WACK×AKB48グループコラボ増加の背景は? 共通するアイドル文化へのカウンター精神

 AKB48グループとWACKのコラボが続いている。柏木由紀は、WACK代表の渡辺淳之介とTOKYO FMで共演したことがきっかけで、3月に渡辺プロデュースのソロシングル『CAN YOU WALK WITH ME??』をリリース。さらに、柏木がWACK所属の7グループに加入し、シングル7作品を11月30日に同時発売することも決定している。今回は、CDに投票券を同梱して、上位のWACKメンバー7人と柏木で新グループを結成し、プロデュースは柏木が担当するという。開票イベントは12月27日に東京ドームシティホールで開催される予定だ。

『CAN YOU WALK WITH ME??』

 さらに12月には豆柴の大群が対バンツアー『豆柴48』を開催し、その対バンがSTU48、SKE48内グループのカミングフレーバー、AKB48内グループのIxRであることも発表された。

 2021年にAKB48グループとWACKのコラボが続いていることに関しては、さまざまな見方ができるだろう。「落ち目の48が勢いのあるWACKと組んでいる」という意地悪い見方もあるはずだ。

 しかし、柏木が所属するAKB48を見ても、2021年はかなり「攻め」に出ている印象がある。7月からテレビ東京系で『乃木坂に、越されました〜AKB48、色々あってテレ東からの大逆襲!〜』の放送が開始され、その番組名も話題を呼んだ(現在は放送休止中)。

 そして、特記すべきは9月にリリースされた『根も葉もRumor』のヒットだ。MVだけではなく「Dance Practice」などの映像をリリースまでに次々とYouTubeで公開し、さらにさまざまなアーティストとのコラボ映像も公開していく手法には、2013年の『恋するフォーチュンクッキー』も連想した。結果として、AKB48の公式YouTubeチャンネルの再生リスト「根も葉もRumor」の動画の総再生回数は、1000万回以上になっている。

【MV full】根も葉もRumor / AKB48 58th Single【公式】

 AKB48グループとWACKのコラボは、こうした流れの中に位置づけられるのが妥当だ。

 一方で、「AKB48的なるもの」のカウンターに存在しているのが「WACK的なるもの」と世間に見られていることも事実だろう。いわば王道と邪道だ。しかし、それは本当だろうか?

 渡辺がインタビューなどでたびたび発言しているのは、2012年に公開されたAKB48のドキュメンタリー映画『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』が、初期の第1期BiSに対して大きな影響を与えたというエピソードだ。『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on』の中でAKB48のメンバーたちは過呼吸で次々に倒れていき、見る者に「過酷さ」を強く印象づける。しかし、当時の渡辺にとって、楽屋でアイドルが過呼吸になっているのはごく日常的な光景であり、これでは正面から立ち向かえないと感じた渡辺はBiSのさらなる仕掛けに走っていく——というエピソードである。

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