『SIREN PROPAGANDA』インタビュー

予測不能な“新SMTKサウンド”の誕生ーー石若駿らメンバーに聞く、アルバム『SIREN PROPAGANDA』制作秘話

「それぞれ音楽の限界を突破しようという意思が強いのかも」

――今作では「マルデシカク(feat. TaiTan)」でのヘヴィなリフや「Love Has No Sound」でのハードコア~スラッシュメタルっぽいパート等も目立ちますね。このあたりはどのような背景があったのでしょうか。

細井:前作が出てからコロナ禍に入って、でもSMTKは配信ライブとかをやってたんですね。それで何とかバンドとして形を保てたというか、経験値を上乗せできた。で、そのライブの中でけっこうヘヴィなサウンドになる場面が多かったんですよ。それを次のアルバムでは出したいなと俺が思って、曲を書いたんだと思うんです。「思うんです」というのは、明確にこうしようというよりはお風呂上りにギターを弾いててなんとなくできたりしたものだからなんですけど。基本的には、ライブでやってきたことが(自然に)出てきたんだと思います。

石若:僕も、そういうハードな音楽は元々好きだったので……なんか、良かったなぁと思いました(笑)。

一同:(笑)

石若:そういうシチュエーションになれるのもSMTKの強みだと思います。ダイナミクスが溢れ出て壊れちゃうくらいの音楽を限界破裂するまでやってますよね。僕は元々そういう音楽が好きだったけど日頃の音楽活動として演奏する機会はあまりなかったんです。ノイズとかをYouTubeでディグってた時もあったし、もっと小さい頃はX JAPANに始まり、Slipknotとかマリリン・マンソンとか、いわゆるハードな音楽も聴いてましたね。パンクとかも好きで……Sum 41とかってパンクに入るの?

細井:懐かしい! 入る入る。

石若:自分が演奏する機会はあまりなかったのもあって、徳ちゃんがそういうサウンドを持ってきてくれたことでまた幅が広がったなって思います。あと僕が見ていて思うに、徳ちゃんがこの1年でいろんなギタリストと交流を深めているというのも要因の一つにあるんじゃないかと。今まで以上に、いろんなギタリストと会ったり演奏したり、そういうところから刺激受けてるのかもなと思ってる。逆に徳ちゃんもいろんな人を刺激しているだろうし。

――マーティさんは、そのあたりについていかがですか?

マーティ:みんなはいつも俺をびっくりさせる。けど、みんなは俺の音を全部聴いたことがあるからびっくりしない。俺は新しいフレーズ練習しないといけない(笑)。

――(笑)。松丸さんはいかがでしょうか。

石若:実際、どうなの? 俺たちの音、うるさい?(笑)

松丸:いいんじゃないですかね、うるさくて。(笑)

石若:でも、その音の中で契が必死に吹いてる姿を見て俺は感動してるけどね。

細井:うん、そうそう。本当にそう思うよ。

松丸:いや、本当にうるさいと思います(笑)。それが最高です。自分に必要な音楽かなと思います。SMTKをやってなかったら多分違う形でこういうサウンドを求めていたし、自分はやっぱりプレイヤーだと思うんですよね。音楽を聴いて楽しみはしますけど、やっぱり演奏してる時が一番楽しいし、そこに生きがいをすごく強く感じるので、SMTKをやってる時はそういうやかましい音楽をすることによって何かしらの欲を満たしている。石若さんも叩きまくってるし、徳太郎さんもマーティも弾きまくってるし、僕は音数多すぎるし。SMTKはそうやって限界までやることで、その先の音を出そうとしてますよね。例えば一般的なサックスの奏法としては間違いなことでも、それをコントロールしてあえて連続して出すことによって新しい音像も見えてくるし。それぞれ音楽の限界を突破しようという意思が強いのかも。

――SMTKの魅力って、そうやってやかましい音も含めて吸収しつつ、でも最後に抜け感を感じる点だと思うんです。これは石若さんのドラムプレイ自体がそうですが、テクニカルなプレイヤーにありがちな閉じた印象がないというのがSMTKの音楽性にもすごくあてはまっていて、オープンで風通しが良い。今の「限界を突破する」という話は、もしかしたらそういう点につながっているのかもしれないと思いました。

松丸:でも、やっぱりそれは生き方とか考え方なんじゃないかな。お互いに対する接し方とか、お互いの持ってくる曲に対してのオープンな感じというか。音楽的に対立はしないし、何か提案した時は話し合うし、それで新しいものが生まれるし。あれ、徳太郎さん微妙な顔してる?

細井:俺はけっこう嫌なことは嫌って言うよね(笑)。

松丸:あ、そうそう、徳太郎さんが言ったそういうのを採用するじゃないですか。それで変に喧嘩とかにはならないし、こういうふうに試したら面白いだろうなというのはどんどん試していくし。

石若:全員の意見を全肯定してないし、自分も全肯定されているとも思ってないけど、そこは気兼ねなく当たり前のように意見を出すし、当たり前のように否定もするし、そういうのが演奏でも楽曲制作でも出ているのかなと思います。すごく良いバランスのバンドだなと思いますね。

松丸:バンドメンバーそれぞれが、違う現場でけっこう一緒になったりするんですよね。で、音楽をやってない時も、一緒に花火したり、年越したり、誕生日祝ったり、肉食べに行ったり。

石若:そう、音楽やってない時でも一緒にいることが多いですね。

――いつだったか、ラッパーのNAGAN SERVERさんが演奏の鳴りという意味で「ジャズとヒップホップの共通点は煙たさだ」ということをおっしゃっていて(※1)。確かにこの2つは煙たさを発しながら接近してきた部分があるし、いわゆるそういった名作というのも多いですよね。

