乃木坂46 3期生が築き上げた自分たちだけの物語 初単独ライブから『9thバスラ』までの歩みを辿る

 初お披露目から半年にして前例の「三番目の風」を吹かせることになった3期生。それが1期生や2期生が築いてきた乃木坂46の栄光の下にある人気なのではないかと、自分たちを疑ったこともあった。けれど、この4年間で12人は選抜/アンダー、それぞれの立ち位置で乃木坂46という物語を歩んできた。グループを飛び出し、テレビで、映画で、ラジオで、舞台で活躍する。18thシングル『逃げ水』では与田と大園、26thシングル『僕は僕を好きになる』では山下がセンターに。選抜/アンダーの先輩たちの背中を見てきた3期生は、今では後輩の4期生に背中を見せる立場へと変わっている。

 メンバーが歴代の衣装に袖を通す衣装パレードブロックは、「戦闘服」とも称される衣装の重要性と一人ひとりの衣装への思いが体現された。12人が思い思いの衣装で着飾られたパフォーマンスは、これまでにない継承の見せ方だった。しかし、筆者が継承という点で最も胸を掴まれたのは、4期生、2期生、1期生の楽曲を披露した期別ブロック。与田が愛らしくフレッシュにセンターを務めた「Out of the blue」に続くのは、「アナスターシャ」「Against」と2期生、1期生の思いが詰まった楽曲だった。VTRで久保が語っていたようにこの楽曲を3期生が披露するには大きなプレッシャーがある。堀未央奈、生駒里奈の卒業を経て、昇華していった2曲だからだ。だが、これまでの『BIRTHDAY LIVE』で提示されてきたように乃木坂46には歌い継ぐという希望の使命がある。

 久保は「Against」を歌うことについて、3期生12人が誰も辞めていないことに触れ「その状況でこの歌詞を歌うっていうことにすごく意味を感じた」と話している。そのパフォーマンスはもちろんだが、驚いたのは今の3期生に「Against」の歌詞がマッチしていることだ。歌い出しの〈あの日 初めての場所は/強い風が吹いていたよ〉は4年前の状況下を、〈前に誰かいるのなら/後をついて行けばいいけど/先頭に立ってしまった/運命には逆らえない〉からはグループの顔となった今の3期生をイメージさせる。サビの〈僕らは変わらなきゃいけない〉が示すのは4年前の自分たちからの決別。一人ひとりがそれぞれのフィールドで活躍するさらなる〈新しい道〉を切り拓いていく誓いの歌にも聞こえた。大サビでは花道の先にあるサブステージで12人が円陣を組む。そこに刻まれているのは「Effort Thanks Smile(努力 感謝 笑顔)」と記された『BIRTHDAY LIVE』のエンブレム。歌い継ぐこと、そして乃木坂46の歴史の継承を強く意識させる。生駒がInstagramを通して伝えた賛辞の言葉は、3期生にとって何よりの勲章であろう。

 この日、メンバーが何度も口にしていたのは「12人」という言葉。先述したように3期生は初お披露目から誰一人欠けることなく4年半を駆け抜けてきた。梅澤美波は本編ラストに「12人が同じステージに立てている奇跡」と愛しい大切なメンバーたちへの思いを表している。ライブ前にメンバーそれぞれが綴ったブログやメンバー発信でSNSに浮上した「#やっぱ3期生だな」には、どれだけ12人がこの日を心待ちにしていたかがひしひしと伝わってきていた。

 岩本、向井葉月のアコースティックギター伴奏に乗せて歌った「僕だけの光」は、12人の絆が涙となって流れ出た温かなパフォーマンスだった。伊藤の「せーの!」を合図に、順にパートを歌い繋いでいく。顔を見合わせゆっくりと伝播していく涙。4年前、日比谷野外音楽堂で開催した野外ライブでも大園のピアノ伴奏で「何度目の青空か?」を披露したことがあった。あの頃と違うのは、一人ひとりが歩んできた物語。時にはつらいこともあったけれど、一緒に並走している同期が支えであり、誇りだった。そんな言葉にならない思いが笑顔となって、頬を伝う涙となって溢れ出る。4年前と同じ、本編ラストに選ばれた「思い出ファースト」の歌詞〈君と ここにいる奇跡〉もまた、歳月を経て熟していった12人の絆としての証である。

 『BIRTHDAY LIVE』を終え、10年目に突入している乃木坂46。3期生は5年目を迎え、グループ史の半分を歩んできたことになる。乃木坂46の歴史を継承し、絆を確かめ合いながら、この先も3期生12人の奇跡は続いていく。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter(https://twitter.com/AKI_W_)

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