砂原良徳×白根賢一:高橋幸宏対談

砂原良徳×白根賢一が語る、高橋幸宏の凄み すべてがデザインされたスタイリッシュなドラミング

高橋幸宏の一般的なドラマーとは異なる価値観

ーードラマーとしてのすごさはどういうところにあるんでしょう。

白根:沢山あります。なんで小学校の時とか、自分が憧れて真似してたのかなって考えると、やっぱりフィルとかをすごく考えてらっしゃるんだなと。僕がいい加減に、その場でしのぎでやってるのとは大違い。洋服を作られてる(※デザイナーとして『BRICKS MONO』『yukihiro takahashi collection』というブランドを主宰)こともあると思うんですけど、すごくデザインされている。それはドラムに限らずだと思うんですけど。

砂原:今、白根さんも言ってましたけど、幸宏さんのドラムとか音色って、スタイリッシュでデザインされてるんですよね。あと、このベストに入ってる80年代の幸宏さんを追いかけていると、幸宏さんが次に着るスーツ、来年はこんな感じになるなということがわかる。多分来年は三つボタンになって、スネアはカンカンに張った音になるだろうななんてことが、なんとなくわかってくるんです。次、どうなって行くかが。80年代、特に1983年から1987年くらいまではそういう風に聴いてましたね。

ーースタイルと音楽が分かち難く繋がっているということですね。

砂原:そうですね。あと、パターンや音色もだけど、ドラムのセッティングもカッコいいですよね。神経質そうなセッティング、カチッとしてますよね。

白根:うん、それもデザインされてます。

砂原:飛行機のコックピットみたいなんですよ。

ーー幸宏さんを形容する言葉はやっぱり「カッコいい」になっちゃいますね(笑)。

白根:そうですよ(笑)。カッコいいっていうのも抽象的な言い方ですけど、少なくとも日本のドラマーで、一聴して誰が叩いてるかわかるのは幸宏さんしかいないんじゃないかな。他は「なんとなくあの人かな」って感じなんですけど、幸宏さんは一発でわかる。

砂原:クセは強いですね。幸宏さん、80年代当時もよくテクニックだけに走るドラマーとかを結構批判したりしてましたけど、価値観が単純に上手い・下手だけに偏ってないというか。音色やドラムのセッティングもそうだし、パターンとかも、それが特徴なんじゃないですかね。当時は、ドラマーっていうといかに上手いか、いかに難しいパターンを叩けるかとか、そういう価値観に偏ってたと思うんですよ。

白根:体育会系だ。

砂原:そう、でも幸宏さんはそうじゃなくてパターンや音色、セッティングのスタイリッシュさから考えても、価値観が一般的なドラマーとは違うんですよね。

ーーそれはきっとソングライターだからというのが大きいですよね。

白根:そうだと思いますね。今回のCDはほとんど幸宏さんが叩いてるでしょ。アレンジもして、歌も歌い、ドラマーとして確立して、その先に作曲があって、プロデューサーとしてもどんどんやって……という「ドラムから始まってる」というよりは、多分、音楽……こういうものを表現したい、こういう服を着て、こういうジャケットで……ということを実現するため、「ドラムは一個の要素」でしかないんだと思いますね。

砂原:すごくトータルな感じなんですよね。普通ドラマーのアルバムって「ドラムのアルバム」って感じなんです。ギタリストのアルバムだとギターの音がでかいとか。幸宏さんのアルバムもドラムの音がでかいですけど、ドラマーだからじゃないんですよ。80年代の新しい音楽の考え方としてビートが強調されたということで、それに則ってドラムの音がでかくなったと思うんです。あと、ドラマーって自分のドラムが生でどう鳴ってるかということにものすごくこだわるんですけど、幸宏さんの場合は、もちろんそれにもこだわるけど、録って、最終的にどういう形でスピーカーから出るのか、最終的にどうなるかってことにこだわりがある。録った後、じゃあ、次は何やるかって考えるんですよね。

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