ハナレグミ、オーディエンスに寄り添う優しい眼差し 抜群のグルーヴで場内を揺らした『ツアー発光帯』

 その余韻を引き継いだ永積の弾き語りセクションでは「ここに来る途中に晴海埠頭が見えたので……」という言葉と共に紡ぎ出された、小沢健二「いちょう並木のセレナーデ」のカバーと「きみはぼくのともだち」。カメラのフォーカスをグッと絞るように、繊細な心の機微を描き出したその後は、再びバンドが合流。この静から動へのダイナミックな展開こそ、ハナレグミの真骨頂だ。

 「ハイ!チーズ」「サヨナラCOLOR」のフォーキーなバンドサウンドは、「棚から落ちたホリデイ」を境に、豊潤な歌モノと共存するグルーヴのうねりを際立たせていった。「大安」「Peace Tree」「オアシス」「大安」のメドレーでは、スティーリー・ダン「Peg」や「今夜はブギーバック」を織り込みながら、ファンクからヒップホップ、カリプソと自在に変化する怒濤のグルーブで煽り、客席もたまらず総立ちに。歓声は上げられなくても、体を揺らし、クラップで応えるオーディエンスと一体となった終盤の演奏は、ハナレグミの新たなアンセムである「独自のLIFE」、温かみ溢れるサザンソウルナンバー「Quiet Light」でクライマックスを迎えた。

「声を出さなくても会話できているよね。すぐに元通りというわけにはどうやらいきそうにないんですけど、こうやって無理なく音楽を続けられたらいいなって」

 希望を込めてそう語る永積の言葉に続いたのは、AOR的な洗練をまとった「笑う月 ~ムーンライト~」。その甘い浮遊感とともに本編を締め括ると、アンコールはカントリーナンバー「明日天気になれ」と、日本語訳をつけたチャールズ・チャップリン作のスタンダード曲「スマイル」のカバーからなる2曲。内から外へ。新作アルバムにおける歌のベクトルの転換と共に、躍動感を増したライブパフォーマンスで、本公演は締めくくられた。

 なお、7月には東京・大阪それぞれでの野音公演も新たに発表された。今回の『ツアー発光帯』は、この先も逆境に負けじと続くハナレグミの活動にさらなる変化をもたらすことだろう。

■ライブ情報
ハナレグミ 『ツアー発光帯 ~in the moon light~』
<バンドメンバー>
Ba:鈴木正人/Guitar:石井マサユキ/Dr:坂田学/Key:ハタヤテツヤ/美央ストリングス

7月3日(土)大阪・大阪城野外音楽堂
OPEN/START 16:30/17:30
指定席:8,800円(税込)

7月22日(木・祝)東京・日比谷野外大音楽堂
OPEN/START 16:30/17:30
指定席:8,800円(税込)

ハナレグミ Official Site

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