SOMETIME'Sの音楽にある“聴き流せない”魅力 Shazam検索数上昇などから考える、新たなヒット誕生の可能性

 近年、音楽シーンではTikTokなどのSNSでのバズをきっかけにヒット曲が生まれている。こういったSNSを起点にしたバイラルヒットは以前から海外ではよく見られたが、日本ではあまり見られることがなかった。しかし、コロナ禍をきっかけに昨年は日本でも、YOASOBIや瑛人のようなアーティストの楽曲に共感したユーザーがSNSでUGC動画(一般ユーザーによって作成されたコンテンツ)を投稿することで楽曲を広げていく新しいヒットのパターンが見られるようになった。

 こういったSNS発のバイラルヒットには、その投稿先となるプラットフォームでのフォーマットにあわせた短時間で伝わる楽曲のキャッチーさと聴き手の印象に残る歌詞が求められる。また、バイラルヒットする曲を作り出す側のアーティストもSNSを通じてのファンとの交流にも長けており、リリースやメディア露出の際にSNS上で盛んにファンに自分たちの音楽を聴いてほしいと呼びかけることは少なくない。そうすることで自分たちのストーリーを共有し、ファンもそのストーリーに参加することに価値を見出し、そこから生まれる双方向性のある交流がバイラルヒットを生み出す原動力になっている。

 今ではこういった新たなヒットの法則が定着しつつあるため、アーティストにとってもTikTokをはじめとしたSNS攻略はひとつの課題になっており、その結果“TikTokファースト”で活動するアーティストも増えつつある。しかし今、その傾向とはまた異なる形でシーンに一石を投じ、音楽ファンの関心を集めているアーティストがいる。それが、2人組音楽ユニット・SOMETIME’Sだ。

 2017年に結成されたSOTA(Vo)と TAKKI(Gt)によるSOMETIME’Sは、2020年よりデジタルシングルを中心にリリースを重ね、同年10月に初の全国流通EP『TOBARI』をリリース。これまでにUSEN、ラジオのヒットチャートへのランクインをはじめ、配信楽曲がApple Music、Spotify、Prime Music(現Amazon Music)、AWAなど主要プラットフォームにおける数々のJ-POPや新人アーティスト発掘系プレイリスト入りするなど、今、勢いに乗る新人アーティストにふさわしい活躍を見せている。

 そんな彼らに注目が集まったのは、先述のTikTokをはじめとしたSNSでのバズではなく、“良質な音楽を制作し、その音楽を多くの人に聴かせる”という原始的な行為。それを裏付けるように、彼らの音楽は音楽認識アプリ「Shazam」の楽曲検索数で大きな上昇を見せているのだ。

 Shazamでは、ユーザーがスマートフォンやパソコンの組み込みマイクを使い、テレビ、ラジオ、ライブハウス、クラブ、街中など、あらゆる場所で聴こえる気になった曲をその音響指紋を元に曲を特定することができる。取得した曲の音響指紋データと一致するShazamの音響指紋データベースの中にあるデータが検出された場合には、アーティスト名、曲名、アルバム名などの情報がユーザーに送り返される仕組みになっている。

 ShazamでのSOMETIME’Sの曲の検索数は、“新人アーティストとトレンド”である Discoveryチャートにて1位を獲得するなど、昨年から飛躍的に伸びており、今年5月26日にリリースされた最新EP『Slow Dance EP』収録曲「Slow Dance」は、この記事を執筆している時点ですでに1万回近い検索回数を記録している。

SOMETIME’S - Slow Dance[Official Music Video]

 検索回数の多さが意味することは、それだけ聴き手の耳に残る楽曲だということだ。例えば、SOMETIME’Sの曲の再生回数は、YouTubeでも上昇中だが、そこで公開されているMVのコメント欄には、リスナーからの「バイト先の有線で聴いて気になった」、「タクシーのラジオで流れてきてこの曲を知った」というようなコメントが多く見られる。このような楽曲自体の耳に残る良さが、リスナーの探究心をくすぐったことで、Shazamでの楽曲検索につながり、そこからストリーミングサービスでの再生にまで発展したことが考えられるが、それは裏を返せば、SOMETIME’Sの楽曲には聴き流すことができない音楽としての魅力があることの表れだろう。

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