TENDRE、WurtS、緑黄色社会……注目高まる車のCMソング 歴代曲と共に親和性を考察
ホンダ・ヴェゼルだけではない、車CMに漂うブレイクのムード
さて、昨今の車のCMとして記憶に残るのは、2016年9月からオンエアされているホンダ・ヴェゼルの一連のCM。都会的な風景をスピード感ある編集で魅せるハイクオリティな映像は、その斬新さやスタイリッシュさから“憧憬”を想起させる。ここには、前述した1980年代のCMに通ずるものがある。さらに、ほぼ車だけのカットで勝負しているのは、ホンダがヴェゼル自体に圧倒的な自信を持っていることの表れだろう。ならばそのCMをしっかりと視聴者に印象付けるにはどうしたら良いか。それには聴覚と視覚、両方に斬新さが必要だったのではあるまいか。見たことのない車、見たことのない映像、聴いたことのない音楽……そのすべてが都会的でスタイリッシュであるべきだった。ゆえに、Suchmos、SIRUP、King Gnu、Friday Night Plans、藤井風など、完全にブレイクする前のアーティストのインパクトある楽曲がマッチングされてきたのだろう。また、若者を中心にカーシェアリングが浸透し、免許さえ持っていれば、前述した“憧憬”をCM曲をBGMにして容易にトレースできる環境の変化もあり、結果、ホンダ・ヴェゼルのCMはネクストブレイクアーティストの登竜門という位置付けになったのだと思う。
このホンダ・ヴェゼルの成功例から、この数年、ネクストブレイク候補のアーティストが車のCMに頻繁に登場するようになったように感じる。例えば、ダイハツ・アトレーのTENDRE「AIM」、スズキ・ソリオ バンディットの緑黄色社会「Landscape」、トヨタ・カローラシリーズのWurtS「リトルダンサー feat. Ito (PEOPLE 1)」などがそれに当たるだろう。
主に15秒、30秒というCMの世界。その短い間に、どうやって視聴者との“プライベート空間”をリンクさせるのか。そのために、今、車のCM曲には、軽快さやスピード感、キャッチーさだけでなく、ドライブで共有したいと思わせる音楽が求められているのかもしれない。
共有は共感を呼ぶ。否、共有はさらなる共感を呼ぶ。ならば可能性は無限大だ。本稿の執筆にあたり考察し、改めて今後の車のCMに起用される楽曲に興味が湧いてきた次第である。
(※1)https://www.juntsu.co.jp/jouhou/toukei/toukei14.php
(※2)https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003171763
(※3)https://www.cdjournal.com/main/research/inoue-yosui/1437