乃木坂46 秋元真夏、新内眞衣、山下美月、賀喜遥香……ベスト盤メンバー別ジャケットに秘められた感動の物語

 衣装とは必ずしも楽曲と付随しているわけではない。山下美月が着用衣装に選んだのは「3期生オーディション 着用衣装」。2016年9月、オーディション合格発表の記者会見で着ていた3期生にとっては始まりの衣装である。あれから5年が経ち、このベストアルバムのタイミングでオーディション時の衣装を選ぶ山下に、初心を忘れずに10周年の先へと進んでいく覚悟を感じさせる。驚くのは、当時と比べて見違えるほどに大人の表情を浮かべていること。女優としても飛躍を見せる今の山下には気品と可憐さが同居している。さらに山下がシルエットに選んだのは「Rewindあの日 歌唱衣装」「ガールズルール 歌唱衣装」。「Rewindあの日」は『7th YEAR BIRTHDAY LIVE』で卒業生であり軍団長だった若月佑美のポジションで自身が披露した楽曲。白石麻衣の卒業後、山下がそのセンターを張っているのが「ガールズルール」だ。

 グループ自体が成熟した以降にメンバーとして入ってきた3期生・4期生。今回のジャケット発表において、反響を呼んでいるのが彼女たちの多くが憧れの先輩メンバーに纏わる衣装を選択していることだ。賀喜遥香もその一人。山下をきっかけに乃木坂46を好きになった賀喜は、その後に橋本奈々未の存在を知り、もっと早くに知っていればと後悔していることを明かしている。多くの場面でマイベストMVに「サヨナラの意味」を挙げてきた賀喜。彼女が着用衣装に選んだのは「2016年 紅白 サヨナラの意味 歌唱衣装」。橋本にとってアイドル人生最後となったステージでの衣装だ。さらにこの真紅のドレスは、今年5月に開催された『乃木坂46 9th YEAR BIRTHDAY LIVE ~3期生ライブ~』の中で山下が着用していた衣装でもあり、橋本だけでなく、山下への尊敬の念も同時に表した見事なチョイスである。さらに、シルエットに写るのは『8th YEAR BIRTHDAY LIVE』でソロとして「強がる蕾」を歌った際の衣装だ。

 先述した『3期生ライブ』での衣装パートや2019年に開催された『乃木坂46 Artworks だいたいぜんぶ展』での衣装展示、筒井あやめが全シングル衣装を着用した特設サイト「筒井あやめ 制服コレクション」などからも分かるように、乃木坂46において衣装とはその楽曲の世界観を表現する上で重要なアイテムの一つである。今回の『Time flies』カスタムジャケットから伝わってくるのは、メンバー一人ひとりの思いが乗り衣装とともに楽曲が昇華していること、そして脈々と受け継がれる乃木坂46が築いてきた10年間の歴史だ。

関連記事