BiSH ハシヤスメ・アツコ、グループきってのコメディエンヌとして放つ存在感 メンバー分析第4回

ハシヤスメ劇場で感じられるメンバーからの愛や信頼

 BiSHが主戦場としているライブで、アツコにとって欠かせないキーワードが“ハシヤスメ劇場”だ。発端は、2016年6月から巡ったツアー『BiSH Less Than SEX TOUR』で、この頃からMCで彼女を中心にしたコントが定番化していった。

 先述した『日経エンタテインメント!』(2018年12月号)で、コントをやり始めてから「このグループで自分ができることはなんだろう?」と深く考えるようになったと振り返っていたアツコ。ときに強めに、ときにどぎつくイジられる様子は、彼女に対する他のメンバーからの愛や信頼も垣間見える。

 グループで出演し反響を呼んだバラエティ番組『しゃべくり007』(2020年7月放送)でも、他のメンバー5人全員がアツコに対する文句をグループLINEで吐露していたというエピソードをモモコグミカンパニーが披露。彼女に対して、アツコがただただじっと見守る光景は、記憶に残る名シーンとなった。

 ただ、道化を演じる場面が目立つアツコであるが、彼女の作詞曲は意外にも切ない。基本的に、先に作られた楽曲に対して、メンバーそれぞれが作った歌詞を提出してコンペが行われるBiSH。アツコの歌詞が採用された「社会のルール」は、年齢を重ねるにつれて重みを増していく1曲。〈気付けば大人になってて〉〈暗黙の、社会の、ルールがありました〉と訴えかけるこの曲を聴くと、不思議と勇気付けられる。

 今年3月には、コメディドラマ『ボクとツチノ娘の1ヶ月』で初主演し、劇中ではツチノコ人間“ツチノ娘”を好演。ソロとしてもコメディエンヌとしての才能を発揮した。メンバー個々が活躍の場を広げつつある今、アツコがいよいよ“見つかる”のかと期待してやまない。

■カネコシュウヘイ
編集者/ライター/デザイナー。アイドルをはじめ、エンタメ分野での取材や原稿執筆を中心に活動。ライブなどの現場が好きで、月に約数万円はアイドルへ主に費やしている。単著に『BABYMETAL 追っかけ日記』。執筆媒体はWeb『ダ・ヴィンチニュース』『クランクイン!』『ウレぴあ総研』、雑誌『日経エンタテインメント!』など。

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