細井:ラップとジャズがコラボする際に、ラップの方が優位に立つことが多い印象がありますよね。ラップはメッセージ性が強いし、ジャズは人力でやるにしても管楽器だけ生でやるにしてもサンプリング素材として扱われることが多いから、スモーキーな感じになるのかもしれない。逆にSMTKの今回のアルバムは、冒頭の「Headhunters(feat. Dos Monos)」は荘子itの色が強いのでスモーキーな雰囲気がある気もするし、逆に俺や契ちゃん、マーティの作った曲にラップを乗せてもらったのはたしかに抜け感のある印象になっている。ラップは乗っているけどやっぱりバンドサウンドが主体だからですかね。

石若:僕もいろんなヒップホップやジャズミュージシャンが交流するところにはいますけど、SMTKに関しては文脈を意識していないからというのはあるかもしれないですね。曲作りの際も「いわゆるあんな感じじゃない?」というやりとりがない。それが自然に起こっているのが良いと思っているので。僕もSERVERさんともちろんつながりはあるんですけど、「ジャズとヒップホップの融合」という意味では(実際の音としては)あてはまらないというか。

――他にも、「Genkai Mentaiko」は石若さん作曲で、「Minna No Uta」はSMTK作曲ですよね。これらはどういった形で作られたのでしょうか。

松丸:「Minna No Uta」は、1月にレコーディングをする前に、皆でプリプロみたいな感じで制作途中の曲とかをリハスタに持ち寄って一日使ってみっちり演奏しながら話し合ったんですけど、最後の方に「もう一曲欲しいよね」ということになったのかな。その時に、それぞれが15分くらいかけて三小節か四小節ずつくらい書いて、それをくっつけて曲にしよう、となったんですよ。マーティはベースを書いてそれがそのままベースラインになってて、上の部分は、最初の四小節が僕で次が石若さんで、最後が徳太郎さんで、という感じです。

石若:最初はマーティのベースはメロディとしてとらえてたんだけど、これはベースラインの方が良いんじゃない? ってなってそれ用に書き直して。最初は、皆でユニゾンするような曲があったらいいよねっていう話から始まった気がします。それまで作った曲を並べてみて、最後に足すとしたらユニゾンしてる曲があったらいいよね、っていうアイデアでした。

松丸:テンポって指定しましたっけ?

石若:してなかった。

松丸:そうですよね。テンポも何も指定しないでただ三、四小節書くみたいな(笑)。

――「ユニゾンしたものがあったらいいよね」といったアイデアを提案するのはどなたなんですか?

石若:僕です。

松丸:最初は、誰か書いてきてよみたいな感じでそれぞれ書いてこようとしてたのかな。

細井:でも誰が書いてくるんだよっていうので、じゃあ皆で書こうねってなった(笑)。

松丸:(笑)。リハの一日の終わりの方で、皆すっごく疲れてたんですよね。その状態で最後に書いた曲ですね。

石若:あと「Genkai Mentaiko」は、SMTKのために曲を書こうとLogic(Pro)を立ち上げて、DTMで作ろうとした時に思いついたいくつかのアイデアを3つつなげた曲です。その中の一つは、徳ちゃんの影響があったと思います。ライブをやっていた中で、ギターが重いサウンドを取り入れたいなと思って。メロディでサックスが鳴ってる部分は契がそういうふうに吹いてくれたら面白いだろうなって。この人がこんなことやったら面白いだろうなっていうのを、自分で組み合わせて作っていった感じですね。

――では最後に、今作で他にも聴いてほしいポイントがありましたらぜひ教えてください。

石若:ミックスもすごくこだわっています。ギターも一曲の中にたくさんいるしホーン、サックスもたくさん鳴っていて。なので、何回も聴いてほしいと思います。謎を感じたなら、それを解明するまで繰り返し聴いてほしいですね。

松丸:サックスに関して言うと前作と違って全てアルトサックスだけで重ね録りをしていて、マーティ作曲の「Ambitious pt.1(feat. Ross Moody)」「Ambitious pt.2(feat. Ross Moody)」と僕が書いた「Diablo(feat. 没 a.k.a NGS)」でのホーンアレンジもちょいちょい凝っていたり。一つ一つの曲の中での展開も面白いのでぜひ聴いてほしいです。

細井:いろいろなサウンドの違いを楽しんでもらって、これはメタルだ、パンクだ、ヒップホップだ、ジャズだ、と名前をつけてもらってもいいし、皆さんで自由に楽しんでもらえればと思います。

マーティ:このアルバムを聴いて、疲れを癒してください! はいお疲れ〜。

(※1)https://eyescream.jp/music/82942/

『SIREN PROPAGANDA』

■リリース情報
『SIREN PROPAGANDA』
¥2,420(税込)
2021年7月14日(水)
<収録曲>
1.Headhunters (feat. Dos Monos) 
2.マルデシカク(feat. TaiTan)
3.Diablo(feat. 没 a.k.a NGS)
4.Genkai Mentaiko
5.Minna No Uta
6.Ambitious pt.1 (feat. Ross Moody)
7.Ambitious pt.2 (feat. Ross Moody)
8.Love Has No Sound
Guests
Dos Monos
荘子it, TaiTan, 没 a.k.a NGS
Ross Moody
Keita Kobayashi, Kobamuta

配信リンク
iTunes Store: https://apple.co/3w97cwS
Apple Music: https://apple.co/3AheSk4
Spotify: https://spoti.fi/2UXzu0s

SMTK公式Twitter

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