案山子「真生活」、リリースから2年経ちバイラルチャート急上昇 最大の武器はメロディの軽快さとシンプルさにあり

 「真生活」は、心が離れた恋人のことを女性視点で歌った内容。歌詞には、〈泡沫〉〈モルヒネ〉〈幽玄〉〈蕩けた脳〉など、字面だけ見ると鮮烈で文学的な言葉使いが目立つが、〈ねえ ねえ〉などの口語体を混ぜたり、素っ気ない情景の描写を入れたり、前述した鮮烈な言葉を散らして配置することで、独特のストーリー作りに成功している。

 スタイリッシュで繊細なバックトラック、短いフレーズを重ねる構成ながら抒情的なメロディ、軽快だが憂いある間奏のピアノなど、耳に残る個性的なサウンドも多い。Spotifyで他の楽曲も聴いてみると、ジャズ、エレクトロニカ、シティポップなど引き出しも多彩だが、案山子最大の武器は、メロディの軽快さとシンプルさにある。そこが言葉とマッチした時のキャッチーさは凄まじい。その覚えやすさで拡散した瞬間最大風速は、今週のバイラルチャートで実証済みだ。

 ちなみに、Spotifyの案山子のページには「shapeshifter」というクレジットがついている。案山子が独自でレーベル名をつけたのだと思うが、その意味は「いろいろな姿に変身する妖怪」のことだ。その正体は地域によって違うなど諸説あり、正体がわからないのではなくて、正体を明かしていないのかもしれない。アーテイスト名、案山子だし……なんて深読みをせずにはいられない、今週のバイラルチャートだった。

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