jon-YAKITORY、「シカバネーゼ」などに刻まれた妥協なき活動の記録 ベスト盤で確かめるボカロPとしての向上心

jon-YAKITORY、ボカロPの向上心

ベスト盤の曲順は「野球の打順のイメージに近い」

ーー「イート」「フェイキング・オブ・コメディ」についても聞かせてください。

jon-YAKITORY:「イート」は「シカバネーゼ」をAdoさんに歌ってもらったのがすごく伸びたことで、もう一度Adoさんに歌ってもらいたいと思って作った曲です。「シカバネーゼ」はどちらかと言うとヒップホップっぽいビートのノリだったんですけど、今度はちゃんとロックをやろうと思って。「フェイキング・オブ・コメディ」は『ボカコレ(The VOCALOID Collection)』に参加した曲だったし、せっかくなので速いテンポの、遊び心をいっぱい入れたボカロっぽい曲が作りたいと思ったんですね。「ボカロっぽいものって何だろう」と思ったときによぎったのが米津さんの「LOSER」で、構成がいいなと思って自分でもやってみたんです。音作りも硬くして、高音を出して、ギターも強く鳴らして、ボカロっぽさを意識的に作った曲ですね。

イート / jon-YAKITORY feat.Ado - eat / jon-YAKITORY feat. Ado
フェイキング・オブ・コメディ(feat. Ado) - jon-YAKITORY / Faking of Comedy (feat. Ado) - jon-YAKITORY

ーー新曲の「ONI」についてはいかがでしょうか?

jon-YAKITORY:これはかゆかさんの絵が先にあって、それをもとに書いた曲です。ベックの「LOSER」みたいな一定のテンポでズンズン重くて、宗教的でありながら民族的でもある、不思議な魅力の曲を作りたかったんです。歌詞はクリエイターの悩みみたいなところを書いたんですけど、どちらかというと音にこだわった曲ですね。

ONI / jon-YAKITORY + 初音ミク

ーーもう一曲の新曲「アンチシステム's」はどうでしょうか?

jon-YAKITORY:これはMVがフルアニメになっていて、革命とか反乱をテーマにしているんですよね。少年漫画的な、ワクワクするものだったので、そこにボカロが乗ってくるならばこういうロックがいいと思ったんです。ここまで疾走感があるロックって久しく作っていなかったと思ったし、技術も向上したのでもう一度自分の好きなものを全力で作ってみようと思って生まれた曲ですね。

ーーちなみに「アンチシステム’s」の歌詞はどんなところが切り口になったんでしょうか?

jon-YAKITORY:前提としてアニメーションのテーマがあるんですけど、そこを踏まえた上で今の自分の状況も絡めていった、というのは間違いなくあると思います。ただ、説教臭くなるのは嫌だなと思っていたので。言葉選びとしても叫びみたいなところを主眼に置くというのは意識しました。ただ単に攻撃的に批判するだけの曲でいいのかと一瞬思ったんですけど、体制に対して立ち向かう表現だけで押し通していいんじゃないか、と。そこに共感してくれる人が見てくれて、その人たちが救われればそれでいいかなと思って、振り切った歌詞を書きました。

アンチシステム's / jon-YAKITORY
アンチシステム's feat. Ado / jon-YAKITORY

ーー時系列で曲についていろいろ聞いてきたんですが、ベスト盤の曲順はどのようにして決めたのでしょうか?

jon-YAKITORY:これは野球の打順のイメージに近いですね。「シカバネーゼ」が四番バッターでブチかましてくれる曲。新曲を最初にしたほうがいいだろうというのがあって「ONI」を1曲目にして、次の「イート」で深く掘り下げて、「ザンネンショーマン」はちょっと厨二病っぽい曲調ではあるので、さらに聴いてくれる人を拡張した上で、「シカバネーゼ」で打ってもらう。「無知ンち」は短い曲なので、そこで一つブレイクを挟んで上で「ao」という深くジーンとくるような曲を入れる。その流れで「アノトキシン」というエモい曲を聴かせ、その後にポップな「ススメ!」を入れる。そこからもう一度ブチかます方に振った「アンチシステム’s」とかっこいい側に振った「ぼくらは」を並べました。「以心伝心」は別れの曲なので、最後の方に持ってくるのがいいかなと。でも、しんみりしたままじゃ終わらせられないなということで、最後は「フェイキング・オブ・コメディ」で終わる。この曲は動画も紅白の幕が垂れ下がって終わるので、アルバム的にも閉幕という感じで潔いかなと思って、そういう並びにしました。

ーーベスト盤を踏まえて、この先どんな風に進んでいこうと考えていますか?

jon-YAKITORY:もっと自分の作品の細かいところまで解像度を高めて、さらにひとつ一つの音にこだわって作っていくことですね。今までもそういう作品を作ってきたつもりですけど、もっと妥協なく自分の作品の強度を高めていきたいです。この7月からスタートしたアニメ『探偵はもう、死んでいる。』(TOKYO MX)のオープニング(「ここで生きてる」)や『LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶』の主題歌を担当したり、大役を任せてもらえるようになってきているので。細部まで納得させるくらいのこだわりを持って、とにかく作品を強くしていこうと思っています。

■配信情報
jon-YAKITORY
「アンチシステム's」
7月16日より先行配信
配信はこちら

「ONI」
先行配信中
配信はこちら

『Y』

■リリース情報
jon-YAKITORY
ベストアルバム『Y』
発売日:2021年7月28日(水)
レーベル:ナポリタンjon
品番:SNCL-44
価格:¥2,530 (税込)

<収録曲>
01. ONI
02. イート
03. ザンネンショーマン
04. シカバネーゼ
05. 無知ンち
06. ao
07. アノトキシン
08. ススメ!
09. アンチシステム's
10. ぼくらは
11. 以心伝心
12. フェイキング・オブ・コメディ

<購入特典>
購入特典として人気イラストレータ"かゆか”が描きおろしたジャケットのイラストをデザインに使用したメガジャケット(Amazon)、ポーチ(楽天)、トートバッグ(タワーレコード)、クリアファイル(アニメイト)を付属

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ベストバルバム『Y』特設サイト

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