慎吾ママや徳川慶喜も登場 突如始まった『ワルイコあつまれ』、新しい地図の3人が提案する学び方とは?
リスペクトと親しみやすさを両立させる絶妙なバランス感覚
稲垣が登場した読み聞かせのコーナー「★げいのうかい★むかしばなし」でも、新しい柔軟な視点を提案してくれた。豪傑なキャラクターで知られる勝新太郎の、映画スターらしいエピソードを披露しながらも、「豪快で痛快な男・勝新太郎を演じていた」と語りかける。「みんなの周りにいるとっても強そうに見える人も、実はとっても臆病だったりやさしかったりするかもしれませんよ。勝新太郎みたいに」と、誰かの一面だけを見てその人を判断してはいないかと、考えさせるきっかけをくれる。
また、稲垣が美術館キュレーターに、そして香取が引率の先生に扮し、子どもたちと共に繰り広げるコーナー「国宝だって人間だ!」では、人形浄瑠璃 文楽で人間国宝に認定されることとなった桐竹勘十郎が展示品のように登場。現代の子どもたちにとってはなかなか触れる機会のない人形浄瑠璃 文楽とは何か、というところから説明していく稲垣。さすが人間国宝、という見事な技法にも触れる一方で、子どもたちが素朴な質問をしていく距離感が斬新だ。
勘十郎の「子どものころの夢は漫画家です。漫画が大好きで勉強はあんまりしてなかったです」という親近感のわく答えを聞いて、子どもたちが“人間国宝も自分たちと同じ人間なのだ”と実感していく様子が微笑ましい。「携帯電話はスマートフォン。しかしあまり使いこなせていません」「目玉焼きには本当は醤油をかけたいけれど、パンと食べることが多いから塩かソース。朝はパンが多いです」「ショートケーキのいちごを食べるのは、最初に半分、最後にも半分」……など、和服姿で伝統芸能を継承する姿からは意外にも感じられるエピソードが出てくるたびに人間味を感じ、“立派な人間国宝”として見ていたとき以上に、桐竹勘十郎のことをずっと好きになっている自分に気づく。
そして進化の著しいロボットについては「負けたくないです」と答えた桐竹勘十郎。そして今も日々修行を続けていると話す姿で締めくくられる。ぐっと距離を近づけながらも、その人の持つ強さにも触れるところが、このコーナーにおける絶妙なバランス感覚だ。だが、そんなリスペクトと親しみやすさを両立させたら、彼ら=新しい地図の3人の右に出る者はいない。振り返ってみれば、国民的スターでありながら、いつだって「ゴローちゃん」「つよぽん」「慎吾ちゃん」と呼ばれてきた彼らだからこそできるお家芸なのではないだろうか。
遠くに感じられる人こそ、近くに感じられるように。人間離れして見える人こそ、人間味あふれる面を引き出していく。勉強といえば効率や合理性ばかりがもてはやされてきたが、データや情報を覚えるだけでなく、感情的に相手を理解していく大切さもあるということ。距離を取らなければならない今だからこそ、3人が提案してくれる新しい「学び方」に注目していきたい。