「DEAD END〜LOVE FLOWERS PROPHECY feat. STUTS & Campanella)」インタビュー

ミッキー吉野×STUTS特別対談 世代を超えたものづくりが投げかける、袋小路な社会へのひとつの提案

STUTSは「人と人をユナイトするパワーとビートの持ち主」

ーーそもそもこの「DEAD END~LOVE FLOWERS PROPHECY」のオリジナルは1977年、ゴダイゴの実質的な1stアルバムだった『DEAD END』に収録されていました。70年代中頃の時事を調べると、高度経済成長、オイルショック、ベトナム戦争とその終結や、赤軍関係の事件など、激動の時代だったように感じられます。あとは今ではあまり考えられませんが、銀行強盗やハイジャックも多発していて。そうした暗い世相を反映させた『DEAD END』はゴダイゴのファンの間では評価の高い一枚ですが。

ミッキー:退廃的なアルバムでした。60年代に盛り上がったものが終わりを迎えていた頃でね。それこそ日本では中学生の自殺が流行って。後追い自殺なんかも多発して、本当に暗いムードだったんです。当時、僕は横浜に住んでいたんだけど、仕事を終えて東京から帰る途中も、飛び込み事故がたくさん起こって、本当に“DEAD END”という感じでした。そこで、その時には、この真っ暗闇の袋小路を音楽で表現したらどうなるのかと考えた。水の中でもがいているいま、真っ暗な道を進むいま、僕らは何を考えて、どう生きたらいいのか。そんなことをゴダイゴのメンバーと話し合って作りました。

STUTS:たしかにオリジナルの方はより袋小路な感じが表現されていますね。

ミッキー:そういう意味で、現在の世の中の状況ともリンクしているので、この「DEAD END~LOVE FLOWERS PROPHECY」から【KoKi】プロジェクトを始めたかったんです。闇の中からの新しいスタート。袋小路からスタートしたら、あとは上に行くしかない。Campanellaさんのラップが突破口となって、天に向かっていくイメージですね。

STUTS:僕も基本的にポジティブに前を向いた音楽を作っていたいので、今回はそうしたニュアンスを自分なりにビートで表現できたらという思いもありました。

ミッキー吉野 [Mickie Yoshino] DEAD END ~ LOVE FLOWERS PROPHECY feat. STUTS, Campanella Official Audio

ーーCampanellaさんという人選は?

STUTS:僕から推薦させてもらいました。この曲にどんなラップしてもらったら最高かなと考えた時、すぐにCampanellaさんが浮かんだので。

ーーSTUTSさんはこれまでご自身の楽曲をはじめ、いろいろな機会にラッパーの方々とセッションしていて、Campanellaさんとは過去にも共演しています。ラッパーの方々へオファーをする際、ご自身の中で人選の基準となるような物差しなどはあるのですか?

STUTS:明確な基準というほどのものはありません。直感というか、とにかく楽曲のテーマをいい感じにラップしてくれそうな人というくらいで。あとはシンプルですが、自分がすごく大好きなラッパーさんにオファーしていますね。

ーーCampanellaさんのラップを聴いて、ミッキーさんのご感想は?

ミッキー:イメージ以上のエネルギーとリアリティでした。実は、最初にやってくれたラップに、僕が「もうひとひねり欲しい」とリクエストを伝えてやり直してもらったんです。

STUTS:がらっと変わったわけではなく、さらにいい感じでテーマに寄り添ったリリックになって。

ミッキー:今の世の中の状況の裏にはたくさんの悲しみが隠れているはずです。今回、その光と影の両方を表現しようとしたら、結果としてラップのパートに重要な負荷を担ってもらうことになった。それもあって、ちょっとこだわらせてもらいました。あと、今回は奇しくも僕が今年70歳の古希で、亀田さんが50代、STUTSくんとCampanellaさんが30代という、言わば「七五三」とも呼べる3世代プロジェクトとなったので、それぞれの世代のパワーによって、この曲独特のエネルギーを構築したいという狙いもありました。Campanellaさんを少し悩ませてしまったかもしれないけど、彼はその悩みをそのままリリックに転化することで、さらにリアリティのある仕上がりに持っていってくれました。とても満足しています。

ーーSTUTSさんのキャリアにおける共演者としては、おそらくミッキーさんって最高齢記録ですよね?

STUTS:多分そうですね。

ミッキー:有り難いことですよ。歳を取ってくると、どうしても若い人との距離って離れていっちゃう。僕は16歳でデビューしたけど、当時と69歳のいまとでは一年という時間を過ごす体感速度が全く異なる。自分のいまのテンポ感が楽しいし、そのテンポ感でSTUTSくんのような若い人のテンポを知ることも楽しくて仕方がない。僕は昔から言葉について考えるのが好きでね。例えばよく話すのは“Standard”という言葉について。“First”は1st、“Second”は2nd、“Third”は3rdって書くじゃない? その間に“st”・“nd”・“rd”、それぞれの間に“A”を入れると“Standard”になるんだよね。

STUTS:あっ、本当だ!

ミッキー:で、STUTSという名前も本当によく出来ているというか、とてもSTUTSくんらしいと思っていて。“ST”はArtistにもFirstにも含まれている。そして“U”と“T”からは自分が真ん中に立ってArtistをUnite(=結び付ける)する役目も感じられる。だから一発でスペルを覚えました。つまりコラボレーションが上手い理由が最初から名前に含まれている。人と人を気持ち良くユナイトするパワーとビートの持ち主なんですよ。

STUTS:全く気付きませんでした。今はその名前を付けた時の思いはあまりなくて。文字面や響きが良かったのでそのまま使い続けてきました。でも今日、自分の名前に違う意味が付加されたような気がしてうれしいです。僕自身、いろいろな方とコミュニケーションを取りながら音楽を作るのが好きなんですが、もしかしたらこの名前が導いてくれたのかもしれませんね。

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