遊助、ライブを通じて伝えた人を想う気持ち 新曲「こむぎ」も初披露したツアー最終日レポ

 9月4日、『遊助「音(ON)パレード」LIVE TOUR 2021』の最終公演が中野サンプラザホールにて開催された。会場に集まったオーディエンスと配信で参加した多くのファンがツアー最終日を見守った。

 会場がペンライトの光に染まり期待が高まる中、幕越しにスポットライトで遊助のシルエットが映り、「ありがと。」でライブは開幕する。明るい声色で歌う遊助の姿が現れると、オーディエンスを目にした遊助は笑みを見せた。

 胸に手を当て丁寧にお辞儀をすると、「何やってんだか分かんない人へ」と続ける。ダンサーを従えてパフォーマンスをする遊助にオーディエンスは手拍子やこぶしを振り上げて応える。〈戦わなくてもいいかと 楽な方を見ては胸叩いて叫び合う〉と弱さと強さの葛藤で寂しさをにじませる声にピアノの粒のような音が寄り添い、孤独と静かな強さを彷彿とさせた。

 ドラムの紡ぐビートに身を委ねた「世の中に2文字しか無くなってもいいや」ではダンサーと横並びで身体を動かし、後ろではバックバンドの楽器たちがボルテージを上げる。感謝の気持ちを込めて、と歌ったのは代表曲「ひまわり」。〈君がいるから〉と力強くのばされる手には説得力を感じる。しっとりと、しかし明るい声で歌われる「ひまわり」は夏の終わりにふさわしい。秋らしい「いちょう」に繋がると、季節の変化が音楽によって鮮明に表される。

 季節の情景と共に身近な人間を想う楽曲が多い遊助。人との距離感を保ちがちな今だからこそ染みわたる歌詞が、まっすぐに遊助の声や手振りで伝えられる。1年を通して2人の思い出を振り返るような「いちょう」の歌詞には、日常の身近な幸せを思い出させてくれる温かさと一抹の切なさが含まれる。

 続く「全部好き。」でも身近な人を想うという特徴は当てはまる。様々な「好き」の形を描く遊助の楽曲の中でも特にストレートな楽曲は、時折目を閉じながら心を込めるようにして紡がれる。サビでは手話のような手振りとともに、歌詞の意味を視覚的にも伝え、印象付けた。

 ピアノが切なさを誘う「ライオン」で季節を巡り、「砂時計」では一変してクールに歌う。アコギが牽引するイントロでは弾けるように遊助が動き、ステージから落ちないか心配になるほど前に出てオーディエンスに手を伸ばした。歌詞で描かれる感情が遊助の身体全体で表現される。

 それぞれが1フレーズずつ演奏し、音でオーディエンスとのコミュニケーションをとったバンドメンバー紹介ののち、夏らしい衣装にチェンジした遊助が登場すると、レゲエアレンジのメドレーへ。「VIVA!Nossa Nossa」「Baby Baby」「ひと」とゆったりしたノリを作り楽曲を聴かせていく。思わず身体が揺れるようなテンポで続けて4つの楽曲の物語を紡ぐことで、歌詞をより際立たせるようにも感じる。裏のリズムで鳴らされるギターがノリ感をつくった「たんぽぽ」でたんぽぽ色の照明を背に手を伸ばし、身近な大切な人への思いがあふれるレゲエメドレーを締めくくった。

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