日向坂46、2年ぶり有観客で実現した『ひなくり2021』レポ パフォーマンスの進化も感じるストイックなステージに

 日向坂46の単独ライブ『ひなくり2021』が12月24日、25日に幕張メッセ 国際展示場ホール9-11ホールにて開催された。けやき坂46時代の『ひらがなくりすます2018』から数えて、今年で4回目となる彼女たちによる年末恒例のクリスマスライブ。昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で無観客オンラインライブとして開催されたものの、休業中だった宮田愛萌が影アナで参加したり、松田好花がサプライズ出演して富田鈴花と“花ちゃんズ”として「まさか 偶然…」を披露したりと、さまざまなサプライズが用意された。2年ぶりに有観客で行なわれる今年は、『ひなくり』史上最大規模のキャパシティとなり、その広大さを存分に活かした演出で“おひさま”(日向坂46ファンの総称)を楽しませ続けた。本稿では25日公演について記す。

 長方形の広大な会場の両サイドに2つのステージを設置し、フロアの中央あたりに4本並ぶ柱の周りにミニステージを用意するというステージ構成は、2年前の『ひなくり2019 ~17人のサンタクロースと空のクリスマス~』を彷彿とさせるものがあるが、その広さは2年前の比ではない。会場に入った途端に、その想像を絶する広さに思わず笑ってしまったのは筆者だけではなかったはずだ。

 「Overture」が爆音で流れ始めると、メインで使用されるステージ後方の巨大なLEDスクリーンに映像が映し出されるのだが、その映像のクリアさにも驚かされた。このスクリーンを使って、曲ごとにさまざまな絵が用意されたり、メンバーの表情が映されたりするのだが、そのスケールの大きさは会場の大きさに比例したものがあり、メンバーが登場する前からさまざまな要素で圧倒されたことは特筆しておきたい。ネット配信でもそのスケール感は伝わったとは思うが、実際に会場で感じた“トゥー・マッチさ”はその数倍以上のものだったのだから。

 さて、気になるライブの内容だが、過去2回の『ひなくり』にはサブタイトルが付けられ、ストーリー性を重視した進行・演出が用意されていたが、今年の『ひなくり』にはそのサブタイトルがないことに気づいていたおひさまも少なくないことだろう。実は、ここにも今年の『ひなくり』の伏線が隠されていた。今年は曲ごとに異なる演出が用意されていたものの、そこには連続したストーリーはなく、純粋にエンターテインメント性を追求したパフォーマンスが次々と展開されていくという、『ひらがなくりすます2018』に近い要素を感じ取ることができた。ライブの方向性としては原点回帰と言えなくもないが、それを表現する際に用いられる演出は『ひなくり2019』のそれを踏襲しており、2年ぶりに実現した有観客でのクリスマスライブを強い一体感を持って楽しむことを意識したのではないか。そんな印象の伝わる、ストイックなステージだった。

 ライブは序盤にクールめな「アディショナルタイム」「膨大な夢に押し潰されて」といった楽曲が並び、曲に合わせて映像や照明を巧みに使用して各曲のイメージを増幅させていく。一方、「ソンナコトナイヨ」や「アザトカワイイ」のような従来の日向坂46らしいイメージの楽曲では、クリスマスならではのパーティ感を強めることで、幸福に満ちたパフォーマンスが繰り広げられていく。特に「アザトカワイイ」ではステッキを使い、息の合ったパフォーマンスがフィーチャーされるなど、今回ならではの演出も随所で見つけることができた。

 また、期別楽曲ではトロッコを使って会場中を移動したり、フロア中央のミニステージへ移動するなどして、メインステージから遠い距離にいる観客たちへのアピールも忘れない。花ちゃんズ「まさか 偶然…」からはメインステージの反対側にあるもうひとつのステージに拠点を移し、「こんなに好きになっちゃっていいの?」ではステージ上から雨を降らせたかのような“ウォータースクリーン”演出が用いられ、幻想的な映像と相まって楽曲の持つ切なさがより強まっていく。さらに、「ホントの時間」や「何度でも何度でも」ではメンバーが機関車型フロートに乗って会場を一周。どの座席からもメンバーを近くに感じることができるのは、まさに日向坂46らしいサービス精神と言えるだろう。

 メンバーのパフォーマンスについても触れておきたい。この秋に日向坂46として初の全国ツアー『全国おひさま化計画 2021』を経験したことで、グループとしてのまとまりやダンスの統一感はより研ぎ澄まされたものがあり、金村美玖や加藤史帆、佐々木美玲、齊藤京子などセンターポジションに立つメンバーの存在感の強さはツアー時以上に増していることに気づかされる。中でも、「ソンナコトナイヨ」での東村芽依、「キツネ」での河田陽菜といったメンバーがより逞しくなったことも感じられ、グループとしての切り札がどんどん増えている状況は“最強”に近づいているのではないかと思わされた。ここに現在休養中の小坂菜緒が復帰した際には、さらに最強さが増すのでは……そう思わずにはいられない。

 また、上村ひなのを筆頭に、髙橋未来虹や森本茉莉、山口陽世といった3期生の急成長も見逃せない。上村は「何度でも何度でも」でセンターを経験したことが大きく作用したのか、全国ツアー時よりも堂々とした表情・姿で披露していた姿が印象的だった。また、髙橋や森本、山口はこのライブの最中、ダンスの迫力や表情の作り込み含め何度も目を引かれる瞬間があり、先輩メンバーにも引けを取らない存在感を放っていた。3期生の4人は初めてのツアーを経験した結果がしっかり形として表れ始めており、ここから先のさらなる進化が楽しみになってきた。

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