Ado、Da-iCE、櫻坂46、ずっと真夜中でいいのに。……閉塞感漂う現代に生まれた強烈なメッセージ放つ楽曲たち
Da-iCE「Kartell」
8月9日にリリースされたDa-iCEの「Kartell」もまた、世の中の理不尽に対して「NO」を突きつける1曲だ。〈嘘くさい常識を並べて/いつまでもその椅子に/座ってはいられない〉と、ことなかれ主義に真っ向から反発し、〈蹴飛ばせ 忖度と不感症〉、〈破り捨てる損得勘定〉など、泥臭いほどの挑戦の姿勢を攻撃的なトラックに乗せて歌う。
そしてここで注目したいのが、この曲が提供曲ではなく、リーダーの工藤大輝が作詞作曲を手がけているということだ。「BACK TO BACK」でも作詞(作曲はAlbin Nordqvistとのコライト)を手がけ、Da-iCEのアグレッシブな魅力を切り拓いてきた工藤。2011年に結成したDa-iCEは今年で活動11年目となるが、2020年にはレーベルをavexに移籍、昨年8月から6カ月連続リリースを行うなど、ここへきて変化と挑戦の連続だ。「Kartell」は、そんなDa-iCEの新たな10年に向けた決意表明でもあるという。キャリアを積み上げてきてなお、飢餓感のある強い姿勢を崩さない、そんなDa-iCEの意思が感じられる楽曲だ。
ずっと真夜中でいいのに。「あいつら全員同窓会」
強いメッセージを、トリッキーなメロディとリリックに包んで思わぬ角度からずぶりと刺してくるアーティストがいる。それが、ずっと真夜中でいいのに。だ。「意味がわからないようで、なんとなくわかる」という、理屈ではなく感覚的に共感を呼ぶACAねの言語センスは、今年6月に配信リリースされた「あいつら全員同窓会」でも遺憾なく発揮されている。
この曲でまず触れたいのは、曲タイトルの、口に出して言いたくなる圧倒的な語感の良さである。そして、「あいつら全員同窓会」という言葉の裏にある、「でも自分は同窓会には行かない」という意思表示だ。
ACAねらしい婉曲的なフレーズで綴られている歌詞の中でも、比較的直截的なメッセージを感じるのが〈誰かをけなして 自分は真っ当/前後を削った一言だけを/集団攻撃 小さな誤解が命取り〉という部分だ。この歌詞から、昨今問題になりやすいSNSでの誹謗中傷を想起するのはたやすい。そういった世情を前に、正面から対立していくのではなく〈ぼーっとして 没頭して/身勝手な僕でいい〉と軽やかに切り離してしまう自由さが、ずとまよ。らしい。文字通り、過去のクラスメイトをはじめ、具体的な顔のない社会の意見など、〈どうでもいいから置いてった〉なのだ。
ちょっとした発言や振る舞いが、誰の琴線に触れ、どんな批判を浴びるかわからない社会となった。SNSを始めとする発信ツールがあらゆる世代に普及した今、そのリスクは顔の知れた有名人だけのものではない。インターネットに日常的に触れながら生活していれば、その感覚がわかるだろう。多くの人が感じている息苦しい空気感に対して、真正面からぶつかるのか、うまくいなしていくのか、処世術とも呼べるスタンスがそれぞれの曲には込められている。その中で共通して発信されているのは、社会の一員ではあったとしても、自分の本質、方向性を決めるのは社会ではなく、自分自身であるということではないだろうか。どのスタンスを選ぶかはもちろん自由だが、これらの曲を味方として携えておけば、閉塞感のある世界で、少しだけ息がしやすくなるかもしれない。