CHAI、進化し続けるバンドの表現 昨夏以降のサウンド、周辺の動向を考察
2022年1月から新たにソニーミュージックの洋楽レーベル<Sony Music Japan International>と契約をしたのも、その証左であろう。あるいは、すでに発表されている北米ツアーや『Primavera Sound Los Angeles』への出演も、バンドの海外への意識を示しているトピックのひとつと言えよう。そして、自分たちの音楽を届ける対象が日本のロックファンに限定されているものではないからこそ、CHAIはキャリアの中で明らかに音楽性を変化させていき、バンドのフォームを更新していったと言えるだろう。
新EP『WINK TOGETHER』には世界5カ国のミュージシャンが参加
2022年2月に発表されたEP『WINK TOGETHER』では、よりダイレクトにその変化を感じ取ることができるし、今後その変化がより顕著になることを予感させてくれる。というのも、この作品では、世界5カ国のミュージシャンがリミックスした楽曲を収録している。韓国のヒップホップシーンを代表するBeenzinoとタッグを組んだ「Donuts Mind If I Do (with Beenzino)」、「まるごと」のサウンドプロデューサーでもあるScoobert DoobertがRemixを手がけた「Miracle (Scoobert Doobert Remix)」など、カラー違いの楽曲が収録されており、そのどれもが今までのCHAIとは違う興奮と感動を与えてくれる。ZAZEN BOYSとコラボした「ACTION」も収録されているが、この曲ではソリッドなギターとドリーミーな音が混ざり合う中、CHAIのメンバーと向井秀徳のボーカルが交錯する面白さが滲み出ている。
つまるところ、CHAIの進化は留まることを知らない、というのが、本稿の結論だ。2022年が終わりを迎える頃には、CHAIはどのような進化を遂げているのか楽しみで仕方がない。『フジロック』以後の音楽的変化は、きっとこれからの進化の予兆に過ぎないと思えるからこそ、なおのことそのように思うのである。