香取慎吾が山本五十六に 世の中を動かす“偉人”たちと共鳴する新しい地図の3人
“世の中を動かす側”に立たされた人の説得力
先日発表された五十六に扮する香取の写真を見て、その威厳ある佇まいに驚いた人も少なくないのではないか。そこにいたのは、時代を背負う責任を味わったことのある男の顔とでも言うのだろうか。五十六の名言の一つである、以下の言葉を思い出さずにはいられなかった。
「苦しいこともあるだろう。言いたいこともあるだろう。不満なこともあるだろう。腹の立つこともあるだろう。泣きたいこともあるだろう。これらをじっとこらえてゆくのが、男の修行である」
五十六は、英米との関係悪化などを鑑み、日独伊三国同盟に反対していたことから、同盟推進派から様々な風評を流され世論からも孤立。一時期は遺書を胸にしたためていたとも言われている(※2)。そんな五十六の逸話に、新しい地図を広げる前の香取を思い出してしまった。様々な憶測が飛び交う中でも、彼は、彼と意を共にしたNAKAMAと共にただじっとこらえていたことを。
大きな流れの中で、自分の志を貫くという強さ。キャリアにとらわれず常に最前線に出てエンタメを届けようとした使命感。そんな私たちにリアルタイムで見せてきた生き様こそ、香取が発すセリフの一言一句に説得力を持たせるのだろう。
また、キャリアを重ね新たな作品に触れるたび、その役柄の要素を吸収していくように、人としての厚みを増していったように感じられた香取の歩み。
かつて、香取が大河ドラマ『新選組!』(NHK総合)で近藤勇を演じた際、脚本を務めた三谷幸喜は、「“平成の近藤勇は香取慎吾以外考えられない”っていうくらいになるようにしたい、ってインタビューとかでも話したんですけど、その通りになった」と、『SmaSTATION!!』(テレビ朝日系)のゲストトークで話していた。同作で描かれた近藤勇は世間一般が抱くイメージとは異なるものだったため「いろいろ言われるだろう」と三谷も逆境を覚悟していたとのこと。そんな中でも役を演じた香取の顔つきは、作品の前後で大きく変わったというのだ。
時代は異なれど、世の中を動かす中心にいる人が抱えているものというのは、そう大きくは変わらないのかもしれない。個人で抱えるレベルを遥かに超えた葛藤と苦悩に直面した人は、どのような顔をしているのか。香取の顔つきを見れば、それをリアルに感じることができる。
それは草なぎの徳川慶喜も、稲垣のベートーヴェンも同じ。年々彼らが演じるキャラクターが「ハマり役だ」と絶賛されるようになっているのは、きっと彼らが過ごしてきたこれまでの日々と、“偉人”と称させる人たちが抱えざるを得なかったものとが共鳴しているからなのかもしれない。それはこれからも積み上げられていくものだと思うと、彼らの役者としての広がりが楽しみでならない。
※1:http://earth-words.org/archives/6742
※2:https://www.asahi.com/articles/ASP4M6SVVP4MUOHB00P.html