Homecomings 福富優樹&畳野彩加インタビュー “引っ越し”がバンドの制作に与えた影響、新たな始まり告げる充実作を語る

Homecomings『Moving Days』インタビュー

"変わっていくこと”を責任持って表現したい

Homecomings

ーーでは、アルバム『Moving Days』について、話を聞かせてください。「Cakes」や「Moving Day Part 2」が起点となったということですが、それ以外にもアルバムに向かうきっかけになったような曲はありますか?

福富:「Continue」はかなり前からあった曲です。『WHALE LIVING』の頃に『ちびまる子ちゃん』を見返してたり、さくらももこさんのエッセイを読み返したりしてたんです。その後、さくらさんが亡くなってしまった(2018年8月15日)。その訃報を知って、すぐに作った曲でした。なんなら「Cakes」よりも古いかな。2019年にはストリングスを入れて演奏もしてました。アルバムを作り始めるときに「Continue」がアルバムの真ん中にある構成は考えてました。シンプルにめちゃくちゃいい曲だし、『WHALE LIVING』からの流れもある。それに「Cakes」や「Continue」が入ってる次のアルバムは絶対にいいものになると思えたし、そういういい曲がすでにあることで、他の曲でいろんなバラエティが出せる理由になった気はします。

「Continue」

ーーテレビ東京ドラマ25『ソロ活女子のススメ』主題歌として、4月に公開された「Herge」もソウルフルなタッチの曲でしたが、これはアルバム制作のなかではどういう存在でした?

福富:「Cakes」や「Continue」が先にあって、そこからの挑戦として「ソウルみたいな曲をやりたい」と思ったんです。ブラックミュージック的なソウルというより、キャロル・キングの『Music』(1971年)ってアルバムが好きで、あんな感じをやりたいなというところから「Herge」と「Moving Days Part2」を同時に作り始めたんです。

ーーそうか、あのテイストはキャロル・キングのソウルなんですね。

福富:それが大事でした。『Music』と、その次のアルバム『Rhyme & Reasons』(1972年)。名作の『つづれおり(Tapestry)』(1971年)じゃなくて、その後の2枚がリファレンスとしてあった気がします。ホイットニー的な感じでもあるし、Homecomingsでできるソウルっぽさを感じました。

畳野:「Herge」や「Moving Days Part2」はピアノが入ってるんですけど、ピアノで曲を作り始めるのはほぼ初めてだったんです。ギターとはぜんぜん鳴る音も違うし、使う音によってぜんぜん雰囲気が変わってくる。そういうのも含めてどうやったらキャロル・キングっぽいソウル感のコードの聴こえ方ができるのか考えたり、ソウルというものをイチから調べたりしたうえで曲を作っていきました。そのチャレンジが今回、いちばんわかりやすく出た2曲なのかなと思いますね。ちょうどメンバーもレックス・オレンジ・カウンティとか現行のソウルっぽいアーティストを聴いていたし、キャロル・キングっぽくしようと言われてそうなったというよりは、たまたまみんなのモードが一致してたという感じのほうが近いかもしれない。

福富:Homecomingsでラジオ番組をやってきて、そこでみんなが好きな曲を持ってくるから、今どんなのを聴いてるのかわかるんです。あとは、Homecomingsというバンドがこれから続いていくために、カクバリズム的な音を意識したというか。カクバリズムってソウルっぽいじゃないですか。それもテーマとしてよかった気がしますね。

ーーグルーヴやリズム面でのソウルっぽさもあると思うけど、メロディアスで、ハーモニーもちゃんとしてるという意味でのソウルっぽさ。バンドとして使える武器が増えましたよね。その一方で「Pet Milk」みたいなインストが入ってくるのは、USインディとかをいっぱい聴いてる人らしい絶妙な入れ方とも思いました。

福富:どうしても、こういうことをやりたくなっちゃう(笑)。全曲キャロル・キング路線を目指して作り始めたんですけど、もっと好きなものが混ざってたほうがいいなと思い、「Here」「Blanket Town Blues」「Pet Milk」みたいなUSインディ感のある曲を後半に急いで作っていったんです。その混ざってる感じがすごく僕らのキーになるのかなという気がします。

「Pet Milk」
「Blanket Town Blues」
「Herge」

ーー僕の感じでは1曲目の「Here」で部屋の窓を開けて、「Pet Milk」では気持ちいい風を入れてる感じですね。もちろん名曲揃いの息もつかせぬアルバムもいいんですが、この風通しの良さはHomecomingsらしさですよね。

福富:そうですね、夜風っぽさというか。どうしてもそうなる気がしますね。

ーー他に思い入れの深い曲はありますか?

