『BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage』特集インタビュー

劇場版『BanG Dream! FILM LIVE 2nd Stage』前代未聞の5.1chサウンド実現に至る道 都田和志×飯田里樹、音響スタッフ対談

各バンドの特色を職人技で再現したリアルな音像

ーー僕も先行上映会でひと足先に拝見しましたが、アニメ作品を観ているんだけど、感覚的にはリアルバンドのライブを観ているようで、僕が『バンドリ!』プロジェクトを通じて観たかった、感じたかったものってこれだったのかなと、今までにない感覚に陥りました。

飯田:そういう感想が欲しかったので、すごくうれしいです。もちろんリアルバンドのライブも面白いんですけど、せっかくこういうコンテンツですし、アニメキャラがライブをするという行為に、リアルのライブ音源を使うことで臨場感が増して、かつアニメでしかできないような演出だとか、それを全部詰め込んでいる。これは『バンドリ!』にしかできない作品に仕上がったかなと思います。

ーーライブ音源を映画館で、5.1chで鳴らすという点において、苦労した点やこだわった点はどういったところでしょう?

都田:『バンドリ!』プロジェクトでは、バンドによって楽器も違えば、アンプも全部違う。もちろんドラムのキックも違ってくるし、すべての楽器にそれ用のマイクが用意されているんです。だから、RASはちょっと硬くてハードになるとか、Roseliaは鍵盤のタッチがちょっとエッジが効いているとか、その一つひとつの特徴をどうやって再現するかは、かなりこだわりましたし苦労しました。

 さきほどの話に戻りますが、音を分解して濁っている部分を全部削ると、音そのものが細くなってしまうので、空気感やホール感を再現してファットにしていく。だから、削っては付け足し、削っては付け足しという職人さんの彫刻みたいな音の作り方でした。ボーカルもライブ会場ごとにちょっとした歌い方や掛け声が少しずつ違うんですけど、自分はすべてのライブに立ち会っているので「これは日本武道館の音」「これは幕張メッセの音」と思い起こして、「あのときはどんな感じだったかな?」とそこに近づけていく作業をしていくわけです。フィルムライブの中ではすべて同じ環境で演奏されているんですけどね。

飯田:実際はすべてライブ会場が異なりますからね。

都田:ただ、それぞれに違いも出さなきゃいけないですし、そのへんの音の細かなニュアンスを表現することにすごく時間がかかりました。

ーーこれは都田さんじゃないとできなかった作業ですね。

飯田:本当にそう思います。

都田:たまたま僕はエンジニアもやっていて、出音に対していろんな意見も言わせてもらいつつ、それを全会場で行ってきた。かつ、何の機材を使ってどういうふうに再現しているかもだいたい覚えている。『バンドリ!』のライブは、リアルバンドごとにミキサーさんが全部違うんですよ。その人の特徴を横で見ていると面白くて、プラグインの掛け方も、リバーブやディレイにしても使っているものが全然違うので、僕はその特徴も覚えている。だから、現場に行っていないと作れていなかったというのはあると思います。

ーーこの曲はどの会場の音なのかを当てるのも、面白そうですよね。

飯田:熱心なバンドリーマー(『バンドリ!』ファン)さんだったら、「これはあのときの音だ」ってわかると思いますし。

都田:下手したら、ライブで演奏していない曲も「これは幕張の音ですか?」とか言われそうだよね(笑)。そこに合わせて作っているから。そういうところも、聴きどころかもしれませんね。

ーーそれ以外に今回こだわったこと、新たに挑戦したことはありますか?

飯田:あまり言うとネタバレになりますけど、ライブ音源のあるリアルバンドとそうじゃないバンドが続けて演奏するとき、そこでの音質の差をどう馴染ませるかは意識しました。また、前作は設定が野外ステージだったので、音の反響も抜けていく感じで作ったんですが、今回はドーム型の会場、しかもステージが3つという設定なので、反響の付け方の変化もやや気にしましたね。前回はステージが1つで、カメラは観客席の中にいることが多かったので、5.1chといいながらも一方向みたいな感じだったのですが、今回はMCパートでも反響に関しては注意しています。

ーーそこも演奏するステージによって変わってくると。

飯田:そうですね。あと、MCパートの歓声が、前作はわりと声優っぽいものだったのを、今回は都田さんが生っぽくしたいということで、広い場所を借りて大人数で録りました。でも、リアルを追求すると本当は歓声ってあまり粒立たないんですよ。あんまり立てすぎると漫画っぽくなっちゃうし、リアルに寄せすぎると今度はコール&レスポンスなどが聞こえにくくなってしまうので、そのバランスは考えましたね。リアルというよりはリアリティという感じで、説得力があるけどよく聞こえるみたいな感じには作っています。

都田:そこもすごく大変だったんですよ。コール&レスポンスや笑うリアクションを大所帯で録ったんですが、それがまさにドリフのコントに被る笑い声みたいで。僕は以前、『IMAGICA(イマジカ)』という会社にいたんですけど、入社したての頃はドリフの笑い声を録っていたんですよ。その感覚を活かせるかなということでやってみたんですけど、実は大問題があって。実際のライブのお客さんって男性が多いじゃないですか。でも、アニメの設定ではお客さんはみんな女性になっているので、大所帯の収録で録った女性声優さんの声に、ライブの現場での声援をピッチシフターで音程を上げたものを足しているんですが、ピッチシフターを下手に使うと不自然な声になってしまう。作った声にならないように、ナチュラルに聞かせるところもかなり頑張ったので、わりとうまくいったんじゃないかな。本当に女性がワーと騒いでいる声になっていると思いますよ。

ーーアンコールのコラボ曲は新録ですので、実際のライブでは披露されていません。こちらはどう馴染ませましたか?

都田:どうやって臨場感を出すか、頑張りましたね。実は作り込んだり馴染ませるというよりも、意識を違うところに行かせるよう音を逃しているんですよ。まずセリフを聞かせることによって、耳がそっちに行くじゃないですか。あのアンコールが一番良かったのは、みんなが勢揃いしたところでいろいろお話したり掛け合いがあって、耳がそっちに慣れていくこと。音楽を直結させて聴かせようとするとどうしてもアラが見えてしまうので、その環境音に変えているんですよ。

飯田:エンディングまででお客さんもだいぶアドレナリンが出ていて、どっぷりハマった心情だと思うので、あそこはボーナストラックというかお祭りみたいな感覚で作っています。絵作りに関してもいろんなキャラが入れ替わり立ち替わり並んでいるし、サービス精神旺盛に監督が作ってくださったので、ちょっと意識を変えて楽しんでもらえたらと思います。

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