景について少し考えてみたい。

 2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大によって人と人とが会いたくても会えない、会いにくい日々が続いている。それは「会いに行けるアイドル」を謳っていた彼女たちも例外ではなく、活動スタイルの変更を余儀なくされるほどの打撃を受けた(握手会をオンラインでの個別トーク会へと切り替えた)。

 櫻坂46というグループは、そうした時代の真っ只中に誕生している。改名したのが2020年の10月。その頃はまだ近いうちに収束すると思われていた時期だった。

 しかし、ようやく収まったかと思えば、また次の波がやってきて、幾度となく行く手を阻まれる。まさに止みそうで止まない、どっち付かずな状況が今もまだ続いている。「いつの日かはいつ来るんだ」。これは櫻坂46に限らず、世の中全体が抱いている本音だろう。したがってこの歌は、会いたくても会いに行けなくなった時代を生きる私たちのもどかしさや、やるせない気持ちが表れた一曲とも言える。

 上から下へと落ちてくるメロディは、寄せては返す波のように何度も何度も歌われる。それは、天から降りそそぐ無数の雨粒のようにも聴こえるし、空を見上げてはすぐに諦めて下を向くこの歌の優柔不断な主人公像をも彷彿とさせる。そして、期待と失望が交互にやってくる、コロナ禍に翻弄される私たちの心情にも重なるのだ。

 16小節以上にも及ぶあまりにも長い間奏。彼女たちはその間、延々と「Wow…」と歌い続ける。その“祈り”にも似た時間を経て「小雨になった」直後から曲は大きく展開。鳴っては消えてを繰り返していた序盤のビートは、ここでダイナミックに躍動し、やがて力強い四つ打ちへと変化する。その音は、煮え切らない主人公がついに決心して外へと“飛び出した”かのように、自信に満ちあふれた響きなのだ。

 デビューから2年目を迎えた櫻坂46が満を持して世に放つ今作。改名前の欅坂46時代と比べると、聴き手の積極性を促すメッセージ性の部分では一貫しているが、「五月雨よ」はその動機に“愛”があるところに、このグループの大きな変化を感じ取れる。

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