『大正オトメ御伽話』インタビュー

GARNiDELiA×土岐隼一 『大正オトメ御伽話』特別対談 両者に聞く、いつの時代も変わらない幸福の在り方

好きな人を愛する気持ちが女の子を強くさせる

GARNiDELiA

ーーここからはそれぞれのテーマソング制作について、お話を聞かせてください。まずGARNiDELiAの皆さん、オープニングテーマ「オトメの心得」はどういう形で制作を進めていったんですか?

toku:最初にまず「ビッグバンド風な音が欲しい」というオーダーがあったんです。僕らはわりとデジタル色やロックテイストの強い楽曲がメインだったので、「うちらがビッグバンドやるにはどうしたらいいかな?」ということを2人で考えて。ひとまず必要なものはブラスアレンジとストリングアレンジなのかなと思い、それ以外の楽器をデジタルにして作れば僕らのサウンドになるかもねと、そういうところからデモを作っていったんです。で、メロディができた段階でMARiAに引き継いで歌詞を書いてもらって。その歌詞に作品とリンクしたものがたくさん入っているので、これはもうジャストなんじゃないかなという感じでしたね。

土岐:この曲、めっちゃ好きです!

toku:ありがとうございます!

土岐:ジャジーな感じの曲が好きだし、しかも今までのガルニデさんにない雰囲気だったので、アガりました。

MARiA:そうですよね。自分たちでも新鮮だなと思いましたから。

toku:何年かに一回、こういう自分たちの音楽に問いかけてくるようなオーダーがあったりして、それがアニソンの面白いところだと思っているので、今回もそんな感じでチャレンジしました。

MARiA:歌詞に関してはまず“オトメ(乙女)”をテーマに書こうと思い、原作を読ませていただいたんですが、ヒロインの夕月ちゃんの心情であったり、夕月ちゃんのみならずオトメならみんな感じたことのある好きな人を思う気持ちだったり……女の子って好きな人のことを思うと、泣いちゃったり悲しくなったりすることもあるけど、やっぱり強さが女の子の一番の持ち味だと思っていて。好きな人を愛する気持ちが女の子を強くさせるから、ただ可愛らしい世界観だけじゃなくて芯の一本通った強さも描きたいなと。華やかな世界だけじゃなくて、そこを一番感じ取ってもらえたらうれしいなという願いを込めて書いたのが「オトメの心得」です。

【MV】GARNiDELiA「オトメの心得」from 『Duality Code』

ーー実際、デジタル色を残しつつもビッグバンドテイストの楽曲に仕上がりましたね。かつ、アニメの映像込みで拝見したとき、アニメの王道のオープニングテーマという雰囲気が非常に強くて。

MARiA:ありがとうございます! めちゃくちゃうれしいです。めちゃくちゃ悩みましたけどね(笑)。

ーーどういったところが悩みの種でしたか?

toku:この曲をどうライブのセトリに組み込むか、とか(笑)。

MARiA:アルバムの曲順もね。皆さんが聴いて新鮮だなと思ってもらえるサウンドですし。

toku:でも、本当に一番大変だったのは、ビッグバンドの人数感を出すことだったかな。このコロナ禍でスタジオに大人数では入れないのもありましたし。だから、実はブラスもひとりだけだし、弦もひとりだけ。

MARiA:なのにビッグバンド感を出さなくちゃいけなくて。

土岐:そっか。それはすごいですね。

MARiA:あんなに華やかな音だし、大勢で「せーの!」で録っている感じがあるかもしれないけど、実はデータでやりとりしているという(笑)。

土岐:最初に弾いた人の音を聴いて、そこに音を重ねていくんですか?

toku:大体そういう流れですね。僕が大まかなデモを作って、それに対して音を重ねて返してもらって、「もうちょっとこうしてください」というやりとりを重ねていくという。

土岐:大変だなあ……。

ーーあと、この曲を含むニューアルバム『Duality Code』を聴くと、おふたりが今年前半をソロ活動に時間を費やしたことがしっかり形となって表れていると感じました。

toku:それは僕も感じていて。MARiAが作ったソロアルバムと僕が作ったソロアルバムの合体みたいなことが、こうやって華々しくアニメのオープニングを飾れるようなことのひとつのソースになっている気がして、僕はうれしいですね。

