5thアルバム『御ノ字』インタビュー
島爺×堀江晶太 対談 “職人気質”な両者が共鳴した、作品主義を貫く活動10年の研鑽
「不可避」は島爺の歌声に圧倒される楽曲
ーー『御ノ字』というアルバム全体についても聞きたいのですが、この「御の字」の本来の意味は、「最上のもの」だそうで。
島爺：そうなんですよ。（アルバム名は）カタカナの「ノ」縛りを続けていて、常に考えていたんですが、なかなかしっくりくるものがなくて。そのなかでたまたま会話のなかで出てきたのが「御の字」で、これも使えるかな、と思ったものの、最初のイメージは、たぶん一般にもそう思われている「及第点」のようなニュアンスで。それが、辞書を引いて調べてみたら、「最上のもの」だと。みんながそこまでいい意味やと思っていないなかで、これはフックに使えると思ったんです（笑）。これだけのクリエイターの皆さんに楽曲を提供していただいた「最上のアルバム」であると同時に、自分の活動を振り返ると、ここまでようやってこれたね、と「及第点」な感覚もあって、全部含めていいタイトルだなと。
ーー誤用で広まったとされるややマイナスな意味も含めて、ダブルミーニングのタイトルになっていると。なおさら、大団円感もあり、かつ侘しさもある「花咲か」が締めの一曲としてバッチリ効いてきますね。
島爺：そうですね、シンボリックな楽曲になったと思います。そうそう、歌詞をお渡しした後、堀江さんがアレンジをしなおしてくださって、これがすごかったんですよ。本当に花が咲いているというか、イメージ通りの音を鳴らしてくださって、「これはほんまにヤバい」と思いました。
堀江：やっぱり、歌詞を読んで、実際に花が咲いて散っているイメージがもっと伝わればいいなと思って、調整しましたね。一番変わったのはイントロで、スピード感を増して、景気のいい感じにしました。和のテイストも強めたんですが、和楽器を使うのではなく、バンド楽器で三味線風のフレーズを再現したりしています。島爺さんはアコギで弾き語っているイメージも強いですし、やっぱりバンドで表現できるものがいいだろうと。
島爺：和楽器を足してきらびやかにすることもできてしまうと思うんですけど、あえて無骨にしていただいたというか。
ーーちなみに、堀江さんは「花咲か」以外で、このアルバムのどの曲が気になりましたか？
堀江：正直に言って全曲すごかったですし、島爺さんが目の前にいるから言うわけではなく、一聴して「おっ！」と思ったのは、「不可避」（作詞・作曲：島爺、編曲：ナナホシ管弦楽団）ですね。島爺さんが作曲したものだと後で知って納得したのですが、島爺さんというシンガーの歌声を120％引き出して、これでもかと使っているというか。Aメロの繊細な歌唱から、サビのズドンと太い歌唱まで、表現のレンジを使い切っている曲だという印象で、聴いていて「島爺さんはここまでのことをやるんだ」と圧倒されるような楽曲ですね。実は、シンガーさんが自分のために曲を作ったとして、必ずしも実力を出し切ることができるものになるわけではないんですよ。自分の歌声がどういうものか、何ができて何ができないのか、ということを見つめ続けてきた島爺さんならではの楽曲だと思います。
島爺：どんどん裸にされていく（笑）。
堀江：本当に挑戦を重ねてきて、「これはどうやってもできない」という絶望も味わっていないと、ここまでの精度で自分の歌声を活かすことはできないと思うので、あらためてすごいなと思います。
島爺：確かに、最初に「ブリキノダンス」（日向電工）という難しい曲で多くの人に知ってもらえて、こういう曲をもっと聴きたい、という声もたくさんいただいたんですが、そこは反骨精神というか、「こういうものも歌える」という新しいところを開拓したくて、それを表現できる歌を探したりもして。言ってしまうと“ウケる”ところだけを研いでいたら、「不可避」のような曲は作れていなかったと思いますね。
堀江：ちょうど次に見ようと思っていたアニメが（「不可避」がエンディングテーマ曲に起用されている）『終末のワルキューレ』（Netflix）で、絶対に好きなタイプの作品だと思っていたので、その偶然の一致もうれしかったですね（笑）。
ライブハウスのような雰囲気は残って欲しい
ーーさて、お二人ともボーカロイドシーンに携わって10年という節目を迎えていますが、近年でボカロという文脈から生まれた作品が音楽シーンを席巻していることについて、思うことはありますか。
堀江：僕は自分でボーカロイドを触る前から、ボカロ曲が好きでしたし、昔からいいものがずっと生まれていた場所だったので、「いまになって熱が高まっている」という理由は置いておいて、ただただいまの状況には納得しています。「ネットの音楽なんて」というムードがあった頃から、僕は胸を張れる場所だと思っていましたし、それはそうなるでしょう、という気持ちですね。
島爺：個人的な感覚としては、堀江さんもおっしゃったように「そうやろ？」という感覚です。これまでもいい作品は山のようにありましたし、色眼鏡で見られて正当に評価されていなかった部分もあると思います。僕が歌い手として活動を始めた当時、メインストリームで流れている音楽と比較すれば、それはきれいに整ったものばかりではなかったけれど、驚くほど高い熱量で、突き刺さるような素晴らしい楽曲は多かったですから。いまの状況は素晴らしい、と思う反面、変に大人が介在せず、インディペンデントなライブハウスのように自由な部分は残っていってほしいな、という思いもありますね。
