サンプラザ中野くん、25年が経っても色あせない「旅人よ ~The Longest Journey」のパワー 時代が求めた真の応援歌
サンプラザ中野くんが11月10日、ミニアルバム『旅人よ~The Longest Journey』をリリース。爆風スランプのボーカルとして「Runner」を始め多くの応援歌を歌ってきた中野くん。本作には、猿岩石への応援歌として1996年にリリースされて感動を呼んだ、「旅人よ ~The Longest Journey」の25周年記念バージョンが収録されている。時代が求めた同曲の魅力を考える。
傷つき泥水をすすりながら前に進もうとする者への賛辞
「旅人よ~The Longest Journey」は、爆風スランプが1996年9月21日に発売した29枚目のシングル表題曲で、バラエティ番組『進め!電波少年』(日本テレビ系)の名物企画「猿岩石ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」のために制作されたもの。当時オリコン最高8位を獲得し、約50万枚を売り上げるヒット曲となった。
「猿岩石ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」は、お笑いコンビの猿岩石(有吉弘行・森脇和成)が、香港からロンドンまで所持金10万円でヒッチハイク旅を行ったもの。現地でアルバイトをして食費や交通費を稼ぎ、心身ともにボロボロになりながら旅を続ける姿が感動を呼び、同企画は日本中を巻き込んでの社会現象に。帰国後はヒッチハイク旅のことを綴った書籍『猿岩石日記』がシリーズ累計で250万部のベストセラーを記録。猿岩石は藤井フミヤの楽曲提供による「白い雲のように」でCDデビューし、同曲はミリオンヒットとなり、その後10枚のシングルと2枚のオリジナルアルバムなどをリリースした。
「旅人よ~The Longest Journey」は、猿岩石を応援するために、サンプラザ中野(当時)とパッパラー河合がインドまで行って届けた楽曲。インドに着いたサンプラザたちだったが、猿岩石の2人がなかなか見つからず、町中を探し回ってようやく出会えたといういきさつもあり、出会えた感動で思わず2人を抱きしめたサンプラザたち。状況が飲み込めずポカンとしている猿岩石の2人に、目の前で歌って聴かせたのが「旅人よ(仮)」だった。力強くも優しいその歌を、正座して涙しながら聴き入った2人。〈何だかほんとに安心したよ〉というフレーズからは、インド中を探し回ってやっと2人を見つけた時の安堵感が溢れ、力強くも優しい歌声と猿岩石の涙が、日本中を感動させた。また、ゴールしたロンドンでは、ロイヤル・フィルハーモニックの壮大な演奏と共に同曲が歌われるなど、猿岩石の旅路を象徴するような楽曲になった。
この曲には“頑張れ!”など直接的に人の背中を押すワードは一切出てこない。出てくるのは、〈カッコ悪い道を選んだ男 カッコ悪い夢を選んだ男〉という、傷つき泥水をすすりながらでも前に進もうとする者への賛辞と、〈どうかどうか笑顔を絶やさぬまま〉といった、心が折れないで欲しいという願いだ。とうに頑張るというレベルを超え、死線ギリギリのところで踏ん張っていた猿岩石を応援する言葉として、これ以上のものはなかっただろう。彼らの奮闘を讃えながら、決してひとりではないことを伝えることが、真の応援に繋がった。