Base Ball Bear、ジェニーハイ、Nulbarich……ラッパーとのコラボで拡大するバンドの音楽表現
Nulbarich×BASI
Nulbarichもラッパーとコラボした楽曲をリリースしたバンドのひとつだ。NulbarichといえばシンガーソングライターのJQを中心にしたバンド編成で、楽曲や演奏形態によってメンバーを替えているのが特徴。ときにはトリプルギターの9人編成、ときにはツインドラムの7人編成と、固定メンバー制ではないからこその柔軟で自由なアンサンブルを持ち味にしている。そんな彼らがコラボしたのはラッパーのBASI。
「Together feat. BASI」では、スローテンポでメロウなメロディにリズミカルなドラムが合わさるニュージャックスウィング調のサウンドにラップが組み合わさることで、楽曲に緩急がつき、グルーヴ感も増している。「共に楽しむ時間が永遠に続けばいい」と歌った本曲は、彼らの音楽を楽しむありのままの気持ちを率直に表したものだろうし、音楽を愛す両者だからこそ自然とリスナーを引き込む吸引力がある。
デビュー当初より共演の機会もたびたびあった彼らのコラボは、双方のファンにとって待望だったに違いない。もともと親和性のあった彼らだが、コラボによりお互いの持ち味をより浮き上がらせるような1曲になったことだろう。
今回取り上げた3組のように、硬派なギターロックバンド、芸人からクラシックピアニストまでいる個性豊かなバンド、メンバーを固定しない自由な在り方を体現するバンドまで、あらゆる形態のバンドがラッパーとのコラボを取り入れている。もう一歩深掘りをすると、その裏にはヒップホップサウンドの流行が挙げられるだろう。今や誰もが知る存在になったKing Gnu/millennium paradeがその代表例だ。さらにくつろぐことを指す「チル」が普及し、そこに合わせる音楽としてヒップホップサウンドやラップが挙げられることが増えた。バンドがラップを取り入れる流れは、こういったトレンドも背景のひとつにあるのではないか。
バンドとラッパーがコラボすることによって新たな顔を見せるバンドもいれば、もともとの持ち味を増幅させるようなバンドもいたりと、表現法は十人十色。バンドごとに大まかに分類される音楽ジャンルがありつつも、そこを越境していく手法のひとつとしてラップがある。バンドサウンドとラップの融合により、音楽シーンは枠にとらわれず、ますます多様化していくのだろう。