ーー確かに、UGC（ユーザー生成コンテンツ）の強さ、面白さは残っていってほしいですね。共感するお話が多かったと思うのですが、今回、初対面でお話ししてみて、感想はいかがでしょう？
堀江：島爺さんはこれまで、“みんながいいという音楽”ではなく、ご自身の心の琴線に触れたものに忠実にやってきた人だと思っていましたし、今日お話しして、その通りだったと確認できて。そういう人にオファーをいただいて、こういう楽曲を作れたことはなによりで、心から光栄に思います。
島爺：見ている世界の解像度があまりに高い方で、もしかしたら些細なことで逆鱗に触れてしまうのでは……という怖さも実はあったのですが（笑）、まったくそんなことはなく、気さくに話していただけてうれしかったです。
ーーお互いに10周年、島爺さんはこのアルバムを提げてのライブも控えていますが、今年後半に向けてどんな気持ちで活動していくか、最後に聞かせてください。
島爺：ライブについては意気込みというより、「久しぶり！」「やっと会えるなあ」という、同窓会のような感覚ですね。また中止になったり、延期になったりすることもあるかもしれませんが、定期的に集まれる場を作ることで、それを目標に日々を頑張れる、という方もいたりするので、本当に、正月や盆休みに孫が爺ちゃんの家に遊びにいくような感覚で楽しめればいいなと（笑）。
堀江：いついかなる時代でも、自分に音を作る腕があるなら、変わりなくいいものを作ることにひたすら打ち込もうと考えていて。僕も10周年だということは自覚していて、まだ具体的には何も決めていないのですが、「意識はしている」ということだけはお伝えしてこうかなと（笑）。
島爺：おお！ 淡く新曲の投稿に期待しておきます（笑）。
■リリース情報
島爺 5th Album『御ノ字』
2021年7月28日（水）リリース
『御ノ字』（初回限定10周年記念盤）※数量限定生産
CD+DVD+10周年記念グッズ付き
品番：WPZL-31879/80
価格：￥11,000（税込）
『御ノ字』（通常盤）
CD
品番：WPCL-13301
価格：￥3,300（税込）
購入はこちら
【CD】（全9曲収録）※初回限定10周年記念盤/通常盤共通
1.逆光（作詞、作曲：島爺、編曲：ナナホシ管弦楽団）
2.ベンジェンス（作詞、作曲：柊キライ）
3.しゅらんぼん（作詞、作曲：煮ル果実）
4.めちゃくちゃにしちゃおうぜ（作詞、作曲：薄塩指数）
5.極楽人鳥（作詞、作曲：ピノキオピー）
6.オートマトン（作詞、作曲：ジミーサムP）
7.不可避（作詞、作曲：島爺、編曲：ナナホシ管弦楽団）
8.カラクリズム（作詞：ナナホシ管弦楽団、作曲：岩見陸）
9.花咲か（作詞：島爺、作曲：堀江晶太（kemu））
【DVD】※初回限定10周年記念盤のみ
・2020年8月2日（日）開催「島爺爆誕祭 挙句ノ生配信」より
はじめに（作詞、作曲：島爺）
ブリキノダンス（作詞、作曲：日向電工）
箱庭の理（作詞、作曲：島爺）
もいちど（作詞、作曲：島爺）
よだか（作詞：ナナホシ管弦楽団、作曲：岩見陸）
アヴァターラ（作詞：ナナホシ管弦楽団、作曲：岩見陸）
明日へ（作詞、作曲：島爺）
・「不可避」MV
・「不可避」MVメイキング
※収録内容は変更になる場合がございます。
■ライブ情報
SymaG 10th Anniversary
爆誕前夜祭『挙句ノ宴 -リベン爺-』
Special guest : ナナホシ管弦楽団
＜公演日＞
2021年 8月1日 （日）
＜会場＞
Zepp Tokyo
＜公演時間＞
開場 : 17:00 開演 : 18:00
＜チケット＞
指定5,000円（税込 ドリンク代別）
購入枚数制限：2枚
※整理番号順の入場になります。
※撮影機器、録音・録画機器のお持込みは御遠慮下さい。
※4歳以上チケット必要
一般発売はこちら
8月1日（日）＜挙句ノ宴 -リベン爺-＞＠Zepp Tokyoにて特典付きCDの販売が決定。
対象商品を当日CD販売ブースにてお買い上げいただいたお客様には会場限定特典をプレゼントいたします。
【即売開始時間】
13:00～
【特典対象商品】
2021年7月28日リリース
5th ALBUM『御ノ字』
初回限定10周年記念盤及び通常盤
①極楽人鳥アクリルストラップ（イラスト：宇野ハジメ） ②島爺直筆サイン入り販促B2ポスター
※お一人様1枚お買い上げで①と②どちらか1つお選びいただけます。
2枚お買い上げの場合は①と②をお渡しします。
【その他注意事項】
・特典の数には限りがございます。予定数終了次第特典付き商品の販売は終了いたします。
・複数特典をお求めのお客様は、購入列最後尾にお並びなおしをお願いいたします。
■関連リンク
「島爺」オフィシャルサイト
http://sp.wmg.jp/symag/
「島爺」オフィシャルツイッター
https://twitter.com/SymaG2525
・ニコニコ動画
http://www.nicovideo.jp/mylist/27662648
・YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCocO6v9snQqVYzGTuTLoK6g
・Blog
http://lineblog.me/symag2525/