1st Digital Album『浮世歌』インタビュー
“心の中にある陰り”を歌う、Little Black Dress初インタビュー 平成生まれの彼女が歌謡曲に惹かれた理由
“近いのに遠い”という感覚は、人間にしか生み出せないもの
ーーLittle Black Dressさんの楽曲は、曲のタイトルなど言葉に対するセンスも独特なものがあると思いました。本が好きとか?
Little Black Dress:小さい頃はミステリー小説が好きで、湊かなえさんをよく読んでいましたけど……活字と言うよりは、その世界に入るのが好きです。映画とか音楽とか物語とか。だから、妄想少女だったんです。イジメられていた時も、いつも妄想して現実逃避していたし。それが形になったのが、私の音楽です。でも、何かから影響を受けているとしたら、やっぱり歌謡曲の歌詞ですね。だからキャッチーさにはこだわりがあります。
ーー「野良ニンゲン」は、すごくキャッチーですよね。
Little Black Dress:最初は「野良にんげん」だったんです。比べてみると、カタカナのほうがインパクトあるし、堅い感じがするじゃないですか。「にんげん」って平仮名にすると柔らかいイメージで、でも人間ってそんなに柔なものじゃないと思って、カタカナにしたんです。
ーー逆に「ちょーかわいい」は全部平仮名です。
Little Black Dress:ユルさを表現しました。アマビエをテーマに書いた曲ですけど、〈ちょーかわいい〉というフレーズは、女子高生の口癖が元になっています。カフェで歌詞に悩んでいた時に、後ろにいた女子高生の集団が「ちょーかわいい」だけで会話をしていたのが面白かったので。
ーー「愛まみれ」も、泥まみれとか血まみれなどあまりプラスの意味では使わない、「まみれ」という言葉をあえて使っていて。
Little Black Dress:家族へのメッセージをテーマに書いたんですけど、「愛だらけ」では、きれいすぎると思って。「愛まみれだな、私の人生は」って思ったので。
ーー〈キレイゴトだけじゃ成り立たない〉という歌詞があって。家族だからこそ、そういう部分がありますよね。
Little Black Dress:受け取りたくない愛もあるわけで。「まみれる」という言葉は、自分の体に引っ付いて離れない、まとわりつくような感覚です。ちなみに「哀愁のメランコリー feat. 成田昭次」も同じテーマで書きました。
ーーまったく違う曲調ですけど。
Little Black Dress:「哀愁のメランコリー」の歌詞には、〈近すぎて遠いメランコリー〉というフレーズがあって。近いのに遠いという感覚は、人間にしか生み出せないものです。どちらの曲も恋愛とも受け取れるし、どちらの曲も、愛をテーマに近い存在の人との距離感を歌っています。
ーー「名もなき花 feat. 栗コーダーカルテット」は、ある種の応援歌だなと思いました。
Little Black Dress:この曲はアルバムの中で一番好きかもしれないです。私は坂本九さんの「上を向いて歩こう」が好きで。「上を向いて歩こう」は、すごくポップで前向きなのに、やるせないと言うかギリギリの人間の心情を歌っている曲だと私は受け取っていて。
ーー涙がこぼれ落ちないように、上を向いて口笛を吹いて……という。
Little Black Dress:孤独で、誰にも打ち明けられない何かがあって、空元気な雰囲気なところが好きです。自分にもそういう雰囲気で伝えられたらと思って、花の成長と人の成長や心情を重ねて書きました。
ーー栗コーダーカルテットさんの演奏も素朴ですが、Little Black Dressさんの歌い方も素朴ですよね。
Little Black Dress:「名もなき花」は、日本語が伝わりやすいようにと思って書きましら。小さい子が好んで聴いてくれたらいいなと思ったからです。歌謡曲の魅力の一つは、すごく分かりやすい言葉なのに自分の感受性を豊かにしてくれる言葉選びがあること。小さい子たちがこの曲を聴いて、幼いなりに何か感じてくれることがあれば、それがその子にとって心が豊かになるということだと思うので、そうなったらうれしいなと思って書きました。
ーー先ほど「優しさが刺となる前に」は、子供の心を守りたいという気持ちで作ったと話が出ていました。曲作りを始めた時のテーマも「誰かの心を救う」だったと。それは今も、曲作りをする上でのテーマになっていますか?
Little Black Dress:「誰かの心を救う」なんて上から目線過ぎて、おこがまし過ぎて今はそんなことは言えません。でも「自分のためが後々、人のためになる」という言葉がすごく好きで、結果として誰かの日常に寄り沿える曲であったらいいなというスタンスです。
ーーそうした心意気で作られたアルバム『浮世歌』は、自分の中ではどんな作品になったと思っていますか?
Little Black Dress:今言葉として伝えにくいことや心の中にある陰りのようなものを、この音楽は代弁してくれていると思って、聴いてくれたらうれしいです。今の生活のよりどころにしてもらえたらいいなと思います。
ーー「幸せになりたいの」という曲もありますが、Little Black Dressさんにとっての幸せは何ですか?
Little Black Dress:美味しいものを食べることです(笑)。私、『アンパンマン』が好きで、作者のやなせたかしさんが戦後間もない頃の貧しい時代をご経験されて、子供たちがご飯を食べられないことが、一番世の中を暗くしてしまうと思われたそうなんです。ご飯を食べられることは、人が生きる上で一番幸せなこと。アンパンマンは自分を犠牲にして相手に食べ物を与える、だから正義の味方はご飯を食べさせてくれる人なんです。つまり子供にとって、料理を作ってくれたり、働いて食べ物を買うお金を稼いできてくれる家族。『アンパンマン』には、そういう深い意味が込められています。改めて今、貧困の時代と言われ、若い人でもお金がなくて、厳しい生活を送っている人もいて。そう考えると、やっぱり美味しいご飯を食べられることが一番かなって。
ーーじつは格差が広がっていて、「見えざる貧困」があると言われていますね。
Little Black Dress:小さい子がこの先、未来とか夢の見方が分からなくなるんじゃないかと心配です。大人でも今は目の前のことしか考えられない時代で、子供たちが将来の夢を聞かれて答えられないような世の中になってほしくないなって。
ーー社会に貢献する活動やボランティアにも興味がありますか?
Little Black Dress:私も将来的には、そういう活動をしたいと思っています。中学の時に「パソコン要約筆記同好会」というところに入っていて、それは耳が聞こえない人のために話を要約して字幕にするという、ボランティア的な活動だったんです。それにMISIAさんから受けた影響や、まだ小学生の小さい妹がいるからもかもしれません。児童養護施設に行って歌いたいし、少しでも子供が生きやすい世の中を作りたい。自分が経験してきた幼少時代を振り返ると、もっとこうだったら生きやすかったのにと思うから、そういう経験を踏まえてもっと曲を作りたい。でも、まずは自分のことから、アルバムを聴いてもらわないと何も始まらないですね。
■リリース情報
1st Digital Album『浮世歌』
5月12日(水)発売
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■ラジオ情報
Inter FM 毎週木曜日 20:00~21:00『TOKYO MUSIC SHOW』 https://www.interfm.co.jp/tokyomusicshow
Little Black Dress
HP: https://littleblackdress.website/
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