ちゃんみな、2部構成で濃密に描いた“ディーヴァの悲劇” 日本武道館公演に繋ぐ圧巻のステージを観た

 見事なエンターテインメント。5月25日、中野サンプラザで行われたちゃんみなのライブは、彼女の表現者としての度量と気概を目の当たりにするステージだ。

ちゃんみな

 昼・夜の二部制で行われたこの日のライブ。特筆すべきは、何をおいてもその演出とコンセプトである。見ている時の感覚は、ライブ公演、というよりも、ミュージカルに近かった。両公演でそれぞれ異なるストーリーが用意され、ライブの中で目まぐるしく衣装や舞台セットを変えながら、9人のダンサーと共に視覚的に物語を表現。もちろん、セットリストも両公演でそれぞれ異なるものを演奏している。オーディエンスが声を出せず、大きく身体を動かすこともできないコロナ禍でのライブだからこそ、その中でも楽しめるアイデアを試したのだろう。両公演ともちゃんみなはエアリアルフープに乗って登場するなど、のっけからインパクトのある演出が光っていた。

 「“こんな時期だから仕方ないよね”って思われるようなライブにはしたくなかった」。昼公演の本編終了後、アンコール前のMC(というより座長による舞台挨拶のようである)でこう語っていたように、彼女は今まで通りのことができない制限された状況の中で、いかにクリエイティブな表現をするかを自身に課していたように思う。

 そうした演出の裏側には、もちろん彼女のアーティストとしての矜持がある。だが、それだけではないのだろう。この日のライブで10月15日に日本武道館公演を行うことを発表したちゃんみなは、何度もファンへの愛と感謝を口にしていた。ライブという場が失われた時間を過ごした分、足を運んでくれるリスナーに対し、少しでも楽しんでもらいたいという気持ちがあったことは想像に難くない。

 さて、ライブのストーリーである。昼公演は華やかな景色から物語がスタート。「Angel」で幕を開けると、「FXXKER」、「LIGHT IT UP」と続き、ちゃんみなが演じる主人公は、どこか不遜な態度を取りながらも、サーカス団の花形として観客を魅了。「Morning mood」で恋人との甘い一時を過ごすなど、まさに順風満帆なキャリアを送っていた。

 だが、早くもその生活には陰りが見え始める。「Very Nice To Meet You」では劇団内にライバルが登場し、恋人も奪われ、「ボイスメモ No. 5」以降サーカス団内部での立場も転落。激情的な「GREEN LIGHT」の歌は、彼女の失意や怒りを訴えているようだった。そして、まどろむような音色とサイケデリックな映像で聴かせた「Needy」を終えると、彼女が場末のバーで男と一緒に酔い潰れるようなシーンへと移っていく。まさに天国と地獄、最後の「ダリア」を歌いきる頃には、登場時に使用したエアリアルフープで逆さまに宙吊りになるなど、どこか不吉な予感を漂わせるエンディングとなった。

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