リル・ナズ・X、社会に多様性とポジティブな影響をもたらす“アーティスト”
参照:https://spotifycharts.com/regional/global/weekly/latest
Spotifyの「トップ50(グローバル)」は、世界的に最もストリーミング再生された曲をランク付けしたチャート。本連載では、同チャートを1週間分集計した数値のデータを元に、グローバルな音楽シーンの潮流をお届けする。第2回となる今回は、9月30日公開(9月23日~9月29日)のチャート見つつ、9月17日に待望のデビューアルバムをリリースしたリル・ナズ・Xの活動をおさらいしていく。
先週に引き続き、ザ・キッド・ラロイとジャスティン・ビーバーのコラボ曲「Stay」が1位、そしてリル・ナズ・Xの「Industry Baby」が2位となった今週のチャート。先週3位にランクインしていたリル・ナズ・Xの「Thats What I Want」が9位にランクダウンし、その代わりColdplayとBTSのコラボ曲「My Universe」が初登場3位となった。「My Universe」のMVは音楽が禁止された銀河系を舞台となっており、ケンドリック・ラマーなどのMVを手掛けるデイヴ・メイヤーズが監督を務めている。
今週大きくランクアップしたのナイジェリアの若手アーティストCKayの「love nwantiti (ah ah ah)」。先週は36位であったが、20ポイントアップし、16位にランクインした。こちらの楽曲は2019年にリリースされたものであり、本人は自身の音楽を「未来からきたアフロポップス」と形容している(※1)。
時代を象徴するカムアップを遂げたリル・ナズ・X
2019年に「Old Town Road」が大ヒットしたことにより、一躍有名になったリル・ナズ・X。急にシーンに躍り出た彼であるが、音楽活動を始める前はFacebookやVineなどのSNSでコメディ動画をアップしていたという。さらに彼は音楽をリリースする前から、ファンを獲得するために、Twitterでミーム投稿するアカウントを運営していた。様々な形態のエンターテインメントに興味を持っていたため、何にフォーカスするか悩んでいた彼であるが、2018年に音楽活動に専念すると決め、「Old Town Road」の制作に至ったとTIME誌に語っている(※2)。
「Old Town Road」のビートは、リル・ナズ・Xがネットで$30で購入したものであった。また、アトランタのレコーディングスタジオが火曜日にやっている「1時間以内で$20」キャンペーンで、1時間以内でレコーディングされたということも明かされており、非常に低予算で制作されたことがわかる(※3)。
低予算で制作された楽曲であったが、リル・ナズ・Xは自主でプロモーションに全力をかけたと語っている。彼は、なんと楽曲をプロモーションするためにSNSで100個ほどのミームを作って投稿したのだ。そのなかで、「Old Town Road」を使用した#yeehawチャレンジというミームがバイラルになり、ついには2021年の1月にはビリー・レイ・サイラスが参加したリミックスバージョンが14×プラチナ認定され、歴史上最も売れたシングルになった(※4)。