乃木坂46 大園桃子は“正真正銘のアイドル”になった 5年間の感謝を込めた晴れやかなラストステージ

 8月21日に結成10周年を迎えた乃木坂46にとって、翌22日の『乃木坂46 真夏の全国ツアー2021』マリンメッセ福岡DAY2公演は、単なる“結成11年目最初のライブ”というだけではなく、開催延期が決まった9月予定の東京ドーム公演前の見納めライブ、そして3期生の中でもいち早く第一線で活躍してきた大園桃子の卒業公演という、さまざまな意味を持つものとなった。開演前の影アナで生田絵梨花も「今日は一旦このツアの締め括りとして臨みたいと思いますので、皆さんも一旦ここで燃え尽きちゃいましょう!」と言っていたが、ほかのメンバーもすべてを出し切ろうという姿勢でこの日のライブに臨んだのではないだろうか。その結果、「大園桃子卒業セレモニー」とサブタイトルが付けられた『乃木坂46 真夏の全国ツアー2021』地方最終公演は3時間以上におよぶ、笑顔と涙でいっぱいの忘れられない一夜となった。

 前日の公演(参照:乃木坂46はこれからも坂道を登り続ける 想いを受け継ぎ、新たな一歩を踏み出した「結成10周年記念セレモニー」)から引き続き、ライブ開始前には本ツアー恒例となったご当地クイズコーナーに伊藤理々杏、大園、与田祐希、吉田綾乃クリスティーの九州・沖縄出身メンバーが参加。この日は大園の出身地・鹿児島にちなんだクイズが2問出題され、緩やかなトークとともに柔らかい空気を作り上げていく。

 そして、オープニングSE「OVERTURE」に続いて、この日の1曲目に選ばれたのが「太陽ノック」。センターの遠藤さくらはステージに登場するやいなや、「ライブ2日目、たくさんたくさん思い出作って、最高の1日にしましょう!」と叫び会場の熱気をヒートアップさせる。白地に紫をあしらったワンピース風衣装を着用したメンバーは、アッパーな夏曲に合わせて元気いっぱいの歌とダンスを客席に届け、場内に幸福感を充満させた。以降も「ロマンティックいか焼き」「あらかじめ語られるロマンス」「13日の金曜日」とライブに欠かせない人気曲を連発。「裸足でSummer」では観客が両手に持った推しメンタオルを高く掲げてさらなる一体感を高め、前日に初披露された乃木坂46結成10周年を祝福する新曲「他人のそら似」も続けてパフォーマンスされた。

 MCでは卒業を控えた大園が、「(ライブが)始まる前はすごく緊張していて、『ああ、どうなるんだろう』と思っていたんですけど、頭の曲から皆さんの熱気が感じられて、このまま楽しめそうです!」と挨拶。これを受け、キャプテンの秋元真夏は「今日は桃子の集大成を観ていってください」と続ける。その後は、和田まあやがセンターに立つ「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」で発光するキューブを使った演出/パフォーマンスで観客を魅了。「~Do my best~じゃ意味はない」では合唱できない代わりに、会場中にハンドクラップの音が響き渡る。一方、「ファンタスティック3色パン」では齋藤飛鳥、梅澤美波、山下美月が曲中、くじ引きで「ぶりっ子萌えセリフ」を言わせるムチャ振りも用意。この日は齋藤がくじを引き当て、萌えセリフのあとに膝から崩れ落ると、その姿に梅澤と山下が爆笑する一幕も。そんなわちゃわちゃした空気から、続く「制服を脱いでサヨナラを…」ではしっとりとした曲調に合わせ、星野みなみと齋藤が10年間活動をともにしてきた2人ならではの安定感を見せる。

 VTRを挟んで、期別楽曲を中心としたパートへと移行すると、「空扉」では2期生と3期生、「ひと夏の長さより・・・」では1期生と4期生がそれぞれ共演。先輩・後輩の壁を越えた、ひとつのグループとしての一体感を強くアピールする。そのほかにも、各期別楽曲が次々に披露され、期ごとのカラーの違いを感じつつも、その根底にある一貫した「乃木坂らしさ」も届けてくれた。

 ライブ後半戦では、すでにオリジナルメンバーは全員卒業している「他の星から」を3&4期生でパフォーマンスしたほか、大園と遠藤が「友情ピアス」をギター弾き語りで披露。ギターは決して上手とはいえないものの、一生懸命奏でようとする姿と、2人の優しい声から生まれるハーモニーを通じてお互いの信頼関係が強く伝わる。阪口珠美を中心にポジティブな空気を発していく「生まれたままで」、樋口日奈の憂いある表情が印象的な「My rule」を経て、選抜メンバーによる「世界で一番 孤独なLover」でライブはついに終盤に突入。「何度目の青空か?」では生田が伸びやかな歌声を響かせ、「ガールズルール」では山下が力強いパフォーマンスで会場全体を熱狂の渦に巻き込んでいく。そんな中、大園と与田が初めてダブルセンターを務めた「逃げ水」では、いつも以上に歌とダンスを丁寧に届けようとする大園の姿を目にすることができた。

 本編ラスト前のMCでは、不安をそのまま口にした前日とは異なる姿の遠藤が「できないからもういいやじゃなくて、できなくて悔しい、もっと頑張りたいって、自分をそういう気持ちに変えてくれたのは、確実にこの27枚目の期間があったからだし、こんな私を支えてくれた先輩方や同期のみんな、ファンの皆さんのおかげだと思っています。本当に貴重で素敵な経験をありがとうございました。そして、今日は大好きな先輩と一緒に披露する最後の日でもあります。感謝の気持ちを込めて披露させてください」と頼もしい言葉を発してから、「ごめんねFingers crossed」へと突入。前日よりも肩の力が良い具合に抜けつつ、だけどセンターという大役を真正面から受け止めようとする姿は、「乃木坂46のセンター」という座に相応しいものだった。パフォーマンス後には笑顔を浮かべるなど、そういったところからも彼女が日々成長を続けていることが伝わった。

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