May J. 音楽を通してさらけ出したダークな感情 連続配信プロジェクトで発信する誹謗中傷・父親・SNSへの本音
May J.が、デビュー15周年を迎える2021年に新プロジェクト「DarkPop」を始動。4カ月連続リリースと銘打たれ、共同制作者にyahyel 篠田ミルを迎えて「Rebellious」「Can’t Breathe」「DRAMA QUEEN」の3曲をすでに配信している。
「DarkPop」という名の通り、本シリーズの楽曲にはMay J.の胸の内にある影の部分が反映されており、篠田ミルによるサウンドアプローチも彼女の原点回帰的なR&B要素もありつつ、既存のイメージを刷新するような意欲的な仕上がりとなっている。
これまで築き上げてきた“May J.像”を打ち砕き、新たな表現を目指す同シリーズに秘められた彼女の本音とは? 「DarkPop」の全貌や音楽的挑戦のエピソードとともに、May J.として活動する中での葛藤について話を聞いた。(編集部)
“歌が上手い” “バラードを歌う” “静かな人”みたいなイメージを変えたくなった
ーー今年でデビュー15周年を迎えるMay J.さんが始動した新プロジェクトが大きな話題を集めています。水面下で計画が動き出したのはいつ頃だったんですか?
May J.:実はもう1年以上経っていて。ずっと準備していたものをやっと今、みなさんにお届けしているので、私としてはもう待ちに待ってたっていう感じなんです(笑)。
ーーそこにはどんなきっかけと意図があったのでしょう?
May J.:きっかけは去年、初めての緊急事態宣言が発出される直前に行ったミーティングでした。私は15周年に向けて、今までにやってこなかったことに挑戦したい気持ちがすごく強かったんですよ。一方、(篠田)ミルくんはミルくんで、ポップスシーンで活動してる人とコラボしておもしろい作品を作ってみたいという考えを持っていたみたいで。その2人の思いが上手くマッチしたところからプロジェクトが始動した感じでしたね。
ーー今、サラッと名前が出ましたけど、今回のプロジェクトにはyahyelの篠田ミルさんがプロデューサーとして参加されています。どんな流れで篠田さんと繋がったんですか?
May J.:ミルくんとはレーベルが繋げてくれたんですよ。実際にお会いしたことはなかったけど、私がMCをやっていた『J-MELO』というNHKの国際放送の音楽番組でyahyelの特集をしたことがあったので、彼の音楽性については以前から知っていて。ミルくんとだったら今までにやったことのない音楽を自由に作れそうだなって思ったので、今回一緒に制作させてもらうことになりました。
ーー15年という節目に、ある種のパブリックイメージを壊したいという気持ちもどこかにあったんでしょうか?
May J.:そうですね。ここ数年、“歌が上手い”“バラードをたくさん歌う”“静かな人”みたいなイメージが固まってきてた実感があるんですよ。もちろんそのイメージは間違ってはいないけど、でもそれだけじゃないのになっていう思いもあって。だから、今のタイミングでその流れを変えたいなって思ったんです。May J.の音楽に対するイメージが固まってしまうと新しい人に興味を持ってもらえなくなってしまう可能性もあるので、こんなこともできるんだよっていうのを証明したかったんですよね。
ーー「今までやってこなかったこと」を踏まえて、挑戦したい楽曲の方向性については明確なイメージがあったんですか?
May J.:ありました。今の洋楽のトレンドを意識した楽曲をやりたいなって思ったんですよ。ビリー・アイリッシュをはじめとする、私が好きで普段聴いているアーティストの曲のようなイメージって言うのかな。そこは最初の段階でミルくんともしっかり共有した上で、制作をスタートさせた感じでしたね。そこにはワクワクした気持ちと同時に、ちょっと怖い部分もあったんですけどね。
ーー怖い部分というと?
May J.:いや、だってね。私にはそういう音楽性が求められてないと思っているから(笑)。今までとは明らかに違う音楽性だから、応援してくれていた人たちもきっとビックリしちゃうだろうし。さらに言えば、今回のプロジェクトは自分主体で進めているので、もし上手く届けることができなかったら全部が自分の責任にもなりますからね。
ーーそれでもなお踏み出せたのはどうしてだったんですか?
May J.:ミルくんに背中を押してもらえたからですね。「ちょっと勇気が出ないんだよね」って私が言ったら、「やりたいことをやったほうがいいですよ。やったもん勝ちですよ!」って言ってくれたんです。そこで気持ちが一気に吹っ切れた感じがありましたね。
ーー楽曲の制作は具体的にどんな流れで行われているんですか?
May J.:当初はステイホーム期間中だったので、まずはSpotifyにプレイリストを作って、やりたい曲のイメージを共有するところから始めて。で、ミルくんがそこから受け取ったものを元にトラックを作ってくれて、そこに私がメロディと歌詞をつけていくっていう。それが基本的な制作の流れではありますね。ミルくんはいろんな音楽を幅広く知っている人だから、私が求めるものを完璧に理解してくれるんですよ。多くを説明しなくても、「こういう要素が好きなんですね」ってロジカルに分析してくれたりもするし。結果、彼が出してくれた曲はすべてが“どタイプ”なものばかりで(笑)。すごく刺激的です。
ーー今回のプロジェクトを進めるにあたって、ご自宅の制作環境を整えたりもされたそうですね。
May J.:そうそう。最初の頃は、届いたトラックに仮歌を入れるにもスマホを使ってお風呂場で録ったりしてたんですけど(笑)、限界があるなと思って。しかもコロナ禍でスタジオにもなかなか入れないから、じゃあ自宅にレコーディングできる環境を作っちゃおうと思ったんです。機材に詳しい方にいろいろ聞いて、ベッドルームの一角にパソコンとキーボード、レコーディング用のマイク、あとはオーディオインターフェイスを置いて作業できるようにしました。さすがに本番はスタジオで歌入れしましたけど、でもやろうと思えばできちゃうくらいな環境にはなってます。ビリー・アイリッシュもそうだけど、今は家で録ったものをそのままリリースしてる人も多いから、今後はそういうことをしてみるのもいいかなとは思ってますけどね。