MARiA:歌い方に関しては、ソロであれだけのほかの人の書いた曲を歌ったことで、いろんなスキルを習得したなと自分でも感じていて。そういう要素は、確かにこの曲にも取り込めているような気がします。

1の幸せを全力で楽しむことが生きていく上で大事

土岐隼一

ーー一方、土岐さんはエンディングテーマ「真心に奏」を歌っていますが、この楽曲を最初にいただいたときの印象は?

土岐:『大正オトメ御伽話』のエンディングテーマを歌わせていただくというところで、「どういう楽曲にしよう?」と音楽チームのスタッフと話していたんですね。それで、作品のどこを抽出しようかなと考えていく中で珠彦くんと夕月ちゃんの関係性と大正時代という点、そして僕自身の楽曲として共感できるところはどこだろう?ということを探したんです。彼らって本当に大変な世の中を生きているけど、でもすごく幸せそうじゃないですか。それって、普段生きていく中では本当にしんどいけど、一緒にいられる時間だったり、ごはんを食べるでも散歩をするでも、日常のほんの一瞬の些細なことを全力で幸せに感じられるからだと思うんですよ。そこに関しては、大正時代でも現代でもあまり変わらないと思っています。

 大人になると嫌なことを頑張って、ちょっとの幸せを全力で噛み締められるようになってくるじゃないですか。そこをより楽しめる人たちが、僕はカッコいい大人だと思うんですね。つまり、10のつらいことに対して1の幸せを全力で楽しむことって、人生を生きていく上ですごく大事なんじゃないかなと。その点において僕は珠彦くんたちに共感できたし、僕もそれをモットーにして生きているので、日常にある些細な幸せを彩れるような楽曲を作りたいと思ったんです。それこそ、ちょっと散歩のときとか寝る前とか、ゆったりした気持ちで聴ける曲にしたいと制作陣にお願いして、いろいろなすり合わせをしていただいて、できた楽曲にさっき話したコンセプトの歌詞を乗せてできた曲が「真心に奏」です。

【土岐隼一】2nd Single「真心に奏」MV short ver.

ーーなるほど。この曲を歌う際に特に意識したことであったり、気持ちの込め方など注力したポイントはどういったところでしょう?

土岐:僕はいただいた楽曲と歌詞によって、歌い方や声の出し方が意識せずとも変わるタイプらしいんです。なので、そういう感性を大切にしつつも、今回に関しては幸福感の溢れる楽曲にしたいなと思っていたので、聴いている人たちがニコッとなってもらえるようにとイメージして歌いました。だから、終始笑顔で歌っていた気がしますね。

ーーまた、この曲はクラムボンのミトさんが手がけたアレンジが非常に心地よいものなんですよね。

土岐:そうなんです。もともと素敵な曲だったんですけど、ミトさんがアレンジしてくださったことでパステルカラーのステンドグラスみたいな、すごく透き通っていて奥行きがある楽曲にしてくださって。楽曲のイメージを汲んでいただいて、より素敵に生まれ変わって、本当にありがたいなと思います。

ーー「オトメの心得」の華やかさといい、「真心に奏」のしっとり感といい、それぞれ……。

MARiA:まさにアニメのオープニングテーマ、エンディングテーマとしてそれぞれの役割をしっかり果たしていますよね。

土岐:題材として切り取っている部分がまるで違うから、アニメを観たときに「……すごっ!」って驚きましたもの。

toku:しっかり役割分担ができていて。

ーー物語中でちょっとつらい出来事があっても、「真心に奏」が流れると希望を持ってエンディングを迎えられますし。

土岐:ですね。ストーリー上、しんどいことも多いけど、それでも珠彦くんと夕月ちゃんは絶対に前を向いているじゃないですか。だから、エンディングではちょっと明るい気持ちになって終われたらいいな、みんなのつらさを緩和できたらいいなと思っています。

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