歌声分析 Vol.26:King & Prince 永瀬廉×髙橋海人、異なる声質が生む“調和” ユニゾンと個性に宿る強み
歌声分析
アーティストの魅力を語るうえで、楽曲だけでなく“歌声”そのものに宿る個性にフォーカスする連載「歌声分析」。声をひとつの“楽器”として捉え、音楽表現にどのような輪郭を与えているのかを掘り下げていく本連載では、技術的な視点からさまざまなアーティストの歌声を紐解いていく。
今回は、King & Princeを取り上げたい。
異なる声質が溶け合う永瀬廉と髙橋海人のユニゾン
2018年5月、シングル『シンデレラガール』でCDデビューを飾ったKing & Prince。その後、メンバーそれぞれの多方面での大活躍は、誰もが知るところだろう。2023年5月23日からは永瀬廉と髙橋海人による新体制となり、同年6月にシングル『なにもの』をリリース。ハイペースでリリースを重ね、2025年には新体制となって初となる3大ドームツアー『King & Prince LIVE TOUR 24-25 ~Re:ERA~ in DOME』を開催。2026年には4大ドームツアー『King & Prince DOME TOUR 2026 STARRING』を成功させるなど、2人で新たな景色を切り拓いている。
King & Princeの“歌”には、一貫した特徴がある。声質の異なる永瀬と髙橋が、楽曲によって歌唱のアプローチを柔軟に変えていることだ。相手の声に寄せて一体感を生み出したり、滑らかなマイクリレーを聴かせたりすることもあれば、個性を際立たせ、歌声のコントラストを活かすこともある。
今回は、King & Princeの楽曲を通して、永瀬と髙橋という2人のボーカリストの魅力を考察していきたい。
まずは、King & Princeの原点となる「シンデレラガール」から振り返ってみよう。華やかなサウンドとロマンティックな歌詞が印象的なこの曲で、注目したいのは中盤。〈もしもそんな日が来たって〉から〈ボクはまたキミに恋するんだろう〉までのパートだ。髙橋パートの〈来たって〉の〈て〉、永瀬パートの〈かざして〉の〈て〉は、音程もアプローチも似ているが、そのぶん、2人の声質の違いがこの一音ではっきりとわかるだろう。
髙橋は声をストレートにぶつけることで張りの良さを、永瀬は最後に母音を丸めるようにして語尾を繊細にコントロールしている。続く髙橋の〈それを 耳元に飾るだろう〉では、後半に滑らかに中低音へ下りてくるスキル、永瀬の〈ボクはまたキミに恋するんだろう〉では、詰め込まれた音符の一つひとつに言葉を的確に乗せる技術が窺える。また〈恋するんだろう〉において鼻音である〈ん〉まではっきり聴きとれるところに、永瀬の発音の上手さも感じられる。
次にピックアップするのは、新体制となって最初のシングル『なにもの』の表題曲「なにもの」(2023年)だ。ホーンや鐘の音が鳴り響くゴージャスなアレンジが特徴のミディアムチューンである。驚かされるのは冒頭の〈何者でもなくたって〉から始まるブロックのユニゾン。先述したとおり、異なる声質を持つ2人の声が、まるでひとりの声になったかのように聴こえる。単に音程やリズムが揃っているだけではなく、フレーズの最後に残る母音の伸ばし方や、声を収めるタイミングまで一致しているのだ。
語尾には歌い手の癖が表れやすいが、そうした細部まで揃えることで、2人の声の境界線を感じさせなくなる。相手の歌唱に合わせて自身の声をコントロールする能力の高さが、非常に精度の高いユニゾンを生み出しているのである。ユニゾンは、スケール感や勢いを出すために使われることも多い手法だが、永瀬と髙橋のユニゾンは、この曲ではメロディそのものを美しく聴かせるために機能している。
「Theater」(2025年)では、2人のソロボーカリストとしてのスキルが多く見られる。Ayumu Imazuが作詞作曲を手掛けたこの曲は、ファンクをベースにしたダンスナンバー。テンポは速くないが、歌唱のリズムの取り方で曲の輝きが大きく変わる1曲だ。ここで2人は、言葉の抑揚やリズムを重視した、スポークンワードに近い歌唱を聴かせている。1番Aメロの歌い出しは髙橋のブロック。ここで髙橋は声質の湿度をコントロールし、少し乾いたような声を出す。フレーズ終わりの母音も、切り上げるように処理している。引き継ぐ永瀬は、湿度を含んだ甘めの歌声を聴かせる。語尾の母音を曖昧に処理している部分があるのも面白い。比較的淡々とした平メロでグルーヴを保ちながら、これほど多彩な歌唱表現を繰り出せるところに、2人の実力が表れている。
〈Welcome to our/シアター ほら踊れば〉から始まるサビはユニゾンだが、〈Welcome to our〉までは声をひとつに重ね、一拍置いた〈シアター〉からは、それぞれの歌声の特徴を活かし、あえて声の違いを明確に鳴らすことで、ユニゾンの力強さを際立たせている。さらに特筆したいのは、ピッチとリズムの正確さだ。髙橋と永瀬は、これまで多彩な楽曲を通して、さまざまなリズムを完全に自分の中に取り込んできた。だからこそ、メロディにもグルーヴを生み出し、たとえ言葉が詰め込まれたメロディでも余裕を持って歌うことができるのだろう。リズムを自分のものにしているからこそ生まれるこの“余裕”もまた、永瀬と髙橋というボーカリストの大きな魅力なのである。






















