Aimer、松尾太陽、Chilli Beans. ……Vaundy、他アーティスト提供曲で発揮される作家としての手腕

 2019年に「東京フラッシュ」がSNS上を中心に大注目を浴びたことで一躍新世代アーティストの急先鋒に躍り出たVaundy。2020年5月にリリースした1stアルバム『strobo』以降も、配信シングル「花占い」がドラマ『ボクの殺意が恋をした』(日本テレビ系)の主題歌に起用されるなど、その人気はますます高まっている。

 Vaundyというアーティストの魅力はいろいろある。YUIや絢香、家入レオを輩出した「音楽塾ヴォイス」仕込みの音域も広く表現力も豊かなボーカル、サウンドのみならずビジュアルまで含めてクリエーションを行うマルチなセンス、いちからすべての音を自分ひとりで作り上げてしまうプロデュース力、そしてさまざまな音楽を取り込み、時流を捉え、それをものにしてしまう批評眼と感度の高さ。世代的なところもあるのだろう、音楽に対する視野の広さと視点の高さが図抜けていると感じる。

 しかしその根幹にあるのは、ソングライターとしての根本でもある、メロディに対する感性の鋭さだろう。セオリーを熟知しながら、ときにあえてそのセオリーからはみ出していくことによってオリジナルで新鮮なメロディを編み出していくその才能は、たとえば「僕は今日も」や「しわあわせ」のような情感豊かなミドルチューンやバラードでじっくり味わうことができる。

僕は今日も / Vaundy :MUSIC VIDEO
しわあわせ / Vaundy : MUSIC VIDEO

 そんなクリエイターとしてのVaundyの実力をさらにはっきりと感じられるのが、他のアーティストとコラボレーションした作品たちだ。『strobo』以降のVaundyは、オリジナル曲の発表のペースを落とす一方、リミックスや楽曲提供、他アーティストの作品への参加などを次々と行なっていった。それらの楽曲を聴くと、Vaundyというアーティストの特徴やストロングポイントが、ときに彼自身のオリジナル曲以上に伝わってくるような気がする。

 皮切りとなったのは、アメリカ・ロサンゼルスをベースにするプロデューサー/シンガーソングライターのLauvへのリミックス提供だ。Lauvからのオファーで実現したという「Modern Loneliness」(Vaundy Remix)は、原曲のムードを大事にしながら、繊細なタッチでVaundyらしい色を付け足していくような奥ゆかしいリミックスになっている。

松尾太陽 「Sorrow」 Music Video

 その後、Vaundy初の楽曲提供として話題となったのが、超特急・タカシこと松尾太陽のソロデビューミニアルバム『うたうたい』のリード曲「Sorrow」。松尾の声を活かしたハイトーンのメロディが印象的な1曲だ。オリジナルとは一味違った突き抜けるような爽快感は、もちろんアレンジによる部分も大きいだろうが、Vaundyのなかに、松尾が歌うなら……というはっきりとしたイメージがあったからではないだろうか。歌録りにあたってはVaundyから松尾に向けてかなり細かい歌い方についてのアドバイスがあったらしく、この曲は『うたうたい』のなかでも松尾の歌の魅力、爽やかさと力強さが同居する声のチャームポイントをきっちり伝えている。

Nulbarich - ASH feat. Vaundy (Official Music Video)

 形としてはフィーチャリングだが、実際には共作といっていい濃密なコミュニケーションの末に生まれたのが、Nulbarichの「ASH feat. Vaundy」。もともとはボーカリストとしての参加だったが、最終的にメロディの一部はVaundyのアイデアから生み出されていったという。さすがというべきか、Vaundyの歌うパートはそのメロディも含めて、楽曲の世界観を踏襲しながら彼ならではの歌の魅力とエモーショナルさを発揮するものになっている。そのコラボレーションをきっかけにJQ(Nulbarich)とは深い親交が生まれているようで、それだけ濃いコミュニケーションが制作過程で生まれていたということだろう。

関連記事