「THE FIRST TAKE」出演で注目のマハラージャンとは何者? リスナーのツボを突く“社会人派”ダンスミュージック

 うずたかく巻かれたターバンと端正なダブルのスーツ。アラブのIT企業のCEOか現代版石油王かーー日常に違和感を差し挟む、このルックスも浸透してきたマハラージャン。ファンクやソウル、レアグルーヴなどを現代的に解釈。キャッチーなメロディに現代の理不尽をスパイシーに効かせた楽曲群の中毒性の高さでリスナーを拡大している彼が、「THE FIRST TAKE」に出演し話題を呼んでいる。7月16日には4th EP『僕のスピな人』を配信リリース、7月21日にはメジャー1stアルバム『僕のスピな☆ムン太郎』をCDオンリーでリリースする。その音楽のユニークさや最近の動向を確認しておきたい。

 東京都出身で大学院卒院後はCM制作会社に就職。2018年にWEB広告会社に転職し、会社員として働きながら音楽制作を続けて、2019年11月に全楽曲の制作、演奏を一人で行った5曲入りのEP『いいことがしたい』をリリース。タイトル曲「いいことがしたい」は社会人として誰しもが抱える葛藤や狡さと同時に人として徳を積みたいという切なさをユーモアを交えて表現。〈いいことがした~い〉というサビのリフレインがモダンなグルーヴと相まって脳内ループするこの曲は各種サブスクリプションのプレイリストにピックアップされたり、全都道府県のラジオ局でオンエアされるなど、話題になった。ちなみに、無名の新人ながらミックスはくるりやコーネリアス 、スピッツなど挙げるとキリがない名匠・高山徹がミックスし、バーニー・グランドマンがマスタリング・エンジニアを担当するという快挙を成し遂げている。プロから一般のリスナーまで魅了する曲の強さがそもそもあるというわけだ。2020年4月には2nd EP『ちがう』を配信リリース。フレンチエレクトロテイストのタイトル曲をはじめ、またもクセになる楽曲揃いで、ディーラーから依頼を受け、2作のEPにゴダイゴの「MONKEY MAGIK」のカバーを追加した初パッケージ作品を2020年9月にタワーレコード限定でリリースした。

マハラージャン - いいことがしたい【Official Music Video】
【MONKEY MAGIC (GODIEGO) カバー】
『セーラ☆ムン太郎』

 楽曲が評価される中、2021年3月には3rd EPとなる『セーラ☆ムン太郎』でメジャーデビューするスピード感を見せつけた。従来の自作自演から一転、生音の演奏にこだわり、「希望するミュージシャンにオファーしたら全て叶ってしまった」という豪華メンバーーーOKAMOTO’Sからハマ・オカモト(Ba)、Ovallからmabanua(Dr)、Shingo Suzuki(Ba)、さらに石若駿(Dr)、皆川真人(Key)が結集。ソウル、ファンク、ジャズをモダンに解釈し演奏できる最高峰の面々により、格段にアップしたサウンドプロダクションで踊れる上にリスニングミュージックとしても優れた作品に。加えて、やはり社会人経験が随所で顔を出す秀逸な歌詞が大人のリスナーのツボを突く。〈真実を語る人が 孤独になる〉(「セーラ☆ムン太郎」)ことは例えば企画規模と予算のバランスを指摘すると起こりそうだし、その名も「示談」という曲は恐らくかなりヤバい事案だったのだろう。既視感のあるタイトルを持つ「空ノムコウ」は転職を考える主人公が、堅実な人生設計に“なんか違う”と感じる気持ちがリアルだ。それをとびきりメロウでビルの間に夕焼けが見えそうな曲調で聴かせるのはもはやズルい。30歳前ぐらいの大人に染みる曲とははこういうことなんじゃないだろうか。

マハラージャン / セーラ☆ムン太郎 [Maharajan/Sailor☆Mun-Taro] Official Music Video
マハラージャン -示談[リリックビデオ]
マハラージャン -空ノムコウ[イラストビデオ]

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