SEKAI NO OWARI Fukaseが語る、表現を続けていく理由 書家 金澤翔子との思い出も

セカオワFukase、表現を続けていく理由

 現在、東京・六本木ヒルズ森タワー52階・森アーツセンターギャラリーにて書家 金澤翔子展『つきのひかり』が開催中だ。金澤は東京2020(オリンピック・パラリンピック)公式アートポスター制作アーティストを務め、2012年には大河ドラマ『平清盛』(NHK総合)の題字を担当。これまでに国内外で個展を開いては、多くの人の記憶と心に残る言葉を揮毫してきた。今回の展覧会は、金澤の代表作、さらには初公開となる新作を一同に集めた、集大成でありながら新たな一歩ともなる内容になっている。

 そんな全てが見どころである同展覧会にて、金澤はかけがえのない存在とコラボレーションを果たした。相手はSEKAI NO OWARI・Fukase。金澤とは東京都大田区の小学校で同級生だったという。今回、展覧会のタイトルである『つきのひかり』から着想を経てFukaseが送った新しい言葉と、Fukaseが作詞したSEKAI NO OWARIの楽曲の一節をそれぞれ金澤が揮毫した。2人のコラボ作品が並ぶエリアの前で、内覧会を終えたFukaseに話を聞いた。

Fukase(SEKAI NO OWARI)と金澤翔子による作品(左『貴方の光で夜道を照らす』、右SEKAI NO OWARI「銀河街の悪夢」より)

 作品を1つひとつ目に焼き付けるように見ていたFukase。個展を見終えた率直な感想を聞いたが、意外な一言が始めに返ってきた。

「“脅威”だと思いました。それは僕がミュージシャンとして感じる“脅威”で、敵意を持った意味ではなく自然の“脅威”というか。作品と対峙してて温かく感じる時もあれば、すごく冷たくて残酷な自然みたいなものを見ている気持ちにもなりました。今生きている自然というものは、温かく、冷たいものだったなと思いましたね」

 同級生だった2人は、小学4年生の時に金澤が転校したことで離れ離れに。そこから時を経て2016年、テレビの企画を介して20年ぶりに再会する。改めて小学生時代のことを振り返ってもらった。

「小学生の時って、人に対するイメージなんてあまりないと思うんです。それでも小4〜小5ぐらいから、その人の個性みたいなものが出てくると思うんですけど、そこを見ずに離れ離れになってしまった。だから、当時は僕の中で翔子ちゃんの纏うオーラみたいなものはまだ決まっていなかったですね。でも今振り返ると、翔子ちゃんは温かいオーラを持った人なんだなと感じていたことを覚えています」

 「うちの小学校にすごい出世頭がいる」、再会するまでの20年余り、Fukaseは金澤の存在を認識しながら自らも音楽活動を続けていた。そして時は巡り、書家とミュージシャンとしてコラボレーションを果たした。今回、『つきのひかり』という個展のタイトルを受けてFukaseが紡いだ言葉は、「貴方の光で夜道を照らす」。SEKAI NO OWARIが創造する世界にも通ずるこの言葉には、どこかストーリー性を感じずにはいられなかった。

「ストーリーとまではいかないですが、やっぱり翔子ちゃんが書に書く言葉を自分が選ばなければいけないとなった時、自然と幼少期の頃、具体的には小学校の時の自分を思い返したんです。今ではこういう仕事に就いていて、『ライブがあるから今この苦しい時期を乗り越えられます』みたいなメッセージをいただくことがあるんです。でもそれは、僕が太陽なわけじゃないんだよなと思っていて。幼少期の頃から順繰りに自分を見ていくと、僕は色々な人に照らされて、その反射で人を照らしているだけなんだと思ったんです。それってすごく当たり前のことだと思うんですけど、その当たり前のことを言葉にしていかないと人って意外と忘れるな、と。あと歳を重ねたからこそできる解釈だったり、そういうものを自分の中で大切にしたいという意味も込めて、僕の中でベーシックに戻って出てきた言葉を選んだつもりです」

コラボ作品と共に展示されているSEKAI NO OWARIと金澤翔子・金澤泰子の写真(テレビ番組にて再会した2016年当時のもの)

 金澤が揮毫した「貴方の光で夜道を照らす」は、短いながらも同じ時間を共有した2人の小学校時代から現在までをつなぐ作品だ。一方、金澤が書いたSEKAI NO OWARI「銀河街の悪夢」の一節も、独特な魅力を纏って展示されている。10代の頃の言葉が書となった作品を見て、Fukaseはどう感じたのか。

「僕より“だいぶ強いな”と思います。自分の両足で立っている感じがするというか。僕がこの言葉を書いた時は、もうヘロヘロで立っているのも必死という状態だったので。僕ら表現者というのは、新しい解釈をずっと探していて、例えば、恋の歌、世界平和についての話、それは別に新しいテーマでなくていいんです。ずっと使い古されたテーマだったりしても、それに対して新しい解釈をしていくことが、僕の考える表現者のスタイルなんです。だから、僕が書いた「銀河街の悪夢」の歌詞を、翔子ちゃんが解釈して書いたらそれはもはや僕のものではないと思うんですよね。だから、僕が言わなければこの歌詞はこんなに強いんだと思いました」

 金澤とコラボレーションしたFukaseだが、近年は音楽だけでなく様々な分野にて活躍している。そんないくつもの表現を持つFukaseが、現在惹かれているアートはあるのだろうか。話はアートの概念にまで及んだ。

「あまりジャンル分けをしない、アートみたいなものに興味があって。油絵を描いたりするんですけど、立ち返ってみるとじゃあ僕は絵描きになりたいのかというと全然そうではない。それは表現の一環として、油絵という道具を使っているだけなんです。音楽も表現の一環として音や声帯を使っているだけで、できるならそことファッションとかの線引きをなくすものを作りたいというか。だから僕から出てくるものが全てで、この先、肩書きもあまりいらないんじゃないかなと思って。今は色々なことが1人でできたりする時代で、便利になっていく中で可能性が広がった分だけ肩書きというものはいらなくなっていく、そういうものを体現してみたいなとは思っています。ありとあらゆるものがアートなので、アートじゃないものを探す方が難しいですね」

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