ASIAN KUNG-FU GENERATION、未来のビジョンを確かめ合った25周年ツアー 4人が届け続ける新たなロックの体験
1996年のバンド結成から25年を迎えた今年、ASIAN KUNG-FU GENERATIONは、当初は予想もしていなかった形で今回のアニバーサリーイヤーを迎えることになったと思う。あらゆるアーティストは、このコロナ禍で音楽活動をする上で制約を課されることになってしまったが、4人は逆境の中で、今ロックバンドにできることを模索しながら、新しい楽曲をリリースし、Billboard Live TOKYO公演といった新しい形のライブにも挑戦してきた。そして、2021年の最後に実現したのが、全国のZeppを周る『ASIAN KUNG-FU GENERATION 25th Anniversary Tour 2021 "Quarter-Century"』だ。今回は、YouTubeで無料生配信も行われた11月22日のZepp Tokyo公演の模様をレポートする。
今から振り返れば、メジャーデビュー10周年の2013年、結成20周年の2016年に行われた公演は、どれも、それまで応援し続けてきてくれたファンへの想いを衒いなく伝える「ファン感謝祭」の意味合いが強かったと思う。その考え方は今回の結成25周年ツアーにおいても貫かれているように思うが、しかし決してそれだけではなかった。先に結論から書いてしまえば、4人が掲げるこれから先のビジョンを共に確かめ合うような、とても未来志向なライブだった。
前半に披露されたのは、2000年代の歩みを総括するような初期の代表曲たち。1stフルアルバム『君繋ファイブエム』の冒頭2曲を再現するかのように「フラッシュバック」「未来の破片」で幕を開け、その後、2ndフルアルバム『ソルファ』から「サイレン」や、3rdフルアルバム『ファンクラブ』から「ブラックアウト」「センスレス」といった、当時の果敢な音楽的探究の結実ともいえるナンバーが次々と披露されていく。例えば、緻密に構築されたリズムセクションが光る「ブルートレイン」が最も象徴的なように、いつだってアジカンは王道のロックを鳴らしながら、同時に、その表現フォーマットの更新に挑み続けているバンドだ。そして、当時は実験的と評された楽曲たちが、今では日本のロックシーンにおける一つの新しいスタンダードになっている。そうしたこれまでの歩みを思い起こさせる楽曲の連続に、とても深い感慨が押し寄せてきた。また、この十数年、無数のライブやフェスの空間を強靭な4つ打ちのビートで沸かせてきた「君という花」の爆発力も、改めて本当に凄まじいものだった。
そして、2000年代後半から2010年代の楽曲が紡がれた中盤から後半にかけての展開は、まさにハイライトの連続であった。「新世紀のラブソング」は2009年に発表された楽曲ではあるが、〈ほら 君の涙/さようなら旧石器/恵みの雨だ/僕たちの新世紀〉というメッセージは、何重もの意味で時代の転換点を迎えている2021年の僕たちに、全く新しい輝きをもって響く。また、〈僕たちの現在を/繰り返すことだらけでも そう/いつか君と出会おう/そんな日を思って 日々を行こう/生きて行こう〉と歌う「迷子犬と雨のビート」は、このコロナ禍における混迷に光を差す力強いロックアンセムとして鳴っていた。「踵で愛を打ち鳴らせ」や「スタンダード」も同様に、今、そして、これから先の未来を見据えて鳴らされる祈りや願い、覚悟の表れのようであったと思う。アジカンの楽曲が秘めるメッセージの普遍性、そしてその強度を再確認させてくれる圧巻のメドレーであった。