くるり、母校から届けた『京都音楽博覧会2021』 充実の二部構成で味わう最新形と原点

くるり、母校から届けた『京都音博2021』

 岸田&佐藤が以学館前で学生時代の思い出を語り(岸田はプロレス同好会のリングに勝手に上がって、現・レイザーラモンHGに「神聖なるリングに土足で上がるな!」と、ブレーンバスターで投げられた、とのこと)、そこから学生会館まで歩いて行き、コミューンの部室を紹介する。そして、学生会館の楽屋口に下げられた『音博』ののれんをくぐってメンバーが入っていき、小ホールで二部がスタート。5人が客席を向いたフォーメーション、5人ともTシャツ姿、さらに照明の作られ方などを見ても、普段のライブに近い佇まいである。

 まず、岸田、佐藤、野崎、石若による4人編成でスタートした1曲目は、デビューシングル『東京』のカップリングだった「尼崎の魚」。激しいテンポチェンジなど1曲の中の抑揚が大きく、とても初期くるりらしいこの曲で、一部との違いがさらにくっきりと表される。

 2曲目「窓」(2ndアルバム『図鑑』収録)と、3曲目「ハローグッバイ」(シングル『男の子と女の子』カップリング)は岸田・佐藤・石若の3人編成でプレイし、「GO BACK TO CHINA」から松本が加わり5人編成へ。松本は「HOW TO GO」や「ハイウェイ」でボトルネックギターを聴かせ、「奇跡」の冒頭では石若がグロッケンを叩いてからドラムに移る。

 8曲目「続きのない夢の中」は、メジャーデビュー前のアルバム『ファンデリア』からの曲だし、次の「ランチ」は1stアルバム『さよならストレンジャー』の1曲目だ。この2曲や「尼崎の魚」は、ここ学生会館で演奏していた頃のレパートリーから選んだ、ということかもしれない。

 全13曲中、6月のツアーや『FUJI ROCK FESTIVAL '21』出演時と重なるものが5曲、重ならないものが8曲。総じて、ギター主体のシンプルなロックバンドとしてのくるりの魅力を、存分に味わえる時間だった。

 特に、10曲目「ハイウェイ」の間奏明け、未就学児のようにも、米寿を越えた老人のようにも思える、なんともいえない眼差しで歌っている岸田の表情がとても印象的に感じた。「さよならアメリカ」や、松本が下がって4人編成でプレイされた「東京」(言わずと知れたデビューシングル曲であり人気曲だが、この日は「尼崎の魚」などと同じ理由で演奏されたように感じた)を経て、ラストは「宿はなし」。

 『京都音博』はこの曲で締めるのが恒例であり、ここ数年はメンバーのみ=岸田・佐藤・ファンファンの3人で演奏されてきた。ファンファンがくるりを去ってから初の開催である今回は、岸田・佐藤・野崎・石若の4人編成で演奏し、ファンファンがトランペットで吹いていたイントロや間奏のフレーズは、ピアノが担った。最後に、BGMで「リバー」が流れる中、アレンジャーの三浦秀秋も加えて、参加したミュージシャン一人ずつがコメントしていく。

 余談。この『京都音博』の4日前の深夜に放送されたドキュメンタリー番組『磔磔 ライブハウスとコロナの500日』(フジテレビ系)の冒頭で、くるりが2020年7月11日に行った生配信ライブの一部が放送されていたが、番組は磔磔だけでなく、拾得のスタッフにも取材していた。拾得のオーナーによると、去年の夏はくるりのおかげで助かったという。「拾得を1カ月近く貸し切り、仕出し屋など周囲のお店も使ってくれて、拾得は何もしていないのにみんなから感謝された」と話していた。

 2020年はライブハウス、2021年は大学と、自らのルーツを無観客配信ライブの場に選んだ『京都音楽博覧会』。2022年はいつもの梅小路公園に、有観客で戻れることを願う。

■イベント情報
『京都音楽博覧会2021 オンライン』
出演:くるり
開催日・配信日:2021年10月2日(土)開場19:00 / 開演19:30
見逃し配信期間:2021年10月11日(月)23:59まで
LIVE配信視聴券:前売¥3,500(税込)/ 当日¥4,000(税込)
チケット情報はこちら

<参加メンバー>
岸田繁(Vo & Gt)
佐藤征史(Ba)
松本大樹(Gt)
石若駿(Dr)
中山航介(Perc & Pf)
山崎大輝(Perc)
野崎泰弘(Key)
ハタヤ テツヤ(Key)
副田整歩(Sax,Fl & Cl)
野口勇介(Tp & F.Hr)
米崎星奈(Hr)
小坂みか(Harp)
加藤哉子(Cho)
ヤマグチヒロコ(Cho)
Homecomings 畳野彩加(Guest Vocal)

クラウドファンディング:https://readyfor.jp/projects/onpaku2021
Website:http://kyotoonpaku.net/
Twitter:https://twitter.com/kyotoonpaku

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