畳野:「Tiny Kitchen」という、ほぼ打ち込みとエレピだけみたいな宅録の曲があるんです。あれは家で作って宅録して、歌も録り直してないそのまんま。環境音もよく聴くと一緒に入ってるんです。でも、タイトルと曲のイメージと宅録感がすごくマッチしてて、私は個人的にはいい曲できたなという実感が持てたんです。バンドのサウンドではないんですけど、Homecomingsとしても打ち込みに挑戦してる曲のひとつでもあるので、そこにびっくりして欲しいなという気持ちはあります。

「Tiny Kitchen」

福富:僕は一曲目の「Here」がすごく好きです。アルバムのテーマとして引っ越し、変化ということを歌いたいというのと、社会的なことをちゃんと歌にしたいなというのがあって。なるべく歌詞に「僕」とか「私」を使わないというのは「Cakes」からやってたんですけど、ラブソングを作るにあたって男性同士、女性同士での恋愛でもいいようにしたい。「Here」はそういう、社会的なルールや普通という概念からこぼれ落ちてしまう人たちの救いになるような曲になればいいなと思っています。メジャーデビューのタイミングだからこそ、そこをちゃんと挑戦したかった。この曲ができたことは、すごく自信になりました。大事な曲になったなという気がします。

Homecomings - Here(Official Music Video)

ーーアルバムを聴いていると、今この時代に音楽をやってるバンドなんだという気がすごくします。

福富:時代性は意識しています。今は多様性みたいな言葉を茶化す方が目立つじゃないですか。僕はそれはしたくない。ダメなことにはNOと言いたいし、変わっていくということをちゃんと責任を持って表現したい。

ーーそれこそ今回もアートワークに深く関わっているイラストレーター、サヌキナオヤくんとHomecomingsが一緒に続けている映画と音楽のイベント『NEW NEIGHBORS』のイベント名にも大事にしているものが表れてますよね。新しい隣人に対してちゃんとハローって言おうという姿勢が大前提としてある。そういう一貫した思いも含めて、ひと回り大きなアルバムになってると感じました。これって第一部の終わりなのか、第二部の始まりなのか。

福富:僕はフレッシュな気分でいるし、もう次のアルバムのことも考えてます。何かの始まりみたいなアルバムになってる気はします。

畳野:私も同じようなフレッシュさがあるし、今までのアルバムを出すときとはちょっと違うワクワクさを感じています。それに、ここまで4人全員でアルバムを作ったと思えるのは初めてなんです。そういう意味では4枚目ですけど、Homecomingsの4人で初めて作れたアルバムとして、ちゃんとここで完成したという気がしてます。

『Moving Days』

■リリース情報
『Moving Days』
2021年5月12日(水)発売
初回限定盤【CD+Blu-ray】¥4,950(税込)
通常盤【CD Only】¥2,970(税込)
特設ページ

<収録曲>全11曲(予定)
Blu-ray収録内容(初回限定盤のみ付属)
"BLANKET TOWN BLUES" December 25, 2020
01. Corridor(to blue hour)
02. Blue Hour
03. Hull Down
04. Lighthouse Melodies
05. Smoke
06. ANOTHER NEW YEAR
07. LEMON SOUNDS
08. HURTS
09. Special Today
10. Moving Day Part1
11. Continue
12. PLAY YARD SYMPHONY
13. Cakes
14. Songbirds
15. Whale Living
16. I Want You Back

■法人別特典
・Amazon.co.jp:ポストカード(音源DLコード付)TYPE-A
・タワーレコードおよびTOWER mini全店、タワーレコード オンライン:ポストカード(音源DLコード付)TYPE-B
・全国HMV/HMV&BOOKS online:ポストカード(音源DLコード付)TYPE-C
・その他法人:ポストカード(音源DLコード付)TYPE-D

※ダウンロードできる音源は共通。
※ダウンロード有効期間は2021年6月30日まで。

Homecomings 配信サイト

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